【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

元魔王様と魔法の授業 4

「ふむ、それならば軽く説明する程度でいいだろう。」

　ジルは用意された魔力板と言う魔法道具に字を書いていく。

これは魔力を纏わせた指でなぞると文字を書く事が出来て、纏っていない物で擦ると消える魔法道具だ。

こう言った勉強時に便利な道具である。

「魔法には基礎魔法と呼ばれる六種類の魔法が存在する。」

　魔力板に書いた火、水、風、土、光、闇の六種類の魔法を指し示してジルが言う。

魔法を使う者ならば誰でも知っている基本的な魔法の属性だ。

「え？基礎魔法？」

　説明を聞いたルルネットが疑問の声を漏らし、後ろの二人も顔を見合わせている。

「なんだ？何かあったか？」

「その魔法の総称を基礎魔法と呼ぶの？」

「ルルネット、習ったと言っていたではないか。」

　これは初歩の初歩と言っていい魔法の知識だ。

学校を卒業しているのであればこんな内容は何度でも聞く機会があった筈である。

「そうだけど呼び方が違うのよ。」

「私達は一般的に六大魔法と呼んでいるのです。」

　中身に付いての認識は同じみたいだが呼び方に違いがあるらしい。

ジルは六大魔法なんて呼び方は聞いた事が無い。

「呼び方に違いがあるのか。ではこれらの魔法をなんと呼ぶ？」

　ジルは続いて魔力板に文字を書いていく。

書かれたのは爆裂、氷結、雷霆、重力、神聖、呪詛と言う六つの魔法だ。

「劣化魔法の事？」

「劣化魔法だと？」

「えっ、そうだよね？」

　ジルが尋ね返してきたので不安になったルルネットが振り向いて尋ねる。

後ろの二人も頷いているので三人の認識は揃っている。

「ちなみにどうしてそう呼ばれている？」

　新しく書いた六つの魔法を劣化魔法呼びとは、人族の魔法の知識は自分とかなりズレていると思われる。

「だって劣化魔法は魔力消費量が多いし、詠唱破棄に辿り着きにくいって習ったから。」

「加えて適性を示す者も六大魔法に比べて少なく、習得難易度もそれなりに高いからですね。」

「成る程。」

　人族がそう言った理由から劣化魔法と呼んでいる事は理解したが、当然そんな呼び方をされる様な魔法では無い。

この六つの魔法は基礎魔法と似て非なる力を持つ素晴らしい魔法である。

実際に転生後も頻繁に使用していて有用性は確かだ。

「ジル、どうかしたの？」

　急に黙って考え込んでしまったジルを見てルルネットが尋ねる。

「ルルネットよ、どうやらお前達と我では魔法に随分と認識の違いがある様だ。」

「えっ、そうなの？」

　ルルネットは少し困惑している。

今まで魔法について習ってきてそんな事を言われた事は無かった。

自分の持つ知識を疑う機会自体無かっただろう。

「ああ、基礎魔法と六大魔法は呼び方だけかもしれないけどな。まあいい、一旦学校で習った魔法の事は全て忘れろ。」

「わ、忘れろって言われても。」

　急にそんな事を言われて困るだろう。

しかし講師として教えるのであればその間違った知識は邪魔となる。

前世の知識を持つジルは自分の知識が正しい事は分かっているのだ。

「我の指示に従うんだろ？」

「わ、分かったわ。」

　約束を思い出したのか頷いてくれた。

「では最初から説明してやる。」

「ちょ、ちょっと待って！メモを取るから！」

　ルルネットは急いで紙とペンをメイドに用意してもらっている。

元々学校を卒業していて大抵の事は習っているので、座学でメモをする事なんて無いと思って用意していなかったのだ。

　しかし知っていた内容が間違いであり、自分の知らない正しい事を教えてくれるのであれば、忘れない為にもメモは必要だ。

「いいわよ！」

　用意を終えたルルネットは一言一句聞き逃さない様に真剣な表情でジルの話しを聞く姿勢となる。

そこからジルの魔法についての講義が始まったが、ルルネットの様子を見ていると完全に人族に教えられていた内容とは違っていた。

　必死にメモを取るルルネットの後ろでブリジットやメイドも興味深そうに聞いていた。

正しい魔法の授業に生徒では無い二人も興味津々である。

　基礎魔法と呼ばれる火、水、風、土、光、闇の六種類に関してはそれ程認識の違いは無かった。

魔法の中でも世界中で一番適性を示しやすい魔法である事から基礎魔法と呼ばれている。

　種族的には相性が悪くて適性を殆ど示さない種類もあったりする。

魔法の中で一番使われる事の多い六つの魔法であり、魔法の種類として世界に最も浸透しているのが基礎魔法である。

　基礎魔法については呼び方に違いがあるだけなのでそこまで認識の違いは無い。

ルルネットもメモは殆どとっていなかったので学校で習った内容と同じなのだろう。

そしてここからルルネットの手が忙しく動く事となる。