元魔王様とエルフの上位種 6
エルティアが持つネックレスは魔法道具の様だが、既に砕かれておりその機能は無くなっている様だ。
「その魔法道具を身に付けて呪いを受けたと言う事か?」
「はい、一応鑑定のスキルを使える者はいるのですが、高度な隠蔽工作がされていた様ですね。呪いの魔法道具だと見抜けませんでした。見た目だけは美しかったので、つい興味本位で…。」
「呪いなんて全然分からなかったですー。」
このネックレスは積荷に紛れてエルフの長であるエルティア宛の荷物として届いたらしい。
「誰に貰ったんだ?」
「それが分からないのです。」
「分からないだと?」
「はい、分かっているのはこの魔法道具が積荷と共にエルフの里に運び込まれたと言う事くらいですね。エルフの里が唯一交易をしている獣人の国の積荷です。」
エルフは違法奴隷として人族に狙われる危険があるので基本的に里の中だけで暮らす者が多い。
しかしそうなると不足する物も多いので、外部との交易で手に入れている物もある。
その交易をしているのが獣人族だ。
「そう言えば昔から獣人と交易をしていたな。それが今も続いていると言う事か。」
「こちらの差し出す物は世界樹の素材ですからね。長年の交易により信用している獣人族以外と行うつもりはありません。」
世界樹の素材はとても貴重であり、高値で取り引きされている。
だが欲深い人族であれば世界樹のあるエルフの里に手を出す可能性があるので、対等な取り引きを続けてくれている獣人族を信頼しているのだ。
「交易と言う面では人族が一番なのですが論外ですしねー。」
種族的に幅広く交易を行っているのは人族だ。
利益を考えれば取り引き相手としては一番なのだが、エルフ族からすると信用出来る筈も無い。
「だがその獣人側から呪いのネックレスが渡されたのだろう?」
「相手側に確認しましたがその様な物は知らないと言う返事しか得られませんでした。それに獣人族がその様な事をしてもあまりメリットはありません。」
獣人族側が世界樹の素材を独占しようとしてそう言った行動に出た可能性もある。
しかしエルフ族がいなければそもそも里には入れず、世界樹のある場所まで行けないのでエルティアを呪う必要性が無い。
「獣人からすれば貴重な世界樹の素材が入ってこなくなる訳だからな。獣人族に対する嫌がらせか、エルフ族に対して何か目的があったか。」
「おそらく我々でしょう。ギガントモスの出現もタイミングが良すぎました。」
エルフ族の最高戦力であるエルティアが呪いを受けたのと殆ど同じタイミングでギガントモスが現れたらしい。
これを偶然だとは考えていない。
「誰かが仕組んだと?だがそうなるとエルフも協力している事になるか。」
「エルフ族にしか里への道は開けられないですからねー。」
「裏切り者、もしくは操られている者がいると予想しています。」
エルフ族に敵対する派閥にいるエルフがギガントモスを里へ侵入させた。
エルティアやドライアはそう考えている。
「エルフ族を滅ぼす、エルフ族を捕らえる、世界樹を枯れさせる、世界樹の素材を手に入れる。何が目的かは現状だと分からないな。」
「どれであろうと一先ずジル様のお力で終息はしました。それにもう二度と不覚は取りません。」
エルティアは万能薬によって完全復活した。
エルフの上位種であるハイエルフの力は相当なものなので、相応の実力者でもないと相手にもならないだろう。
「エルティアがいればエルフ族は安泰だろう。ちなみに関係があるか分からないが今回と同じ様な出来事が前にも起こっている。」
「私と同じ様な事が起きたのですか?」
「ああ、我が普段暮らす国の王族の姫が同じ様に呪いのアクセサリーによって命を脅かされた事があった。その時も我の万能薬を譲って解決したんだ。」
トレンフルのダンジョンで出会ったエトワールに万能薬を渡した事で無事に解呪出来たらしい。
手口としては今回のエルティアと似ている。
「一国の姫にその様な事を。目的は分かりませんが状況は似ていますね。」
「関連性があるかは分からない。もう少ししたら王族に会う機会があるからその時に詳しく聞いてみるとしよう。」
「何か分かれば是非教えて下さいませ。」
エトワールの生誕祭に出向いた時に機会があれば聞こうと思う。
王族の情報網は侮れないらしいので何かしら情報を持っていてもおかしくない。
「エルティアちゃん、エルフの皆が集まったみたい。」
ドライアが外の様子を感じ取って教えてくれる。
森の精霊と呼ばれるだけあって、森の中で起きている事を把握するのは得意なのだ。
「分かりました。ジル様、お話しはここまでと言う事で。」
「ああ、これ以上話しても進展はなさそうだしな。」
その後直ぐにエルミネルがツリーハウスの中にエルティアを呼びにきたので治療の為に外に出た。
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