元魔王様と極上の蜂蜜 7
ポイズンワスプを倒した事により残るは巣の最深部にいると思われるボスと取り巻きの数匹のみだ。
ホッコの魔力の自然回復をしながら進んでいく。
「ボスについてだが、相手はクイーンワスプと言って蜂種の魔物の上位種だ。かなり身体が大きいから鈍足だが攻撃力は高い。Aランクの魔物だな。」
まさか上位種のクイーンワスプまでいるとは思わなかった。
それ程の巣となると放っておけば、近いうちに王都にも被害が出ていた可能性まである。
ジルが出向いたのは王都やギルドにとって幸運だった。
「格上の相手なの!でも負けないの!」
相手が自分よりもランクの高い魔物と知ってもホッコが臆する事は無い。
強くなるには自分と同格以上の相手との戦闘は避けられないと魔物の本能で感じているのかもしれない。
「近くにボス以外のワスプもいる様だが、そいつらは我に任せておくといい。」
「分かったの。」
取り巻きも含めてホッコが全ての相手をするとなると直ぐにやられてしまう可能性があった。
クイーンワスプは上位種であると同時に統率個体だ。
周囲の同種の魔物の力を強化するので、先程までの戦闘の様に簡単には倒せなくなる。
「最深部の魔物達を倒せば依頼達成だな。」
ハニービーを襲う魔物もいなくなり極上蜂蜜も手に入る様になる。
早く持って帰ってキュールネに美味しいパンケーキを焼いてもらわなければならない。
「主様、少し質問なの。」
「なんだ?」
「同じ蜂の魔物でどうして争うの?」
ホッコはハニービーを襲うワスプ達が理解出来無いと言った様子だ。
確かに習性や性格は随分と違うが見た目は近しい。
仲間を襲っている様に見えたのかもしれない。
「ハニービーは蜂型の魔物ではあるが、ワスプ種とは違って他に同じ種と言うのが存在しない固有の魔物だ。それに攻撃的なワスプ種は、花から蜜を作る習性を持ち人種に友好的なハニービーを同種とは認めん。」
似て非なる魔物と言う事だ。
外見が似通っていてもワスプ種からすればハニービーは餌にしか見えていないだろう。
「つまりハニービーは良い蜂さんなの。」
「そうだな、友好的な魔物と言うのは人にとっても有り難い存在だ。」
だからこそギルドが依頼を出してまで守ろうとしているのだ。
「そろそろ最深部だな。」
最深部付近の道中はワスプ種による襲撃を受ける事は無かった。
殆どジル達に狩られてしまって後が無いのだろう。
ワスプ種にとって最も重要なクイーンの守りの為に残りの戦力を集めている筈だ。
「お、おっきいの!」
巣の最深部に降りると地面の下なのに巨大な空間が作られていた。
道中もそうだったが壁や天井に光る苔が生えていて見晴らしがいいのでワスプ達の姿もしっかり見えている。
奥に全長三メートルを軽く超える巨大な蜂の魔物が飛んでいる。
あれが巣のボスであるクイーンワスプだ。
それを守ろうと周囲にはアーミーワスプやキラーワスプが飛んでいる。
「いけるか?」
「当然なの!」
少し驚きはしたもののホッコは剣を構えてクイーンワスプを見る。
「ギギギッ!」
クイーンワスプが侵入者を視界に捉えて鳴くと取り巻きが一斉に向かってくる。
後ろには通さないと言う意思が伝わってくる。
「最初から全力なの!アイシクルエンチャントなの!」
氷結魔法により剣が氷に覆われて強化される。
「ボス以外は任せておけ。」
「了解なの!」
氷剣を持ったホッコが全身を魔装して走り出す。
ホッコにも取り巻きのワスプ達が向かってきているのだが、主人であるジルの言葉を疑わず足は止めない。
任せろと言われたのだから、自分はクイーンワスプだけに集中すればいいのだ。
「上級重力魔法、ウエイトフィールド!」
ジルが魔法の範囲にワスプ達が入ったのを確認して周囲の重力を操る魔法を使用する。
突然ワスプ達は自分の身体が何倍にも重くなり、その身体を支えて飛ぶ事が出来ずに地面に落下する。
ホッコはその横を走り抜けてクイーンワスプに向かう。
「統率個体に強化されていても我の重力には抗い難いか?」
ワスプ達は身動きが取れずにいる。
必死に羽を振っているが身体は全く持ち上がらない。
普段から飛んでいる魔物は突然飛翔能力が奪われるだけでとても弱体化する。
飛べなければ満足に動く事も出来無いのだ。
「さて、ホッコは勝てるかどうか。」
ジルは動けないワスプ達に止めを刺しながら様子を見る。
氷剣を振ってホッコが果敢に攻めている。
それをクイーンワスプが尾の針で弾いているが攻めには転じれず中々良い勝負だ。
クイーンワスプはAランクの魔物とそれなりに強いが、その脅威は攻撃性能やりも繁殖能力にあった。
様々なワスプ種を生み出して力を強化する統率個体と言う事でAランクに指定されている。
なので強さだけで言えばBランクくらいなのでジルはそれ程心配していない。
Bランクくらいなら今のホッコなら充分に勝てる相手なのだ。
「とりゃーなの!」
「ギッ!?」
何度も氷剣と針をぶつけ合っていると針が凍結していき、半ばからついに折れてしまった。
最大の武器を失ったクイーンワスプが慌てている。
「もらったの!」
ホッコが氷結魔法によって強化された剣を更に魔装までして、全力の一撃をクイーンワスプに叩き込んだ。
巨大な身体の前で氷剣が一閃され、クイーンワスプは身体を凍結させながらその身を二つに別れさせた。
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