元魔王様と結晶石泥棒 6
偶然の出会いから同行する事になった冒険者達。
パーティーは剣士のミナト、斥候のミルル、魔法使いのギャンと言うメンバーだが、全員今は自分の武器を背負ってツルハシを持っている。
「そこをそのまま掘り進めろ。そっちはもう少し下だ。力が足りんぞ、そんな事じゃ結晶石は出てこない。」
「「「は、はい!」」」
ダナンの指示に従ってミナト達がせっせとツルハシを振るう。
事情を知って結晶石の採掘に協力してあげているのだ。
久々の現場監督を楽しんでいる節もある。
「手に取る様に鉱石の位置が分かるんだな。」
ダナンの指示した場所を掘り進めると面白い様に結晶石が出てくる。
採掘を始めて数十分しか経っていないのにミナト達は既に二桁に届く個数を見つけ出していた。
「採掘に関しては任せておけ。それよりもしっかりと警戒を頼むぞ?」
「誰に言っている?我が魔物を近付かせるとでも?」
「頼もしい限りだ。」
何回か魔物が近付いてくるも直ぐにジル達が殲滅させているので採掘作業は安全だ。
「ジル、魔石の回収終了です。」
倒した全ての魔物から魔石を回収し終わった様だ。
素材に関しては取れる物が少ないと言う事で魔石だけにしてある。
かなり量があるので収納する為にダナン達から離れるが周囲に魔物はいないので襲われる心配も無い。
「収納しておこう。それにしても貴族のお嬢様がよくグールから魔石の剥ぎ取りなんて出来るな。」
「せっかく倒したのですから放置は勿体無いです。それにどんな魔物であっても選り好みしていられません。」
グールであろうと魔石が回収出来るならしておきたい。
魔石は様々な活用方法がある大切な資源なのだ。
「だが少し臭うな。」
「…女性に向かって失礼ですよ。」
「ジル様、さすがにそれは傷付きます。」
リュシエルとアンレローゼにジト目を向けられる。
「そう怒るな、ほら。」
「何ですかこれは?」
「消臭の魔法道具だ。鼻の効く獣人ですら臭いを感じられなくなるくらいのな。」
前世に作った魔法道具の一つだ。
使い道が無くて無限倉庫の肥やしとなっていたのだが、ようやく使う機会が訪れた。
「それは凄いですね。有り難く使わせてもらいます。」
「私も宜しいんですか?」
「グールの臭いを振り撒きたいなら使わなくてもいいぞ。」
「リュシエルお嬢様、次にお貸し下さい。」
二人はジルから渡された魔法道具を嬉しそうに使用している。
やはり自分からグールの臭いを漂わせるのは嫌だろう。
「本当に臭いが消えましたね。」
「素晴らしい魔法道具です。」
「それよりそろそろ戦闘準備をしておけ。」
こうしている間もジルは警戒を怠っていない。
そしてこちらに向かってくる者を空間把握で感知していた。
「魔物ですか?」
「いや、魔物では無いな。だが普通の人族と言う訳でも無さそうだ。」
「どう言う事ですか?」
「ここよりも更に下、どこから入ったのか分からないが先客が一人いた様だ。そいつが上に上がってきている。」
渓谷に降り立ったのはジル達が最初では無かったらしい。
この場所と下まで道なりに繋がっているのか、ゆっくりと近付いてくるのが分かる。
「こんな場所に一人で?」
「ジルの様な実力者でしょうか?」
「一定の実力が無ければこんな場所まで一人で潜れないとは思うぞ。そしてこの魔力量は魔族だろうな。」
「「魔族!?」」
魔族と聞いて二人は驚愕の表情を浮かべる。
人族と魔族は敵対関係にあるので街にいると言うだけで大騒ぎになる。
どちらにも話しの通じる者はいるが、大多数は相手を憎んだり恐怖したりするものだ。
「な、何故魔族がシャルルメルトに!?」
「そんな事、我は知らん。」
偶然空間把握を使用していたら見つけただけだ。
魔族の目的なんて知る訳も無い。
「それが本当だとしたら一大事です!まさか魔族もお嬢様を!」
「っ!?」
「ふむ、可能性はあるか。」
魔族は天使とも敵対しているので使える駒を集めている可能性はある。
リュシエルは人間兵器として使えるので目を付けられていてもおかしくは無い。
「お嬢、何をそんなに怯えている?」
「あ、相手は魔族なのですよ?逆に何故そんなに平然としていられるのですか?」
自分が魔族に狙われているかもしれないと聞いてリュシエルは震えている。
多少訓練して実力を上げたくらいでは個の力が大きい魔族には通じない。
「逆に何故そんなに怯えているのか理解出来んな。我がいるのだぞ?貴族らしくどっしりと構えていろ。」
「…ジル。」
自信満々にそう言われると震えが自然と止まっていくので不思議だ。
国家戦力を圧倒する実力者のジルがいれば魔族が相手でも怖くないと思える。
「確かにジル様の言う通りですね。Sランク冒険者をも下した実力、魔族にも充分通用する筈です。」
「目的次第では我が戦ってやる。それで問題無いな?」
「はい、ジルに任せます。」
魔族の来るであろう方向を見てリュシエルが緊張した面持ちで頷いた。
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