7章
元魔王様とシキの従魔 1
領主であるトゥーリの依頼を無事終わらせたジル達には、ギルド経由で報酬が支払われると聞いたので、ジルとシキはギルドを訪れていた。
「あ、ジルさん。依頼の件ですか?」
普段から対応してくれているミラの下に向かうと、早速報酬の件だと察してくれた。
「ああ、ここで貰えると聞いたのでな。」
「少し待っていて下さいね。」
ミラは報酬を取りに奥の部屋に消える。
そしてトレイの上に報酬を乗せて帰ってきたのだが、見るからに少なく感じた。
「お待たせしました。こちらが報酬です。」
トレイの上にはキラキラと光る少し大きな金貨が10枚乗っている。
「ん?これだけか?」
「これだけって…。」
ジルの反応にミラが言葉を失う。
まさかそんな反応をされるとは微塵も思っていなかった。
「ジル様!これは大金貨なのです!凄いお金なのです!」
ジルと違ってシキは驚いている。
これは金貨では無く大金貨と言う貨幣なのだが、この世界で暮らす期間が長いシキは知っていた。
「そう言われると少し大きいな。」
「焦りましたよ。まさかこれだけの大金貨を貰って、不満を言われたのかと思いました。」
単純にジルが知らなかっただけなのだと知ってミラは納得する。
「悪いな、大金貨と言うのを見たのは初めてだったのだ。」
魔王時代は貨幣すら使用した事が無かったので、認識して使い始めたのは転生後だ。
一枚の価値が高い大金貨を見る機会も無かったので仕方が無い。
「大金貨1枚は金貨10枚分なのです。ここには大金貨10枚あるので、金貨100枚分なのです。」
「その通りです。なので報酬は大金貨10枚の1000万Gですね。」
大金貨の価値をシキとミラが教えてくれる。
その金額を聞いて改めてジルは驚いた。
転生後に貰った中で一番高い報酬である。
「それはかなりの金額だな。」
「一握りの高ランク冒険者に払われる様な額なので、それ程今回の依頼に感謝しているのでしょう。」
本来これ程の依頼報酬を貰える者は限られている。
それに匹敵する程トゥーリのお礼の気持ちが込められていると言う事だ。
「そうか、思ったよりも多くて助かるな。」
「これだけあれば暫く安泰なのです。」
異世界通販のスキルに注ぎ込む気満々の二人からしたら、多ければ多い程嬉しいのである。
「そしてもう一つご報告があります。少し時間が掛かっていたのですが今回の事もあり、ジルさんのランクがDに昇格いたしました。」
ゴブリン集落掃討の時に上がった話しである。
新人冒険者に対して優遇し過ぎではないかと言う意見も一部あって、ギルドの上層部が少し揉めた結果遅くなったのだ。
実際にジルの事を見れば理解するとは思うが、話しだけでは理解し難い部分もあるだろう。
しかしギルドマスターやベテランギルド員の意見が決定打となってDランク昇格が決まったらしい。
「あまり嬉しそうではありませんね。」
ランクアップの報告を受けたジルは特に喜んだ表情をしていない。
「ランクが上がると面倒事が増えると聞いてな。」
高ランクの冒険者になると長期間の拘束や強制的な依頼が発生したりする。
それは自由気ままな人生を送るジルの望むところでは無い。
「例外もありますがそれは殆どCランクからですよ。それを踏まえてのDランクでもありますし。」
一応ジルの事を考えた結果のDランクであるらしい。
Cランクに上がらなければ自由度は今までと差程変わらない。
「そうか、ならばこれ以上上がらない様に依頼は控えるべきか。」
意欲的に依頼をしてしまうと直ぐにCランクに上げられてしまう可能性がある。
ジルとしてはずっとDランクで構わないのである。
「こちらとしては定期的に依頼を受けてほしいんですけどね。」
「資格剥奪されない程度には受けるつもりだ。」
一度剥奪されてしまうと、二度目の発行が更に面倒になると聞いた。
ランクアップした事による面倒事から逃げようと、わざと冒険者カードを剥奪されてランクを下げる様な行いは出来無い様になっているのだ。
「本音を言えばもっと受けてほしいんですが、強制は出来ませんし仕方ありませんか。何か依頼を受けていかれます?」
「いや、最近忙しかったからな。暫くゆっくりするつもりだ。」
働いた分しっかりと休息を取りつつ、やりたい事を自由にするのだ。
仕事や使命ばかりに追われる前世とは違うのである。
「確かにそうですね。しっかり休息なさって下さい。」
働き過ぎるのは逆に効率が悪かったりもする。
適度な休息は冒険者にも大事なのである。
「そのつもりだ。それと話しは変わるが、ミラに一つ頼み事があるんだが。」
ギルドによった理由は他にもあったのである。
「頼み事ですか?」
「ああ、これだ。」
ジルは無限倉庫からミスリル鉱石を取り出す。
以前ミラに見せた事もある、それなりに価値の高い鉱石だ。
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