元魔王様と魔法の授業 5
続いてはルルネット達が劣化魔法と呼んでいた魔法についてだ。
爆裂、氷結、雷霆、重力、神聖、呪詛に関してだが、これらは派生魔法と魔王時代から呼ばれていた。
決してルルネット達が言う様な使えない魔法では無い。
派生魔法は元々基礎魔法と同じ魔法として扱われてきた。
火と爆裂、水と氷結、風と雷霆、土と重力、光と神聖、闇と呪詛と言った組み合わせで元々は六種類の魔法だったのだ。
それぞれの基礎魔法の中で大きな能力の違い、使用難易度、そもそも使えない魔法があると言った事から別々に分けられて派生魔法と言う物が出来た。
ちなみに使えないと言う問題に関してはそもそも派生魔法の適性が無いと言った理由だ。
派生魔法は基礎魔法に似通っている事から、それぞれの基礎魔法に高い適性を持つ者に適性を示す特徴がある。
なのでそもそも適性の低い者は扱う事も出来無い。
そして派生魔法の力は基礎魔法の比では無い。
確かにルルネット達が言う様に魔力消費量が多かったり、適性者が少なかったり、習得に時間が掛かったりと色々あるが使える様になれば強力な武器となる。
「と言う感じで基礎魔法と派生魔法の説明は以上だ。それなりに認識の違いがあるみたいだが間違った知識は忘れて正しい知識を取り入れるんだ。」
ジルはそう言ってルルネットを見る。
説明中も必死にメモをしていたからか、手元の紙が文字でびっしりと埋まっている。
「あー!待って待って!まだメモしてる途中だから!」
ジルが魔力板を消そうとするとルルネットが慌てた様子で言う。
まだ書くのかと思いつつも真剣に授業を聞いているのは高評価だ。
「それにしてもこれだけ認識に違いがあったとは驚きですね。」
「いつから間違った知識が広まってしまったのでしょうか?」
ブリジットとメイドが疑問を浮かべている。
間違った知識ではあるが人族にとっては使い勝手の悪い魔法を使うよりも、適性の高い魔法を極めて完璧に使いこなせた方が強いと判断したのかもしれない。
そう言った理由であれば一概に間違ってるとも言えない。
それでも劣化魔法と呼んでいた魔法の本来の可能性について正しい知識を教えられたので、今後派生魔法を侮る事は無くなるだろう。
「メモが取れた様だな。最後に魔法にはまだ種類があるがそれは知っているな?」
「まさかそれも違ったりしないわよね?」
それを聞いてルルネットは思わず身構える。
これ以上覚えたり忘れたりする事が増えてほしく無いのだろう。
「最後の魔法だが我は特殊魔法と呼んでいる。」
特殊魔法に基礎魔法、派生魔法を加えた三つに魔法は分類されている。
「私達は希少魔法と呼んでいますね。扱える者が極端に少なく、基礎魔法や派生魔法には無い珍しい力を持つからと言う理由です。」
「認識は似ているな。我も特殊魔法の中の一部の魔法は希少魔法と呼んでいる。」
それを聞いてルルネットはホッとしている。
多少の知識の修正で済むのは有り難い。
派生魔法の様に習っていた内容を全て忘れて正しい知識を取り入れるのは大変な事だ。
「付け加えるならどんな種族にも適性を示す物もあれば、種族的に必ず適性を示す物もあり、特定の種族しか適性を示さない物もある。そして同じ魔法の適性を持つ者同士でも、使えるものと使えないものが存在したりもする。そう言った魔法を総称して特殊魔法と呼ぶのだ。」
これは新しい知識だったのかルルネットが再びペンを走らせている。
特殊魔法は他の二つに比べると適性を持つ者が少ないので、特殊魔法についての知識はあまり人族に伝わっていないのかもしれない。
「ルルネット、お前の使える魔法はなんだ?」
ジルは万能鑑定で既に視ているので知ってはいる。
しかし万能鑑定を持っている事は知られてないので尋ねる必要がある。
「火魔法と爆裂魔法よ。」
「それだけか?」
「そうよ?」
ジルが尋ね返すとルルネットは不思議そうにしながら頷く。
一応もう一度万能鑑定で視てみるが間違い無くその他にもう一つある。
「ちなみに魔法の適性はどうやって調べている?」
「えっ?普通に使ってみて使えるかどうかだけど、間違ってるの?」
それを聞いたジルはなんとも原始的な手段だと感じた。
魔法適性を調べるスキルはSランク冒険者のラブリートが持っていたが、もしかするとそう言ったスキルは珍しいのかもしれない。
「調べる魔法道具は無いのか?」
魔王時代の一般的な魔法適性の確認と言えば魔法道具だった。
「私は見た事無いわよ?」
「確か魔法高等学校で見た記憶がありますね。」
ブリジットが昔を思い出しながら言う。
学生時代に見た事があるらしい。
「それは珍しい物なのか?」
「そうですね、あるところにはあると思いますが珍しい魔法道具だと思います。」
「ふむ、それなら自前ので調べるとするか。」
そう言ってジルは無限倉庫のスキルから魔法道具を取り出した。
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