元魔王様とシキの従魔 2
「っ!ちょ、ちょっとジルさん、こんなところで出さないで下さいよ!」
ミラは小声で文句を言いながらミスリル鉱石を両腕で覆い隠す。
自分がその価値を教えたので希少性をよく理解している。
近くに人はいないが、酒場には食事をしている者もそれなりにいるので見られる可能性はある。
「一見すれば普通のと変わらないのだろ?そんなに警戒する事か?」
ミラもスキルを使わなければミスリル鉱石の純度までは分からなかった。
一々人の持ち込む物にスキルを使う物好きがいるとも思えない。
「それはそうですけど、目利きに長けた人や普段から鉱石を扱う人なら直ぐに分かりますよ。」
素材の売買を行う物や武具職人等は普段から鉱石を扱っているので、ある程度目が肥えているのだ。
そう言った者達には直ぐに分かってしまうらしい。
「成る程、そう言うものか。」
「それでこれがどうしたんですか?」
ミスリル鉱石を隠しつつ小声でミラが尋ねてくる。
「卸先を見つけてほしいのだ。今は金が幾らでも欲しい状況だからな。」
「今あんなに報酬を貰ったのにですか!?」
ジルの発言を聞いたミラは小声で驚いている。
大金貨10枚もの大金を得たのに更に金が欲しいなんて、一体何を買う気なのかと問い詰めたくなる。
「稼げる時に稼いでおきたいのだ。」
通常のミスリル鉱石よりも高値で売れるならば、無限倉庫内には沢山あるので幾らか買い取って欲しい。
異世界通販のスキルもあるので、金が増えれば出来る事も増えるのである。
ついでにミスリルを扱える店についても知りたいと思っていた。
理由は自分用の武器を作ってもらいたいのだ。
「いいんですか?こんな良質なミスリル鉱石は、もう手に入らないかもしれませんよ?」
手放すのは勿体無いとミラが言う。
ミラも受付嬢なのでギルドに持ち込まれる様々な物を見てきた。
その中には鉱石もあったので、このミスリル鉱石の希少性がよく分かる。
「構わん、まだ無限倉庫の中に大量に入っているしな。」
道端に転がる石感覚で拾っていた物なので大量に持っているのだ。
幾らでも買い取ってほしいくらいである。
「た、大量!これ程のミスリル鉱石が…。大量に…。」
「ミラ?」
ジルの言葉を受けたミラは呆然となってしまった。
顔の前で手を振るが反応が無い。
「報酬も受け取り、伝える事も伝えたし帰るとするか。」
ミラがいつまでも反応しないので諦めて放置して帰る事にした。
「いいのです?」
「そのうち正気に戻るだろう。」
ジルとシキは用事も済んだので、呆然としたミラを置いてギルドを後にし、宿屋の自室に戻る。
暫くは休暇と言う事にしたので、のんびりと過ごす予定だ。
早速シキは異世界通販のスキルを使い、異世界の本を物色している。
大量の臨時収入があったので、贅沢に使いたい気持ちも分かる。
「シキ、買い物は少し待て。先に買っておきたいものがある。」
無限倉庫があるので嵩張らないし、本はジルも後から読む事が出来るので特に文句は無いが、今は買いたい者があるので少し我慢してもらいたい。
「買っておきたいものってなんなのです?」
ジルに言われたシキが尋ねる。
知識の精霊として異世界の知識には非常に興味がそそられるが、主であるジルに逆らってまで欲したりはしないので手を止める。
「シキの護衛だ。」
ジルが早急に用意したいと思っていたものである。
「護衛なのです?」
「ああ、お前は危なっかしい行動をよくするからな。近くに常に護れる奴がいないと不安だ。」
シキはとても優しい性格をしているので、可哀想な境遇の者を放っておけない。
故に助けようとするのだが本人に戦闘能力は一切無いので、襲われたりしたら危険なのである。
魔王時代は常に誰かしら仲間が近くにいたので問題無かったが、現在はジルしかシキを護れる者がいないのだ。
「ジル様がいるのです。」
「我と行動を別にする時もあるだろ?先日のゴブリン騒動の時も別行動を取っていた訳だしな。」
別行動している最中はシキを護る事が出来無い。
そう言った時に常にシキに付き従っている者がいれば助かるのだ。
「成る程なのです。確かにシキもいてくれたら心強いのです。」
シキが戦闘能力を得られれば出来る事も広がる。
護衛の存在はどちらにも利点があるのだ。
「なら早速探すとするか。」
ジルも異世界通販のスキルで護衛に良さそうなのを探す。
「奴隷、魔物、卵、ゴーレム、魔法道具、沢山あるのです。」
護衛を探すと言っても候補は多い。
さすがは異世界通販の品揃えである。
「特に要望が無ければ魔物にしようと思うがどうだ?」
普通であれば魔物をテイムして従わせようとしても難しい。
魔物自体の性格もあるが、基本的には自分よりも強い者にしか従わないからである。
だが異世界通販のスキルにて購入した魔物は、購入者に絶対服従となる特典がある。
これによって戦闘能力が無いに等しいシキでも、従ってくれる魔物を手に入れる事が出来るのだ。
「大丈夫なのです。モンスターテイマーって少し憧れだったのです!」
自分では絶対に無理な事だったので憧れも多少あるらしい。
それと前世の魔王の側近の一人がモンスターテイマーであり、よく魔物と一緒にいたのも関係しているのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます