元魔王様とナキナの従魔 4
事前に話し合って決めていた予定通りにナキナとラブリートが戦っていた全ての者達を村の中に連れ込んでくれた。
村人や冒険者がジルの張った結界内に入ったので、これで魔物から守る事が出来る。
一先ず作戦成功であり、話し合いや手当の時間が稼げた。
「って言うかこんな時に何を悠長な事をしてんだー!」
一人の男が思わず叫んでしまう。
ジル達がくるまで村の防衛の指揮をしていたBランクの冒険者である。
その叫び声は目の前のジルに向けられている。
「何って見て分からないのか?」
ジルは村人から貰った果物や干し肉を食べながら言う。
「飯食ってるのは分かるけど、今はそんな場合じゃねえだろ!」
男が村の外を指差して言う。
ジルの張った結界によって魔物は入ってこられないが、村の全方位が魔物に囲まれている状況だ。
結界はこの程度の魔物に破られる事は無いが結界が常に攻撃されており村人達は怯えている。
「空腹だし魔力も少ないのだ。仕方無いだろう?」
「私に免じて少し待ってちょうだい。」
ジルの代わりにラブリートが冒険者達にお願いしている。
Bランク冒険者も闘姫と呼ばれるラブリートに頼まれたら文句も言えなくなる。
「なんだこの気持ち悪い格好をした
「おいゴオルァ、なんて言いやがったガキ!」
会話に割り込んできたラブリートに他の冒険者が文句を言おうとするが、とある言葉が聞こえた途端にラブリートが物凄い反応速度を見せて、一瞬で男の胸倉を掴み上げた。
それなりに体格の良い男だったのだが、ラブリートは軽々と片手で持ち上げている。
ミラが禁句と言っていた言葉を言ったからか、凄まじい形相とドスの効いた声で威圧している。
魔物と戦っていた時よりも遥かに怖かったのだろう、失言した冒険者の男は恐怖のあまり白目を剥いて失神していた。
「あの馬鹿。」
Bランクの冒険者が額に手を当ててやらかしやがってと言う表情をしている。
ラブリートに向かって男と言う言葉を使うのはタブーである。
これはSランク冒険者であるラブリートを知っている者であれば大半が知っている事だ。
周りにいる他の冒険者も何人かは知っている様子であり、知らない冒険者や村人は訳が分からず震えていた。
「すまねえ闘姫、こいつには俺達が言って聞かせるから許してくれ。」
「ラブリート、あまり戦う前に戦力を減らすな。」
「…仕方無いわね。今回だけはジルちゃんに免じて許してあげるわ。」
ジルの言葉で幾分か冷静さを取り戻したラブリートは掴み上げていた男をポイっとゴミの様に捨てて怒りを収めた。
「ああ、すまなかった。尋ねたいんだが闘姫の知り合いと言う事は、この者達はかなり強いのだろうか?」
ラブリートと共に行動しているジルやナキナに関しては初めて見る者が多い。
冒険者としてラブリート並みに名が知れている訳では無さそうだが、気安い関係なのを見ると実力は高いと予想された。
「そうね、この戦いで充分活躍してくれるわよ。だから少しだけ待ってちょうだい。」
「それ程か…。そんな高ランク冒険者とは知らず失礼した。」
Bランクの冒険者がずっと食事をしているジルに頭を下げて謝罪する。
「いや、ランクはお前の方が高いぞ?我はDランクだからな。」
「妾もEランクじゃ。」
「はぁ!?」
二人の言葉を聞いて男は素っ頓狂な声を上げる。
ラブリートの言葉からAランクはあると思っていたのに、そんなにランクが低いとは思わなかったのだ。
「鬼人族の嬢ちゃんは確かに強かったよな?」
「ああ、だがこの男は本当に強いのか?」
周りの冒険者達がこそこそと話している。
実際に戦っている姿を見たのでナキナの実力が高い事は理解している。
しかしジルに関しては村に着いてからずっと食べ物を食べているだけだ。
結界を張って仕事はしているのだが、これはジルでは無くシキが使った事にしてある。
結界魔法を使える冒険者だと知られて、その情報が出回るのも面倒なので精霊様の力と言う事にしておいたのだ。
「まあ、いい。この中で一番の高ランクは闘姫だ。今までは俺が指揮してたが今からは闘姫に従う。お前らも異論は無いな?」
男が振り向いて他の者達に尋ねるも異論は無さそうだ。
「それじゃあ私の言う事に従ってもらうわよ。一先ずは待機して休息と治療してちょうだい。この子の食事が終わり次第、戦闘を再開するわ。」
簡潔な説明ではあったが冒険者達は頷いてくれている。
先程の光景を見たからかもしれないがラブリートの指示に逆らう者は一人もおらず、しっかりと従ってくれる様だ。
「闘姫が待つ程の者か。」
「私と遜色無いと思うわよ。それに私は数が多い相手は苦手なのよ。この子が参加してくれないと苦労するわ。」
ラブリートの発言にラブリートのランクを知っている者達は皆驚いている。
まさかSランク冒険者にそこまで言わせる程の実力者とは思わなかったのだろう。
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