元魔王様と討伐競争 6
ジル達と別れた後、ナキナは肩にライムを乗せてダンジョンを走る。
そして出会い頭に魔物達を小太刀を使って一撃で倒していく。
「この階層の魔物であれば楽勝じゃな。」
特に苦戦させられる様な敵も出てきていない。
ストレスフリーでドロップアイテムを回収して回れている。
「以前の妾ではこうはいかなかったじゃろうな。」
ナキナはそう呟いて手に握る小太刀を見る。
これはエルダードワーフのダナンに打ってもらった逸品だ。
以前使っていた物や店で売られている様な物とは比べ物にならない性能をしている。
「素材も普通では無さそうじゃしな。」
ジルが小太刀の素材にと取り出したミスリル鉱石だが、それを受け取ったダナンの様子が少しおかしかったので普通の物ではないと何となく分かった。
「妾からすれば有り難い事じゃ。」
目の前の魔物を一刀両断しながら言う。
使い心地は最高であり、もう手放したくは無い。
使い始めて間も無いが既に身体の一部かの様だ。
「おっ!リビングアーマーじゃな!」
目当ての魔物を見つけたナキナはリビングアーマー目掛けて突っ込む。
するとリビングアーマーがこちらに気付いて迎撃しようとしてくる。
しかし身体の動きが遅い。
「ナイスじゃ、ライム殿!」
ライムが石化のスキルを使用した事によりリビングアーマーの身体の動きが制限されたのだ。
これによりナキナの対応に間に合わず身体が両断されてドロップアイテムに変わる。
「やはり石化のスキルは強力じゃのう。」
ナキナの言葉にライムが嬉しそうにプルプルと揺れている。
自分の使ったスキルが褒められて嬉しいのだろう。
どこにでもいるスライムの見た目なのに、あんなに強力なスキルを使えるなんて初見殺しもいいところである。
「むっ!」
ドロップアイテムの魔石を回収すると奥に何かを見つける。
向かってみると下に向かう階段があった。
これを降りれば17階層にいける。
「確かリビングアーマーの出現する階層は、可能性としてはこの下もあり得るんじゃったな。」
ライムはその言葉を肯定する様にプルプルと揺れている。
「ライム殿、妾は降りてみようと思うがどうじゃ?」
肩に乗るライムに尋ねるとプルプルと揺れる。
その揺れを見てナキナは頷く。
「よし、いくとしよう。」
ナキナは階段を降って17階層を目指す。
シキの護衛となってライムと行動する機会も増えたので、何となくライムの揺れ方でどちらを意味しているのか分かる様になってきた。
今の揺れはナキナの好きにすれば良いと言う意味に感じた。
「おおお!早速じゃな!」
いきなりリビングアーマーと接敵して一瞬でドロップアイテムへと変える。
地面には目当ての鎧がドロップした。
「やったのじゃ!」
ナキナはそれを見て喜び、ライムも共に喜ぶ様に揺れている。
競争の勝利条件は鎧の個数であり、他の素材や魔石は数には入らない。
なので鎧はどんどんドロップしてほしい。
「17階層にも出現するみたいじゃのう。二人が上にいるのであれば狩り放題じゃ。」
それを狙ってナキナは階層を降ったのだ。
ダンジョンの魔物を倒せば一定時間経つと再びリポップするのだが、それには時間が掛かる。
なので広い階層とは言ってもジル達が三手に別れて狩り続ければリポップが間に合わない可能性がある。
しかし17階層を独り占めに出来れば狩り切る心配も無いので存分にリビングアーマーを狩り続けられる。
「異世界の甘味、あれは是非食べたいのじゃ。」
思わず口元から涎が垂れそうになる。
ジル達と行動する様になってジルが様々なスキルを使える事は聞かされたので、異世界通販を使う場面にも立ち会った事は何度かある。
そう言った時に異世界の食べ物を買う場合は人数分買ってくれるのでナキナも食べられる。
甘味も何度か食べさせてもらえ、その美味しさに驚愕したと共にまた何度でも食べたいと思わせられた。
そんな甘味の王様の様な物が賞品となればやる気も漲る。
「そう言えばライム殿は勝った時に何を頼むのかのう?」
自分の相方であるライムに色々と例を挙げて訪ねていく。
「成る程、スキルであったか。」
ライムは肯定する様にプルプルと揺れる。
賞品として望む物はスキルであった。
エボリューションスライムとしての本能なのか、新たな力を求めるつもりらしい。
「確かスキル収納本と言う魔法道具があったのう。あれは便利過ぎるのじゃ。」
実際に使っているところを見た訳では無いが、そう言った魔法道具もあるのだと教えてもらった。
収納されているスキルを自由自在に与えられるとは、誰もが欲しがりそうな魔法道具である。
「妾もいつか石化を貰おうかのう。」
ライムが使う石化は便利で強く、自分も思わず欲しくなってしまう。
「またこう言ったお願いの機会があれば検討の余地ありじゃな。妾もまだまだ強くなり…っ!?な、なんじゃ!?」
話している途中で突然後方から轟音が響いてくる。
思わず振り向いて身構えるが、通路の先を見ても何もいない。
その直後同じ様な轟音が響いて、通路の先の天井からパラパラと細かくなったダンジョンの一部が降っている。
「驚いたのじゃ。どうやら上で何かしている様じゃな。」
自分の近くに危険は無いと分かってナキナは安心する。
それと同時に上で何をしているのか気になった。
しかしそれで時間を潰して賞品を逃す訳にはいかないので、ナキナは再びリビングアーマーを探してダンジョンを駆けた。
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