元魔王様と解呪の秘薬 3
「このまま進む?それとも別の道を進む?」
他のパーティーと会っても問題無いのかとルルネットが疑問に思って尋ねてくる。
ジルに関しては秘密が多いので、戦闘の機会が多いダンジョンでは魔法について知られない様に、なるべく人との接触は避けるべきではないかとルルネットは考えていた。
「ルルネットが判断していいぞ。」
別に今の状態であれば他のパーティーと鉢合わせても特に問題は無い。
感知のスキルを使っているルルネットに任せる。
「うーん、余計なトラブルを避ける為に別の道を行こうかな?…あっ、ちょっと待って!」
ルルネットが違う方向へ曲がろうとして突然立ち止まる。
「人に近付く魔物の気配も感じる!それもかなりの数だわ!」
感知のスキルに反応があったのだろう。
どんな魔物かは分からないが数は把握出来ている。
「助けるか?」
「領民かもしれないし気付いたからには放ってはおけないわ。余計なお世話って可能性もあるから近くまでいって様子を見るのはどう?」
「いいんじゃないか。」
トレンフルを治める貴族の一員として、民である平民を守る義務がある。
実際にそう言った行動を起こせる貴族がどれ程いるかは分からないが、ルルネットならばそう動くだろう。
「じゃあそう言う感じでいきましょ!」
ルルネットに先導されながら急いで現場に向かう。
魔物と戦闘している時間が惜しいので感知のスキルでルートを選んで回避しながら進む。
「戦闘音が聞こえてきたな。」
「相当強い魔物なのかしら?」
人や魔物の声、武器のぶつかる音がダンジョン内に響いている。
激しい戦闘が行われているのが伝わってくる。
「あっ、大丈夫そうだわ。魔物の数が激減してきてる。」
走って近付いていたが感知のスキルで戦況が人族に傾いている事を知り、ルルネットは走る速度を緩める。
危機は脱した様で応援も必要無いとの判断だ。
「魔物の反応が無くなったわね。随分と強いパーティーなのかも。」
13階層の魔物はルルネットも楽々と倒せるレベルでは無くなってきた。
そんな魔物を大量に倒せるとなると、ルルネット以上の実力者が揃っているパーティーかもしれない。
最高到達階層を更新出来る可能性もある。
「危険が無くなったなら別の道にいくか?」
「戦闘後にやってきて素材の横取りとか思われても嫌だし、そうした方がいいかもね。」
ルルネットは新しい道を進もうと思い、魔物の情報を調べる為に再度感知のスキルを使用する。
自分が苦戦する魔物も多くなってきたので、油断無く感知のスキルはどんどん使っていく。
「っ!?さっきのパーティーの一人!?凄い速さでこっちに近付いてきてる!?」
とんでもない速さで向かってきているらしく、ルルネットは驚愕している。
的確にこちらの場所を掴んでいる様なので、ルルネットと同じく感知系のスキルを持っているのかもしれない。
「ルルネット、落ち着け。取り敢えず直ぐに戦闘出来る様に武器は構えておけ。」
「えっ、戦闘になるの!?」
慌てているルルネットにそう言うと、更に困惑した様子となっている。
「可能性があると言うだけだ。人目に付かないダンジョンなら盗賊の真似事をしても魔物に殺された様に偽装も出来るからな。」
その言葉を聞いてルルネットが息を呑む。
実際にそういった事をする輩は一定数存在する。
しかしそう言う目的ならばダンジョンの深くまで潜る必要は無い。
自分達も強い魔物に襲われるリスクが高くなったり、相手もダンジョンの深くに潜れる相応の実力者だったり、パーティー数が少なくて見つかりにくかったりと良い事が無い。
それならば多少のリスクはあるものの、浅い階層で人目に注意しながらパーティーを選別して狙った方が成功確率は高いだろう。
「く、くるわ!」
感知のスキルでくる方向は分かっているので、ルルネットは通路の曲がり角を見ながら緊張した様子で双剣を構える。
ジルもその方向に視線を向ける。
万が一そう言った輩だった時にルルネットを直ぐに守れる様に銀月の柄に手を添えておく。
まだ子供なのに人同士の殺し合いなんてさせる必要は無いので、その場合はジルが即排除するつもりだ。
「お待ち下さい、こちらに戦闘の意思はありません!」
曲がり角の向こうから相手に声を掛けられる。
姿は見えていないが良く通る女性の声だ。
「ど、どうするの?」
「初対面で信用してほしいなら、姿を現し武器を置け。」
ルルネットがどう対応しようかと困っていたのでジルが代わりに騎士に言う。
ジルの言葉で曲がり角から騎士が姿を現した。
その騎士はトレンフルの騎士とは違う鎧を身に付けているので、他の街からやってきた者だろう。
そして騎士は姿を現すと戦闘の意思が無い事を示す為にジルの言う通りに腰に下げていた剣を鞘ごと床に置いた。
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