元魔王様とオークション島テルイゾラ 8
魔物を全て売り払ったジル達は酒場で飲み物を注文して町長が来るのを待っていた。
「砂賊と魔物でかなりの収入になりましたね。」
「デスザードの金貨があんなに手に入るとは予想外でした。懸賞金のおかげですね。」
「テスラに任せて正解だったな。」
「魅了魔法ならいつでもお任せ下さい!」
ジルに褒められて得意気な表情でテスラが言う。
想像よりも大量のお金を稼ぐ事が出来たので、もうこれ以上デスザードで金策に走る必要も無くなった。
オークションで高額商品を複数落札でもしない限り使い切れないだろう。
「これならば砂漠船に乗るのも問題無いでしょう。テルイゾラに入行した後の資金もかなり潤沢な筈です。」
「せっかくならオークションに参加してみたかったし、ここで稼げたのは助かったな。」
「そうですね。」
「楽しみです。」
オークション島とまで言われているテルイゾラの本場のオークションには是非参加してみたい。
他ではお目に掛かれない商品も沢山ありそうで楽しみである。
「ところでミネルヴァ、お前は座らないのか?」
ジルが後ろを振り返って尋ねる。
席に着いているのは三人でミネルヴァだけは護衛の様に近くで立っていた。
「お気になされないで下さい。皆さんと私では立場が違いますから。」
ミネルヴァからすればジル達は主人だ。
同じ席に着いて良い様な対等な関係では無い。
「我はそう言う事は気にしない。レイアとテスラの配下となったのならば我の仲間と変わらん。」
例え奴隷であってもこの考えを変えるつもりは無い。
無理強いはしないので本人次第だがジルは皆を同じ様うに扱う様に心掛けている。
「ミネルヴァ、ジル様がこう言っていますから座りなさい。」
「忠誠心があるのもいいけど私達の仕えるジル様の意に背くのも御法度よ?」
「了解しました、失礼します。」
レイアとテスラにも言われては断れない。
ミネルヴァも一礼してから席に着く。
まだまだ堅苦しい感じだが徐々に慣れていくだろう。
「そう言えばジル様、この後砂漠船に搭乗してテルイゾラに向かいますが入行した後どう動きます?」
「先ずはフォルトゥナ探しだな。それを終えてから中立都市テルイゾラを見学して楽しむとしよう。」
今回の一番の目的であるフォルトゥナの現状の確認。
テルイゾラを楽しむのはこれを終えてからだ。
「質問宜しいでしょうか?」
ミネルヴァが小さく手を上げている。
「どうした?」
「皆様はテルイゾラに人探しで来られたのですか?」
「そうだ、フォルトゥナと言う魔族を探してな。」
邪神教に関しても何か分かればいいと思っているが、そちらはついでだ。
「ではその人探しの件は私にお任せ下さい。」
「ミネルヴァが?」
「デスザードで砂賊をして長いですからね。テルイゾラへの入行も何度か経験があります。」
訪れてきたばかりのジル達よりも現地人である自分の方が人探しも捗るだろうとミネルヴァが引き受けると言う。
「入行許可証を持っていたのですか?」
「いえ、貴族から拝借した物を使っていました。」
「その言葉は聞かなかった事にしましょう。」
レイアは聞き流して果実水で喉を潤す。
おそらく殺した貴族から奪った入行許可証を使用していたのだろう。
入行許可証は番号が書かれていてカードのランクが分かれているだけなので他人の物でも使用出来てしまう。
それでも大口の取り引きや頻繁にカードを見られる相手には他人の物だと直ぐにバレてしまうので出入りくらいしか使えない。
「テルイゾラであれば地理に詳しいのでお役に立てるかと。」
「ふむ、だがミネルヴァはフォルトゥナを知らないだろう?」
実際に会った事があるのは元魔王軍で同じだったジル達だけだ。
「それなら大丈夫ですよ。私が絵でも書いて共有しておきますから。」
「性格等も私の方から伝えておきます。」
「そうか?ならば任せるとしよう。」
「はっ、必ずや見つけてみせます。」
ミネルヴァがジルに許可を出されて張り切っている。
そしてそれを見たレイアとテスラは小さく親指を立てていた。
このフォルトゥナ探しは二人がミネルヴァに事前に頼んでいた事だったのだ。
少しでも長くジルとのデート時間を確保する為である。
「待たせたな。」
話しが一段落したところで町長がやってきた。
「おっ、意外と早かったな。」
「急かされたからな。急だったがしっかり用意してきた。」
そう言って町長が取り出したのは金色に光るカードが四枚。
それをジルに手渡してくる。
「これはゴールドカードか?」
「ああ、町の貢献度を見れば歴代でも最高レベルだからな。日数は一日だがデザートタイタンバードまで倒してもらってブロンズカードを渡す訳にもいくまい。」
町長が気を利かせてランクの高いカードを用意してくれた。
これでブロンズカードよりも受けられる恩恵も良くなる。
「それならば有り難く貰っておこう。」
「ああ。それと少し来てくれ。」
「ん?」
ジルだけを立たせて三人と少し離れた場所まで連れて行く。
「どうかしたか?」
「あのフードを被っている者は訳ありだな?一応ゴールドカードは人数分用意してきたし、テルイゾラは入行してしまえば中立の都市だ。だが問題を起こせば都市から外れた瞬間に始末の対象なんて事にもなりかねないから大人しくさせておく事だ。」
そう言って町長がミネルヴァの方を見ながら小さく呟く。
気を遣って忠告してくれたらしい。
一人だけフードを被っていたのでそう思われたのだろう。
「成る程、忠告感謝する。まあ、騒ぎを起こすつもりも無いからそんな事にはならないとは思うがな。」
「それならばいい。」
ジル達は町長から入行許可証であるゴールドカードを受け取った後、テルイゾラへ向かう砂漠船へと乗り込むのだった。
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