元魔王様と浮島の超高難易度ダンジョン 6

 ジルとタイプDは順調にダンジョンを進んでいった。

常に一人でのボス戦の様な階層の作りになってから討伐の速度を競い合っていたが、段々とそんな事を言っていられなくなってくる。


「グオオオオ!」


「まさかSランクの魔物まで出てくるとはな。タイプAが言っていた通り攻略させる気が無いな。」


 魔装した銀月で魔物の攻撃を受け止めるがかなりの衝撃に身体が後退させられる。

高ランクの魔物となるとジルもそれなりに気合いを入れなければならない。


 と言っても勝てない程の強さでは無い。

Sランクと一纏めにされているがその中でも強さにかなりバラつきがある。

今のところAランクに近いSランクと言える部類ばかりで比較的楽に倒せている方だ。


「最下層に辿り着け無いと言っていたのも分かる。下に降る程に魔物の強さが桁違いに上がっていくのだからな。普通の冒険者にはまず無理だろう。」


 ジルの知っている者でまともに戦えるのはラブリートくらいだろう。

しかもこの階層では二人必要となるのでラブリートと同等の実力者が二人は欲しい事になる。

国家戦力と呼ばれる者が複数必要なダンジョンと言う事だ。


「今後階層が更に増える事を考えると地上の者達を招いても問題無さそうだな。ダンジョンマスターである美咲の命が脅かされる事も無さそうだ。上級雷霆魔法、ソニック!」


 戦っている魔物の隙を付いて一瞬で背後を取る。


「紫電一閃!」


 魔装した銀月で背中を斬り付ける。

魔物は神速の一撃に問答無用で両断された。


「スキルや魔法に制限を設けなければ我は問題無いな。タイプDも全解放であれば大丈夫そうだ。」


 先に倒してしまったのでタイプDが魔物を倒すのを待っていると階層が軽く揺れる。

おそらく隣の部屋で戦っているタイプDが極級クラスの高威力の魔法を使用したのだろう。

扉が無事に開いたのでタイプDと合流する。


「マスター、倒すの早過ぎませんか?」


 討伐の速度を競ってから全敗のタイプDが不満を口にする。


「弱体化したと言ってもこれくらいの敵であれば遅れは取らん。」


「この世界でも最高クラスのSランクなのですけど?」


 本来なら単独で相手をする事自体間違っている様な魔物達だ。

しかし前世が最強の魔王であるジルは弱体化してもそれくらいの敵に負けはしない。


「タイプDは苦戦していたな。」


「相手が魔法の耐性を持っていたんですよ!絶対タイプAの嫌がらせです!」


 タイプDがこの場にいないタイプAにぷんぷん怒っている。

真相は分からないが宥めつつ階段を降りる。


「次が五十階層で最後のボス部屋か。」


 二手に分かれて戦う階層を四十九階層まで終わらせたジル達。

いよいよ最後の階層である。


「大本命がきましたね!全力の全力の全力魔法で消し飛ばしてやります!」


 今までで一番気合いを入れているタイプD。

美咲のダンジョンの最強のボスが待ち構えているので最初から全力で相手をするつもりだ。


「まあ、最後くらいはいいか。だが我に当たらない様に気を付けるんだぞ?」


「結界魔法でマスターを包んでおきますから大丈夫です!」


「つまり我をも巻き込む魔法を放つと言う事ではないか。自分でも結界を展開しておくか。」


「うおー!腕がなります!」


 テンションが高まっているタイプD。

不安なのでジルも自分の身は自分で守る事にした。

タイプDの全力魔法は本当に危険なのである。


 階段を降りたジル達は最後のボス部屋の扉の前でボスの情報を見る。

そこに書かれていたのは二度戦った異世界の敵の姿だった。


「何で最後がこいつなんですかー!」


「アンドロイドか。」


 最後のボス部屋はアンドロイドのボスの様だ。

タイプDが嫌そうな表情で悲鳴を上げている。


「も、もしやまたあのスキルを持っているんですか?そうなんですか?」


「一先ずボスを召喚させなければわからんな。」


 タイプDが絶対に持っていてほしくない魔法無効化のスキルを所持しているのか確認する為にボス部屋へと入る。

松明に明かりが灯って魔法陣からボスが現れる。


「スキルは全攻撃耐性のみの様だぞ。」


「それならば全く問題ありません!耐性なんて我が魔法で蹴散らしてやります!」


 ジルの万能鑑定の情報を聞いてタイプDが嬉しそうに前に出る。

天敵となるスキルさえ無ければどうとでもなるのだ。

魔杖を構えて意気揚々と前に出ていく。


「いざ勝負ですアンドロイドβ!」


「その敵の名前だがアンドロイドγと言うらしいぞ。」


 見た目は殆ど同じだが名前は微妙に違うので別個体の様だ。


「見た目が同じ様な感じなので紛らわしいです!では改めて、いざ勝負ですアンドロイドγ!」


「テキヲハイジョシマス!」


「ほう、喋れるのか。」


 アンドロイドγだけは言葉を発する事が出来るらしくこれまでのボスとは違う様だ。

何も無いところから剣と盾を取り出して装備する。


「五十階層のボスを任されているみたいですし手加減無しです!先ずは弱体化祭りを受けてみなさい!初級闇魔法、フォースディクライン!初級闇魔法、スタン!初級闇魔法、フィアー!中級闇魔法、ファティーグ!中級闇魔法、スリープインデュース!中級闇魔法、ディズィネス!上級闇魔法ディシーブ!上級闇魔法、ダークネス!」


 タイプDが敵を弱体化させる闇魔法のデバフをアンドロイドγに掛けまくる。

能力の弱体化、一時的な行動制限、自分に対する恐怖付与、疲労加速、眠気の誘発、眩暈の付与、相手の視覚情報の欺き、暗闇の付与とデバフのオンパレードだ。


「キザミマス!」


「うおわっ!?」


 タイプDの闇魔法のデバフをものともせずに接近してきたアンドロイドγが剣を横薙ぎに振るってくる。

タイプDは慌てて自分に重力魔法を使って上に退避する。


「何で効いてないんですか!?」


「どうやら生命体では無さそうだな。闇魔法や呪詛魔法は効かないのかもしれん。」


「成る程、さすがは異世界の敵ですね!そうでないと面白くありません!」


 ジルからアンドロイドの情報を聞いて更にテンションを上げるタイプDだった。

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