元魔王様と秘密の拠点 2
今まで貯めてきた殆ど全財産を使って異世界通販のスキルで購入した浮遊石。
これが手に入った事でジル達は次にやるべき事をする為に領主の屋敷へと向かった。
「と言う使い方が出来るのです。」
「つまり浮遊石で地面を浮かせて、空に妾達の拠点を作るのじゃな?」
シキによる説明で浮遊石の使い方をナキナも理解した。
この鉱石を使って地面を浮かせ、空に拠点となる浮島を作る計画を前々から考えていたのだ。
「そう言う事なのです。その土地を貰う為の交渉に向かっているのです。」
領主の屋敷を訪れる目的は土地の交渉だ。
浮遊石が手に入ったとは言え、浮かせる物が無ければただの光る石だ。
この辺りはセダンの街の領主であるトゥーリの治める土地なので勝手に貰う訳にもいかないだろうと許可を取りにきた。
「あの浮遊石は大きさによって浮かせられる質量が変わる。今回は浮遊石の中でも一番大きな物を購入したから、かなり広い範囲を浮かせられる筈だ。」
これからずっと世話になる拠点なので奮発した。
お金は無くなったが良い買い物だったので後悔は無い。
「景観も大分変わるので事前報告は必須なのです。」
広い範囲の土地が急に無くなれば誰もが驚いてしまう。
知らない間柄でも無いが後々のトラブルにならない為にも必要な事だ。
「領地を奪う様なものじゃからのう。トゥーリ殿は許可をくれるのじゃろうか?」
「そこは抜かりない。我はトゥーリに貸しを作っている。」
これは前々から計画していた事だ。
様々な事で恩を売ったり、エトワール殿下の誕生祭に同行して出席する代わりに貸しを作ったりしていたのもこの交渉の為であった。
「そんな貸しを貴族相手に作っておったとは驚きじゃ。」
「そのおかげで土地もなんとかなるかもしれないのです。」
ナキナは呆れてシキは喜んでいる。
貴族に貸しを作るなんて畏れ多い行為はジルでなければ出来無いだろう。
「セダンの街の一部でも貰うつもりなのかのう?」
「さすがにトゥーリの治める主要都市であるセダンを貰うつもりは無い。それにあの大きさの浮遊石であれば、セダンを丸ごと浮かせられてしまうからな。」
セダンの街は領主であるトゥーリのお膝元と言う事でかなり大きな街だ。
それでも浮遊石の効果を使えば街一つ浮かせる事も出来る。
「そんなに広い範囲を浮かせられるとは凄い鉱石じゃのう。セダンの街でなければどこを貰うのじゃ?」
まだ人族の暮らしが短いナキナはトゥーリが治める領地の範囲を把握していない。
セダンの街以外となるとどこまでが領地なのか正確には分かっていないのだろう。
「魔の森の一部を貰うつもりなのです。」
「魔の森を?」
「あの森は魔力が満ちていて時間が経つ程自然に広がっていく。拠点となる家を建てる際も木材に困る事は無い。」
セダンの街から少し離れているが魔の森もトゥーリが治める領地の一部だ。
危険な場所ではあるがその分有益な場所でもある。
浮島に組み込めれば何かと便利である。
「それは分かるが拠点となる浮島じゃろう?魔の森が近いのは危険ではないかのう?」
先日もスタンピードが起きたばかりだ。
魔物が湧き出す魔の森は非常に危険な場所であり、実力者でも油断は出来無い。
「当然対策はするつもりだ。居住区に害が無い様に迎撃や結界の措置とかをな。それに魔物の素材を確保しやすい様に狩場が近いのは便利だ。」
「確かに魔物の素材は様々な使い道があるしのう。確保出来る手段は用意しておくに越した事はなさそうじゃ。」
魔物が湧き出す魔の森は財源として使える。
倒して手に入れた素材は売る以外にも魔法道具や装備類の材料として幅広く使える。
ついでに戦闘訓練も出来てナキナにとっては良い事ばかりだ。
「まあ、そんな我らでも欲する魔の森を、一部とは言えトゥーリがくれるのかと言う問題はあるけどな。」
ジル達が財源として活用したいと考えているが、それは当然の事ながらトゥーリも同じ考えだろう。
ギルドの依頼で魔の森は初心者から上級者まで広く活用されており、既にセダンの街の財源の一つと化している。
そんな魔の森だが、一部を貰っても自然と森は広がっていき時間が経てば勝手に元には戻る。
しかしその間に無くなった森の部分での活動が出来無くなったり、魔物の生息域を荒らしてしまったりとそれなりに迷惑を掛ける事にもなってしまうのだ。
「そこはジル様の交渉術の見せ所なのです。恩なら領主に沢山売っているのです。」
「確かにな。一つ強気に出てみるとしよう。」
領主の屋敷に到着したジルは、拠点となる浮島の土地を確保する為にトゥーリにどの様な交渉を持ち掛けるか考えながら中に入っていった。
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