元魔王様と極上の蜂蜜 6
ホッコが最後のキラーワスプを氷結魔法で強化した剣で斬る。
その一撃が致命傷となりキラーワスプが地面に落ちた。
「や、やってやったのー。」
ホッコはその場でパタリと地面に大の字に倒れる。
特に怪我を負っている訳では無く、連戦による疲労で立っているのも疲れると言う状態だった。
荒い息を整える様に何度も深呼吸している。
「これだけの数を倒せるなら剣でも普通にやっていけそうだな。」
周囲はホッコに倒されたアーミーワスプとキラーワスプで地面が埋まっている。
予想外に数が多かったのでジルも初級闇魔法のフォースディクラインで相手を弱体化させて援護していたが、実際に全ての魔物と戦ったのはホッコだった。
「獣人化した時は剣で戦いたいから嬉しいの!」
ディバースフォクスの姿では武器を持つ事は出来無い。
ジルと同じ様な戦い方に憧れていたホッコなので、剣の腕をジルに認められて喜んでいる。
「これで大半は倒しただろうな。巣の中にいた魔物の数が激減している。」
ジルは空間把握の魔法を使って下に広がる巣の様子を確認しながら呟く。
侵入者であるジル達を仕留める為にかなりの数を投入してきた様だ。
まだ深いところに少し残ってはいるが随分と減った。
「まだ戦えるか?」
「せっかくだから最後まで戦いたいの!」
ホッコが飛び起きて言う。
疲労はあるがまだ戦う気力はありそうだ。
「魔力は大丈夫なのか?」
「少し心許ないの。でも戦いたいの!」
「まあ、我が一番の活躍を奪っては可哀想だからな。ならば強敵に備えて少しでも魔力を温存しておけ。道中の敵は我が排除してやろう。」
「了解なの!」
巣を下っていくと定期的に数体のアーミーワスプが襲ってきたが、ジルの銀月によって一刀の元に葬られていった。
その後も順調に下っていくと今まで出てきていない蜂型の魔物が二匹現れた。
「今までと違うの!この巣のボスなの!」
この巣で初めて見る魔物にホッコが嬉々として剣を構える。
「待て待てホッコ。あいつはボスでは無い。」
「でもさっきまではいなかったの。」
「ボスの側近と言うところだろう。巣にもこの二匹しかこの種はいないからな。」
空間把握で巣の全体を認識しているので魔物の種類や数もジルには分かっている。
「だったらホッコが戦いたいの!」
「それでもいいがボスは更に強いから魔力が無くなって戦えなくなるぞ?ポーションを飲むと言うのなら問題無いが。」
「…それはどっちも嫌なの。」
ボスとは戦いたいしポーションも飲みたくはない。
ここで戦闘してしまえば残り少ないホッコの魔力は無くなってしまうだろう。
ちなみに飲まずに身体に振り掛けると言う手段もあるのだが、それは黙っておく。
「ならばここは我に任せておけ。その代わりにボスはホッコに譲るからな。」
「分かったの。」
ボスがまだいると聞いてホッコは大人しく引き下がってくれた。
ジルは目の前のワスプ達とホッコを戦わせたくなかったので一安心である。
今見えている二匹はポイズンワスプと言って毒に特化した蜂型の魔物だ。
その毒は相手を瞬時に死に追いやる致死性を持っているので、神聖魔法を使えるホッコでも当たれば治療が間に合わず死に至る。
ポイズンワスプは身体が二メートル近くあって鈍足なので、攻撃されても回避は簡単なのだが万が一を考えれば戦わせない方がいいだろう。
ボスクラスの魔物よりも弱いと言っても、それよりも厄介な力を持っている魔物もいるのだ。
「では狩るとするか。」
銀月を構えながら全身を魔装して身体能力を高める。
ジルと言えど毒を受ければ助からない可能性が高いので、相手に攻撃される前に倒す必要がある。
なので最初からそれなりに全力を出す事にする。
「「ギギッ!」」
ポイズンワスプ達がジルを敵と判断して向かってくる。
ジルも迎え撃つ為に地面を蹴ると姿が消える。
「遅いぞ。」
そう呟いたジルは既にポイズンワスプ達の背後に立っていて、銀月を鞘に仕舞っているところだった。
ポイズンワスプ達はその声を聞きながら身体を二つに分かれさせていく。
ジルによる一瞬の攻撃によって身体が斬られていたのだ。
「さすが主様なの!速くて見えなかったの!」
あっという間にポイズンワスプ達を倒したジルを見てホッコが喜んでいる。
最近実力を付けてきたホッコであっても今の動きは追えなかった。
さすがは尊敬する最強のご主人様である。
「普段よりも魔力は多く使用するが魔装を極めればスキルや魔法が無くても化け物じみた力を発揮出来る様になる。ホッコも努力すればこの域にいつか辿り着けるだろう。」
「頑張って練習するの!」
ホッコは魔装の凄さを改めて実感して今後の練習をもっと頑張ると心に誓った。
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