元魔王様とフォルトゥナとの再会 3

 食事の後は買い物を楽しむ。

テルイゾラは何でも手に入る場所として有名だが、それはオークションでだけでは無い。

世界中の様々な品が露店や店舗でも売買されている。


「二人共似合っているではないか。」


「そ、そうでしょうか?」


「ありがとうございます!」


 私服、髪飾り、ネックレスと色々購入して身に付けた二人は更に美しさや可愛さが際立っている。

すれ違う男性達の視線を集めまくって注目の的だ。


「ジル様、沢山付き合ってもらってありがとうございました。そろそろオークションの出品やオークションが始まる会場に向かいませんか?」


 オークションの紙を見せながらレイアが言う。

店を巡っていたのでそれなりに時間が経ち、そろそろ向かっておいた方がよさそうな時間帯となっていた。


「もういいのか?お前達には色々と苦労を掛けたからな。たまには羽を伸ばさせてやりたかったのだが。」


 ジルとしてはテルイゾラのオークションも楽しみの一つだが、せっかくの機会なので二人の労いもしたかった。


「もう充分過ぎる程頂きました。これ以上は幸せ過ぎてどうにかなってしまいます。」


「なのでまた今度でいいので今回の様に一緒に出掛けてもらえれば嬉しいですね。」


「そうだな、こう言ったゆっくりした日も悪くない。また時間が出来た時にでも出掛けるとしよう。」


 二人と同じくジルも良い気分転換になった。

こう言った事を楽しむ余裕も出来た今世なのだから、定期的な息抜きも取り入れていく事にした。


「魔物の素材関係のオークションはここか。」


 先ず向かったのは魔物だけを取り扱うオークションだ。

町長にも頼まれているので先に出品を済ませておく。


「解体から各素材の出品まで全部任せられるのは便利ですね。」


「倉庫も信じられないくらい広いですね。スキルか魔法道具で空間が拡張されている様です。」


 待たされている間に倉庫内を見てみるととんでもない大きさで驚かされた。

普段利用しているセダンのギルドの倉庫もそれなりに広いのだが、ここは向こう側の壁が見えないくらい段違いの広さとなっている。


「次の方どうぞ。」


「オークションに魔物の素材を出品したい。」

「畏まりました。出品する魔物の名前を教えて下さい。」


 ジル達の順番となったので係の者に呼ばれる。

出品する魔物に関しての記録をしっかり残しておいて、後々のトラブルにならない様に徹底している。

これだけのオークションを取り行っているので、そこら辺は問題無いだろう。


「我が出品するのはデザートタイタンバードとクイーンサンドワームだ。」


 他にも解体前の魔物や素材が無限倉庫の中にあるのだが、今回はこの二体を換金するのが目的なので他はギルドでもいい。


「っ!?そ、そうですか。貴方方でしたか。」


「ん?どう言う事だ?」


「実は事前に魔物のオークションの出品にその二体が出されるから倉庫の整理をしておけと指示がありまして。半信半疑でしたが本当なんですね。」


 係員が驚きながらそう言ってくる。

町長や砂漠船の船員の誰かから事前に出品の連絡が入っていたのだろう。

これだけ広い倉庫でもかなりの範囲を埋めてしまうくらい大きいので受け入れ準備は助かる。


「そう言う事だ。出せる場所はあるか?」


「はい、大体の大きさも聞いてますから場所は確保してあります。ご案内しますね。」


 ジル達の為に用意された場所へと向かう。

他の出品物と隔離された広々とした空きスペースが用意されていた。

既に解体員も待機していて準備万端だ。


「ここであれば足りそうでしょうか?」


「大丈夫そうだな。」


 ジルが無限倉庫の中からデザートタイタンバードを取り出すとその大きさに皆驚いていた。


「おおお、間近で見るととんでもない迫力ですね。これを人が狩れるとは。」


「もう一体は隣りでいいか?解体は済んでいるが。」


「はい、お願いします。」


 クイーンサンドワームは船員達が解体してくれたので素材として直ぐにでも提供出来る状態だ。

それでも元々が大きいので素材もかなり場所を取る為、倉庫で保管してもらうのがよさそうだ。


「ではこの二体の魔物をオークションへ出品致します。素材にならないところはこちらで破棄、解体や素材の管理を含めたオークションへの出品の手数料として一割を魔物オークションの主催に納めると言う事で問題ありませんか?」


「大丈夫だ。」


 これだけの魔物の一割はそれなりの金額になるが面倒事を全て引き受けてくれると考えればジルにとっては安いものだ。


「それでは許可証を提示して下さい。」


 入行許可証のカードにはナンバーが記載されている。

このナンバーをオークション側がメモに残しておいて、取り引きの際に同じナンバーの入行許可証を持ってくれば現金の受け渡しが可能となる仕組みだ。


 入行許可証の盗難に関してはテルイゾラ側で取り締まりも行っているが、所持者とナンバーの組み合わせを全て把握している訳では無いので盗まれれば自己責任となる事も多い。


「はい、確かに。魔物オークション終了後に同じ番号の許可証を提示して下されば落札額が支払われます。」


「分かった。」


「この後は魔法道具のオークションが始まりますのでご興味があればそちらにどうぞ。それでは失礼します。」


 取り引きを終えた係員が一礼して早速デザートタイタンバードの解体指示を出し始めた。

皆忙しく動いているので邪魔にならない様にジル達は早々に退散した。


「元々向かうつもりだったし魔法道具のオークションに行ってみるか。」


「テルイゾラのオークションにはどんな魔法道具が出品されるんでしょうかね?」


「オークションが売りの都市ですからね。出品物には期待出来そうです。」


 三人はこれから始まるオークションを楽しみにしつつ会場へと向かった。

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