元魔王様と討伐競争 11
屋敷に戻って夕食を食べた後、早速シキに賞品を求められた。
あれだけ夕食を食べておいてその小さな身体にこれ以上入るのかと思ったが、デザートは別腹と言う言葉が異世界にはあるらしく、巨大なパフェを美味しそうに食べている。
「さて、タイプBとホッコにも与えないとな。何か欲する物はあるか?」
シキと共に鎧集めで勝利した二人に尋ねる。
ジルが叶えられる範囲で二人の要望に応える事になっているのだ。
「本当に何でもよろしいのですか?」
「ああ、取り敢えず希望を言ってみてくれ。」
「それでは新たな武器を頂ければ嬉しく思います。」
そう言ってタイプBが頭を下げる。
近接戦闘型のタイプBらしい要望であった。
「武器か、何か希望はあるのか?」
タイプBの現在の換装装備は、ハンマー、大鎌、大楯、回転式浮遊刃、双剣の五種類である。
「マスターと同じ武器を扱ってみたいです。」
「刀か?」
「はい。」
ジルが腰に下げている銀月に触れて尋ねるとタイプBが頷く。
創造主であるジルが使う武器を自分も使える様になってみたいらしい。
尖った武器構成なので刀ならば使い勝手も良さそうだ。
「これは知り合いに打ってもらった物だ。一部手を加える事は出来るが完全に我が作る訳では無い。それでも構わないか?」
「はい、マスターと同じ武器を扱えるとは至上の喜びです。」
タイプBは嬉しそうに頷いて言う。
五種類の換装は全てジルが魔王時代に作った物なので、世界規模で見ても一級品の物ばかりだ。
人族に転生したジルにそれ程の物を作る力はもう無いが、エルダードワーフとの合作であれば、それに並ぶ物が作れるかもしれない。
「セダンの街に戻ったら交渉にいってみるとしよう。駄目なら異世界通販のスキルで良い刀を見繕ってやろう。」
「感謝致します。」
正直に言えばダナンには是非とも引き受けてほしい。
腕は信用しているのでタイプBも満足出来る素晴らしい刀を打ってくれる事は分かっている。
心配しているのは断られた時に頼る異世界通販のスキルの方だ。
初依頼の時に使って折れてしまった異世界の刀でさえ、何も特殊な機能が付いていないのに中々の金額がした。
タイプBに見合う刀を選ぶとなれば、どれだけお金が掛かるか分からない。
今まで儲けてきたお金が全て吹き飛んでもおかしくない。
「次はホッコだな。」
「クォン!クォンクォン!」
ホッコも何か欲しい物があるらしく必死にアピールしている。
しかし残念ながら言葉が分からない。
契約の様な意思疎通は出来無いので言葉を知るにはそう言ったスキルが必要になってくる。
「魔物の言語が分かるスキルか。残念ながらストックは無かったと記憶しているが。」
ジルはスキル収納本を取り出してページを捲っていく。
数々のスキルが記されているがお目当てのスキルは無い。
「クォオクォオ!」
「ん?どうした?」
突然ホッコがスキル収納本を見て鳴き始める。
「スキルが欲しいと言う事かのう?」
「ふむ、しかしどのスキルかは分からないな。」
スキル収納本には魔王時代に手に入れた多種多様なスキルが存在する。
ホッコのお目当てのスキルをピンポイントで与えるのは無理だ。
「ん?ライム殿、どうしたんじゃ?」
二人がどうしようかと悩んでいるとナキナの肩に乗るライムがちょんちょんと頬っぺたをタッチしている。
そして何かを伝える様にプルプルと揺れている。
「ふむふむ、ほうほう。」
それを見てナキナは会話しているかの様に相槌を打っている。
側から見ると実に奇妙な光景である。
「分かったのじゃ!ホッコ殿は人化のスキルが欲しいらしいぞ。」
「クォン!」
ナキナの言葉にホッコが嬉しそうに鳴いて飛び跳ねる。
どうやら人化のスキルが欲しいと言う要望であっている様だ。
状況から見るにライムがホッコの言葉を通訳してナキナに伝えてくれたらしい。
「なんでライムの言葉が分かるんだ?」
「なんとなくじゃな。同じシキ殿の護衛として行動する事が多いからではないかのう?」
だとしても感情が読み取りにくいライムの揺れ方だけでホッコの言っている内容を当てるとは凄まじい能力だ。
何かそう言ったスキルを獲得しているのではないかと、思わず万能鑑定を使ったくらいだ。
「ライム殿がいればホッコ殿や影丸とも会話が出来そうじゃな。」
ライムはプルプルと嬉しそうに揺れている。
手助けが出来て喜んでいる様子だ。
「取り敢えずホッコの希望は分かった。人化のスキルだな。」
「クォン!」
スキル収納本を捲って探す。
しかし人化のスキルが見つからない。
レイアとテスラに与えた分でストックは使い果たしてしまっていた。
「異世界通販のスキルでいいだろう。」
ジルは人化のスキル、又は同系統の能力を持つ道具類を探していく。
さすがは神のスキル、求める物が多種多様に存在している。
「高ぁ。」
思わず口から溢れる程には値段が高かった。
想像していた値段に桁が二つ程足されている感じだ。
買えない事もないがお金がかなり掛かる事になる。
「…ホッコよ、必ず与えると約束するから、今暫く待ってはくれないか?」
「クォン!」
ジルの言葉にホッコは大きく頷いてくれた。
貰えるのであれば直ぐでなくても構わない様だ。
「悪いな、懐の大きい従魔を持てて我は幸せだ。」
ジルが感謝しながら撫でてやると、ホッコは嬉しそうに喉を鳴らしていた。
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