元魔王様とオークション島テルイゾラ 7
半信半疑な町長を連れてジル達は町の外に出る。
デザートタイタンバードは大き過ぎて町中で出せる様な魔物では無い。
「ここら辺でいいか。」
「本当に倒したのか?それにデザートタイタンバードを収納出来るスキルと言うのも信じ難いのだが。」
収納スキル自体が希少なスキルと言われている。
それなのに巨大なデザートタイタンバードを丸々収納出来る容量なんて言われても普通は信じられない。
「実際に見れば信じざるを得ないだろう?ほら。」
「っ!?」
ジルが無限倉庫から取り出したデザートタイタンバードを地面に置くと、その大きさに町長が声も出せずに驚いている。
「これがお目当ての魔物だろう?」
「ま、間違い無くデザートタイタンバード。本当に討伐していたのか。」
実際に本物を間近で見せられれば信じるしかない。
この町を暫く苦しめていた元凶は既にジルの手によって息絶えさせられていた。
「ジル様に掛かればこの程度の魔物どうと言う事はありません。」
「私達でも簡単に狩れそうなくらいだもんね。」
「他所の冒険者は強いのだな。」
レイアとテスラの発言に町長は感心しているがそんな事は無い。
デザートタイタンバードは高ランクの魔物なので狩るとなればAランクパーティーやSランクの強さが必要になるだろう。
町長の言葉にミネルヴァが静かに首を振っているのが証拠だ。
「それでどうなんだ?条件のデザートタイタンバードは既に倒しているが入行許可証は貰えるのか?」
「さすがにこれを見せられては首を縦に振るしかないな。許可証は直ぐにでも発行させてもらう。」
「助かる。」
町長が頷くのを見てジルも満足気に頷く。
通り掛かりに狩った魔物が役立ってくれて何よりだ。
これで日帰りの予定も無理ではなさそうである。
「ちなみにこの魔物はどうする予定だ?」
「そうだな、この町のギルドに売ってもいいのだが入り切らないだろう?」
奴隷商館まで向かう道中に冒険者ギルドは見掛けた。
しかし他の国にある冒険者ギルドに比べて小さい規模だった。
あれでは倉庫も小さく、受け入れるスペースは無いだろう。
「普段は大きくても人くらいの大きさまでだからな。こんな大きさでは無理だ。だがデザートタイタンバードの素材は是が非でも欲しい。そこでテルイゾラに行ったらオークションで出品してはもらえないだろうか?知り合いに落札を頼んでおく。」
ここでは買い取りたくても買い取れないので町長がそう提案してくる。
「テルイゾラのオークションでか?だがオークションだと誰が落札するか分からないだろう?」
ジルとしては問題無いが素材の欲しい町長側には問題がある。
オークションに出品したとしても、町長が頼むと言う人物が必ずしも落札出来る保証は無い。
他の者が落札すれば素材は手に入らない事になる。
「こう言った高ランクの珍しい魔物は国内の者が落札する事が多いんだ。自分の利益にしつつ自国の民にも分け与えられるからな。それにこの大きさだから落札出来ても国外に運び出すのは一苦労だろう。」
オークションで品物を落札出来ても持ち帰る手段が無ければ意味がない。
これだけ大きな高ランクの魔物であれば欲しがる者も多そうだが、ジルの様なスキルを持つ者が他にどの程度いるか。
それを考えると落札者は自国の者になるとの判断だ。
「成る程、そうなればこの町にも素材は流れるか。」
「テルイゾラへの入行を管理する六つの町には優先的に素材が回される筈だ。」
六つの町はテルイゾラを守る要でもある。
テルイゾラからの様々な優遇措置も受けられるのだそうだ。
「そう言う仕組みなのであれば我は構わないぞ。別にどこで売っても変わらないからな。」
「助かる。だが他の魔物は買い取るぞ。幾つか倉庫もあるからそれなりの量を買い取れる筈だ。」
砂漠の魔物は強くて倒すのが大変なのに加えて環境故に持ち帰るのが困難だ。
長い砂漠道を砂賊に襲われる危険性を伴いながら運搬するのは割に合わないので素材は常に不足気味なのである。
「ならば許可証を待つ間に魔物の買い取りも済ませてしまうか。」
「悪いが入行許可証の即日発行は前例が無いから少し時間が掛かる。ギルドで暇潰ししながら待っていてもらえるか?」
「分かった。なるべく早く頼むぞ。」
「そう出来る様に急ぐとしよう。」
町長達と別れたジル達はギルドに向かって大量の魔物の買い取り作業をして時間を潰した。
普段からジルの買い取りに慣れていないギルド職員達は、その買い取りの多さに大忙しで目を回しているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます