元魔王様と謎の集団との再戦 2

 一斉に襲い掛かってきた相手を迎撃する為に、ジルは魔法を使用する。


「超級重力魔法、フォースグラビティ!」


「ぐうっ!?」


 ジルの使用した魔法により女性や他の者達が強力な重力を受ける。

魔装で自分を強化していても立っているのがやっとと言えるレベルで、気を抜けば一瞬で押し潰されそうな威力だ。


「さすがに魔装くらいは出来るか。だが他の者達はどうだ?」


 女性の従魔やネクロマンサーに操られている冒険者達は強力な重力により一切動けていない。


「この重力化で生存出来るのは魔装が前提条件の様なもの。つまり屍では生存不可能と言う事だ。」


 ジルの言葉を肯定する様に冒険者達が次々に押し潰されていく。

これでネクロマンサーも操る事は出来無いだろう。


「有言実行でしっかりと始末してやろう。冒険者達も支配から解放されたいだろうし、安らかに眠れる様弔ってやる。」


 冒険者の亡骸に向けてジルが言う。

既に死んでいるので聞こえてはいないだろうが、このまま放置するつもりは無いと無念の死を遂げた者達に言っておきたかった。

後で火葬でもしてやるつもりだ。


「こ、こんな…力…聞いてないわ。」


 女性は魔装で重力に耐えながら驚愕の表情で言う。

戦闘職が専門で無いと言っても魔装した自分がこうも何も出来無いとは思わなかった。


「魔物共も予想外に抗うではないか。」


 動けてはいないが押し潰されない様に女性と同じく耐えていた。


「ホッコ、とどめを刺してやれ。」


「クォオ!」


 魔物達は重力を耐えるので精一杯だったので、ホッコの使用した氷結魔法による氷の矢を避ける事も出来ず、簡単に身体を刺し貫かれて均衡が崩れ、ジルの重力によって押し潰された。


「後は貴様だけだな。」


 残ったのは女性のみだ。

魔物も操られた冒険者達も全て倒した。


「くっ、予想外…過ぎるわ。こんな冒険者が…セダンにいるなんて。」


「情報収集不足ではないか?我はセダンでずっと暮らしているのだからな。」


 トレンフルに行っていた期間以外は殆どセダンの街で過ごしている。

それにジルは街で色々と行動しているのでセダンの街ではちょっとした有名人でもある。


「っ!?そう言う事ね。貴方、イレギュラー…でしょ。」


「ほう、その呼び方その格好、あれの関係者か。少しだけ興味が湧いたぞ。」


 ジルはイレギュラーと言う単語に反応する。

女性の格好から見ても鬼人族の里で出会った怪しい連中と関係があるのは間違い無さそうだ。


「殺すのは簡単だが、あの男についての情報を持っているのなら欲しいところだ。」


 陣形魔法によって足止めされた借りがある。

あれ以降出会う機会が無かったので是非とも会って借りを返したい。


「言う訳…無いでしょ。」


「貴様に選択権は無い。魔法で尋問してやろう。」


 生きてさえいれば調べる手段は幾らでもある。


「それは困りますね。うちの大事な主力なのでご勘弁願いたい。」


 そう別の場所から声が聞こえると同時に飛来した何かが爆発した。

瞬時に展開した断絶結界により怪我は無い。


「やはりこの程度の不意打ちでは意味がありませんね。さすがはイレギュラーです。」


「鬼人族の里で会ったフードの男だな?会いたかったぞ。」


 鬼人族の里の洞窟で出会った時と同じ姿と声をしている。

ジルの殺気も自然と膨れ上がっていく。


「怖い怖い、私は二度と会いたくは無かったですよ。しかしその人を見捨てる訳にもいかないのでね。」


 ジルの目の前で必死に堪えている女性を助けにきた様だ。


「同じ様なのが他にもニ人、何かの団体か?」


 フードの男の両隣りにも同じ格好をした者達が待機している。


「それはどうでしょうね。情報提供しに来た訳ではありませんので。」


「我はしてもらう気しかないがな!」


 自分の周囲の断絶結界を消して、フードの者達も覆う様な巨大な断絶結界を張り直す。

これによって逃げるには結界を破壊する必要がある。


「逃げ道が無くなってしまいましたか。」


 フードの男が結界をコンコンと叩きながら呟く。

頑丈過ぎる壁が一瞬にして作られてしまい、自分達を閉じ込めてしまった。


「その割には余裕だな。お得意の陣形魔法か?」


「イレギュラーに対抗する為に用意は万端と言う事です。」


 陣形魔法は準備が面倒だが万能な魔法だ。

結界を突破する手段としても使えるだろう。


「話しは…それくらいで…早く…助けなさいよ。ずっと耐えるの…辛いんだから。」


 いつまでもジルと会話しているフードの男に対して女性が文句を言う。

気軽に話している様に見えてジルの重力魔法は継続中であり、女性はずっと苦しんでいる。


「すみません、イレギュラーとの会話に夢中で忘れていました。」


「帰ったら…覚えておきなさい。」


 フードの男の言葉に女性が睨み付けて呟く。


「助けにきてあげたのに怖いですね。それにイレギュラーについては事前に説明したと言うのに独断専行するからこうなるのですよ。まあ、お説教は帰ってからと言う事で、それではイレギュラー、またの機会に。」


 そう言ってフードの男が陣形魔法を起動させようとする。

前回の様にジルの魔法を封じれば、重力も解除されるし結界も消えて無くなる。

今回もそのつもりであった。


「おや?魔法が発動しませんね?」


 陣形魔法を使った筈なのに結界は健在で女性も苦しそうな表情で重力を耐えている。


「貴方、ふざけるのも…いい加減に。」


「いえいえ、真面目ですよ。これでも少し焦っているんですから。イレギュラー、何かしましたね?」


「さて、どうだろうな。」


 ジルはニヤリと笑みを作ってフードの男にそう言った。

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