元魔王様と魔法の授業 3
ジルとブリジットはギルドにいって依頼の手続きをしてきた。
サザナギはあまりギルドでジルに依頼が出せなくなる事を悲しんでいたが、たまには顔を出すと言っておいた。
ギルドでも正式な依頼として受理されたので、トレンフル家の貴族のお嬢様であるルルネットの期間限定講師となった。
屋敷に戻ってくると大人しく待っていたルルネットが笑顔で出迎えてくれる。
早く色々と教えてほしいと言った感情が伝わってくる。
引き受けた事だしルルネットも期待している様なので早速講師の仕事をする事にした。
「さて、それでは授業を始めてやる。」
「な、なんでこんなところにきてるのよ。」
ジルの言葉にルルネットが困惑した様子で尋ねる。
ティータイムで過ごしていた部屋を移動して、今は屋敷の書斎にきていた。
本が沢山置かれていてテーブルや椅子も幾つかある。
ここはブリジットが魔法や地理等の勉強をする際の部屋として使っていたらしく、今も政務はここでしているらしい。
「早速不満か?我の言いなりになると言う条件だった筈だぞ?」
「言いなりになるとまでは言ってないわ!なんで書斎にきたのか疑問に思っただけよ。」
ルルネットは訓練場に向かうものとばかり思っていた。
書斎にいくなんて予想外である。
「我にはルルネットがどの程度魔法に対する知識があるのか分からないのでな。手始めに座学から始めようと思ったのだ。」
講師として何かを教える前に、生徒が何をどれだけ知っているのかを把握していなければ教える効率が悪い。
取り敢えず戦闘で使われる事の多い魔法に対する知識の確認は必要である。
「えー、せっかく戦えるかと思ってたのに。」
ジルの言葉にルルネットが不満気な表情で言う。
しかしジルの指示に従うと言う約束なので小声で愚痴を言う程度に留めている。
「成る程、確かにそれは良い案ですね。知識が無ければ実戦では苦労する事になります。」
ルルネットの後方でブリジットがうんうんと何度も頷いて言う。
「一応尋ねるが何をしにきたんだ?」
ジルがルルネットの後ろに向けて尋ねる。
そこにはブリジットとメイドが一人待機している。
「邪魔はしませんから気にしないで下さい。休暇で暇…ルルネットが失礼な事をしないか監視しようかと。」
ブリジットの言い掛けた言葉をジルは聞き逃さなかった。
部下に仕事を全て引き受けてもらったので暇を持て余している様だ。
「私はルルネット様の専属メイドとしてお側に控えていなければなりません。それに未婚の貴族令嬢方を殿方とだけにはしておけません。」
メイドの方はブリジットの様な歪んだ理由では無い。
ジルにそんな気は無いが、それでも形式上はそう言った事が必要なのだろう。
仮にも二人はトレンフル家の貴族令嬢なので、何か問題が起きてしまえば大変である。
「ふむ、邪魔はしてくれるなよ?」
ジルの言葉に二人が頷いたのを確認してルルネットに向き直る。
依頼なのでそれなりにしっかり取り組むつもりだ。
他者に長期的な戦闘訓練を施すのは久しぶりなので少し乗り気だったりもする。
「先ずは魔法の基礎を確かめるぞ。」
戦闘において主力となるものの一つだ。
深く知っておいて損は無いので、基礎から確認していく。
「そんな初歩から?」
「なんだ?不満なのか?」
「私はこれでも飛び級で中等部の学校を卒業してるんだから!そんな初歩はとっくにクリア済みよ!」
そう言ってルルネットが胸を張る。
今更基礎を勉強する必要なんて無いと言った様子だ。
「中等部?」
「ご存知ありませんか?年齢毎に通える学校の事です。」
学校についての知識が無いジルにブリジットが教えてくれた。
学校は幾つか種類があって、初等部、中等部、高等部と年齢毎に分けられている。
各三年制となっており、それぞれ10歳~12歳、13歳~15歳、16歳~18歳と分けられているらしい。
ルルネットは13歳にして中等部の学校の課程を終了させて卒業したらしい。
普通であれば三年掛かって卒業するところを一年目で卒業するとは、確かに威張るだけの事はありそうである。
魔法についての知識もそれなりに蓄えているだろう。
「それなりに優秀と言う事か。」
「貴族の子女は事前に家庭教師などを付けて勉強させる事も多いですから、飛び級する貴族は多いのですけどね。」
どうやら大抵の貴族が事前に勉強をして学校に備えておくらしい。
そうする理由は平民を率いる立場にある貴族が平民に劣る結果を出さない様にする為らしい。
要するに貴族の見栄を張る行為だ。
「それでもこの早さは結構優秀なんだからね!」
14歳で卒業する者は多いが13歳となると本当にごく一部の生徒だけらしい。
なのでルルネットはかなり優秀な部類と言う事になる。
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