64章
元魔王様と世界最強の従魔使い 1
ジル達は早速影丸の気持ちに応える為に魔国フュデスへと向かった。
お馴染みの魔法による爆速移動で空中を飛んでいく。
メンバーはジル、ホッコ、ナキナ、影丸、レイア、テスラだ。
「もう直ぐ到着しそうですね。」
「速いの!」
「相変わらず規格外な魔法の使い方じゃ。」
「魔法は便利な使い方をしてこそだろう。」
セダンの街からはそれなりに離れているのだが、この移動方法であればあっという間に到着出来る。
だがこの移動方法に慣れると地上の移動が億劫に感じてしまうので頻繁に使うのは控えている。
「ジルさん、直接パンデモニウムに降りるのは危険だと思うわよ?」
「そうだな、近くまでいったら外周の海辺から上陸するか。」
テスラの言葉に頷いて島の外周部分に着陸する事にする。
この島の危険性を知っているからこその対応だ。
「今更じゃがパンデモニウム島とはどの様な場所なのじゃ?」
詳しく聞く暇も無く出発したのでナキナが改めて尋ねる。
一応地図にも載っているのだが、島に立ち入った者の殆どが帰還しない事から情報があまり出回っていない島だったりする。
「多くの魔族が命の危険を感じて滅多に近付かない脅威の島ね。危険な魔物がうようよいるのよ。」
「Bランク以上の魔物しか生息しておらず、攻撃に特化した魔物ばかりなので常に島中で魔物同士の争いが絶えません。」
「巻き込まれたらひとたまりもないわよ。」
レイアとテスラが脅かす様に言ってくるが嘘は一切言っていない。
それ程パンデモニウム島は喰って喰われてを繰り返す弱肉強食の危険な島なのである。
「そ、そんな恐ろしい場所に知り合いが住んでおるのか?」
話しを聞くととても人が住める環境とは思えない。
心休まる時が無さそうな印象だ。
「まあ、相手が魔物ならあいつは無事でしょうね。」
「魔物に好かれやすい体質ですから。」
全く心配する様子も無く二人が言う。
ジルもそう思うので心の中で同意しておいた。
「そろそろ到着だ。」
ジルが自分達を包む結界を重力魔法で操って海辺の陸に降ろす。
「一見普通の島に見えるのじゃが。」
辺りを見回しても危険な魔物は見当たらない。
「油断してると危ないわよ。どこに危険が潜んでいるか分からないんだから。」
「ならば油断は禁物で慎重に進むとするのじゃ。影丸もよいな?」
「ウォン!」
ナキナの言葉に影丸が大きく頷く。
そして島の方に向けて警戒しながら歩き出そうとする。
「ゴアアアア!」
そのタイミングで海面が盛り上がって巨大な蛇の様な魔物が現れる。
海面近くの自分の縄張りに入り込んだジル達を餌と判断して、大口を開けながら上から降ってくる。
「ぬおっ!?」
「ウォン!?」
「いきなりですね。」
「大きいの!」
「パンデモニウムに来たって感じね。」
ナキナと影丸は突然の巨大な魔物に驚くが、他の三人は呑気な感想を呟きながら見上げている。
「何を呑気な事を言っておるのじゃ!?」
ナキナが迎撃しようと慌てて腰の武器に手をやるが、それよりも先にジルが動いた。
「断絶結界!」
「ゴアッ!?」
ジルが自分達を中心にドーム状の結界を展開する。
上から降ってきた魔物は結界に歯を突き立てるがヒビも入らない。
「ふぅ、助かったのじゃ。」
「ウォン。」
一先ず結界に守られた事でナキナと影丸は安心して大きく息を吐く。
ジルがいなければ迎撃が間に合っていなかったかもしれないので助かった。
「油断は禁物じゃなかったのか?」
「海からとは予想外だったのじゃ。」
島の方ばかりに警戒心がいって背後を気にしていなかった。
まさかこんな凶悪な魔物が近海に潜んでいるとは思わなかったのだ。
「この島は中だけで無く島を囲む海にも危険な魔物が生息している。どこにいても危険が付きまとうぞ。」
「まあ、ジルさんがいれば問題無さそうだけどね。」
危険なパンデモニウム島でもジルの側なら安心出来る。
テスラの中では転生した今でも、あの頃からその安心感だけは変わっていない。
「我にばかり頼らずテスラも働け。レイアを見習ってな。」
「魔物の処理完了です。」
こうしている間にレイアが結界の外で魔物の首を剣で斬り落としていた。
レイアは昔から指示をしなくても仕事の出来る側近だったが、それは今も変わっていない。
「ご苦労だった。」
「ジルさんのおかげで確実に力が増しているのが実感出来ます。今回は良い訓練になりそうです。」
ジルと再会してから吸血を定期的に繰り返す事で力がどんどん戻ってきている。
全盛期には遥かに及ばないが、今の時代ならこれでも充分な力となる。
「確かにジルさんから吸った力を試すチャンスね。次の魔物は私が相手をするわ。」
テスラも吸精で戻ってきた力を高ランクの魔物を相手に確かめたい様子だ。
手頃な相手がいないか獲物を探している。
「ホッコも戦いたいの!強い魔物を倒すの!」
二人にばかりやらせないとホッコが龍聖剣を抜きながら言う。
「やれやれ、戦闘狂ばかりで参るな。」
「しかし訓練の相手としては確かに申し分無いのじゃ。影丸、妾達も遅れを取ってはいられん。強くなる為の訓練として高ランクの魔物と戦いまくるのじゃ。」
「ウォン!」
その後、島に上陸して進んでいくと次々に魔物が襲い掛かってきた。
それを嬉々として皆が返り討ちにしていき、ジル達はどんどん島の中を進んでいった。
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