元魔王様と世界最強の従魔使い 6
天使族の動向について新たな情報を得られた。
ジルの事を探し回っているのも確かだが戦争による魔族の警戒の方が主な目的だったらしい。
「他に聞きたい事はあるか?」
「ああ、まだある。フォルトゥナはどうしている?」
ジルはかつての配下の一人の名を口にする。
多くの魔族を従えていたが唯一この者だけが無事に生きていられたか心配していたのだ。
「懐かしい名を出してくるな。」
「唯一我の配下で心配だからな。」
「奴は案外逞しいぞ?」
レギオンハートの言葉にレイアとテスラも頷いている。
昔の同僚の事なので全員覚えている。
「それは知っている。だがあの性格だからな。」
「ジル様率いる魔王軍で最も臆病だった男ですからね。」
「そして魔王軍で最強だった男ね。四天王よりも強いって反則じゃない?」
「それでも戦いは好まない性格だったからな。四天王向きでは無かった。その気になれば王にもその剣が届いていたかもしれないのにな。」
それぞれがフォルトゥナの印象を語っていく。
全員が共通して思っているのは強いがとても臆病と言うものだ。
「確かに奴は我を殺せる可能性を持つ限られた者の一人だった。だがそんな事は絶対にしたがらんだろう。」
「庇護下に入れてくれたジル様に心から感謝していましたからね。」
魔王軍に加えた時の事はよく覚えている。
フォルトゥナは保身の為に最強の魔王が率いる魔王軍に入れてほしいと懇願してきた。
臆病な性格故に一人で生きていく事は選択肢に無く、世界一強い魔王の近くにいれば安全だと思ったらしい。
「ジル様がこの世を去った時は酷く絶望していましたよ。一人で生きてはいけないって。」
「悪い事をしたとは思っている。」
フォルトゥナの性格を考えれば容易に想像が付く。
自分を庇護してくれていた圧倒的な存在が消えたとなれば酷く動揺していた事だろう。
だからこそ無事に生き延びられたのか気になっていた。
「そんなフォルトゥナはどうなった?」
「フォルトゥナは生きている。無事では無いかもしれんがな。」
取り敢えず生き延びている様だがレギオンハートが不穏な言葉を付け加える。
「それはどう言う事だ?」
「中立都市テルイゾラ、知っているか?」
「いや、聞いた事が無いな。」
記憶の中には無い都市の名前だ。
そもそも魔国フュデスやジャミール王国で無い国ならば都市の名前なんて一々覚えていない。
「まあ、王が転生中に出来た人口の島だからな。テルイゾラは魔国から西の国の巨大な湖にある小さな島だ。」
転生中に出来た島ならば知らないのも当然だ。
天使族の件も転生中で知らなかったので、100年間もいなければこう言った事はそれなりにある。
「テルイゾラと言えば何でも手に入ると噂の島ですか。」
「何でも?」
「オークションの会場が島の規模になったって感じですかね?お宝、魔法道具、珍しい魔物、美男美女と金を積めるなら何でも手に入るらしいですよ。」
レイアとテスラもテルイゾラに付いて知っている様だ。
バイセルの街で実際にオークションに参加したからこそ、島の規模のオークションと聞いて興味は惹かれる。
「テルイゾラはどの国からの干渉も受けない完全なる中立都市だ。もし害を与えようなどと考える国があれば、とんでもない被害を受けて最悪国が滅ぶらしいぞ。」
「そこまでの力を都市が有していると?」
「そう公言しているだけだ。それだけの戦力を持っているとな。」
真実かどうか分からないがテルイゾラはそう国々に向けて言っているらしい。
それが嘘と断定は出来無いので手を出す国は未だ無いと言う。
「テルイゾラには黒い噂があります。力を持つ者を奴隷として多く保有していると。中には違法奴隷も含まれるらしいです。」
「まさか。」
「ああ、フォルトゥナもそこに含まれている可能性がある。何度か俺の従魔がテルイゾラにいるフォルトゥナを目撃していてな。接触は監視の目が光ってるらしくて出来無かったが、滞在しているとすれば可能性が高い。」
黒い噂があると言うならその可能性は否定出来無いだろう。
接触して奴隷の証である首輪を見られれば一番確かな情報となるのだが、レギオンハートの従魔でも難しいとなると相当監視の目が厳しいのだろう。
「全く、元魔王軍の中でも四天王を凌ぐ実力があるのに奴隷にされているかもしれないなんて。」
「仕方ありませんよ。フォルトゥナは戦いを好みませんから。己の身に危険が迫っても。」
「あいつの事だ、危なくなっても戦うより逃げに徹しただろうからな。」
フォルトゥナの真の実力はかつての魔王軍でも最強クラスではあるが、自分から戦おうとする性格では無く、直ぐにその場から逃げる様な臆病さだった。
反撃せずに違法奴隷にされていても不思議は無い。
「そうなると奴隷狩りから逃げきれなかったか、ハニートラップにでも引っ掛かったんだろうさ。」
「女好きのインキュバスの性か。」
フォルトゥナはインキュバスと言う種族だ。
何よりも異性が大好きな男であった。
「まあ、そう言う事だ。もしフォルトゥナを助ける機会があるなら俺もかつての仲間として協力するぞ?」
「そうだな。落ち着いたら行ってみるのもありか。万が一敵に回られても厄介だ。」
一先ずフォルトゥナの無事は何度か確認しているらしく、早々に死ぬ様な事は無さそうなのでこの件は保留としておいた。
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