元魔王様とリュシエルのダンジョン探索 6
魔物の群れを倒し終えたジル達は下に降りる階段を探しつつ階層を探索する。
するとこれまでの階層と違って宝箱が沢山見つかる。
今も目の前に五個目の宝箱が見えてきた。
「明らかに運が上がっている感じがしますね。」
「祝福の笛の効果かもな。大当たりだったんじゃないか?」
「これは嬉しい収穫です。後は良さげな剣が出てくれれば言う事無しなのですけどね。」
リュシエルが宝箱の前に屈んで蓋を持ち上げる。
中には強そうな斧が入っていた。
「またハズレだな。」
「うー、剣を引き当てる運は無い様です。」
残念そうにしながらも斧を入手して次に向かう。
ここまで様々な良い物を宝箱から引き当てているが、リュシエルが欲している剣はまだ入手出来ていない。
「まあ、この調子ならその内引き当てられるだろう。」
幸運の効果かは分からないがこんなに宝箱が見つかるのは運が良い。
「そうだといいのですけどね。ジル、魔物です!」
「いけそうか?」
「やってみます。はあっ!」
進行方向にいる魔物に剣を構えてリュシエルが向かっていった。
「ポーションがあると言ってもそろそろ限界だろうな。」
体力的には問題無いかもしれないが精神的にはそれなりにきている筈だ。
ポーションで体力や魔力は回復出来ても気力はどうしようもない。
魔物との連戦、慣れないダンジョンの環境、本人は大丈夫だと言っているがそろそろ引き上げ時だ。
あまり遅いと公爵達にも心配を掛けてしまう。
「ふぅ、強かったですね。」
「お嬢、そろそろ引き上げるとしよう。」
「えっ、もうですか?」
魔物を倒し終えたリュシエルにそう声を掛けると物足りなさそうな表情で言ってくる。
「さすがに連戦続きだからな。ポーションを飲んでも精神面は回復しない。」
「で、ですが。」
リュシエルは先程開けた宝箱をチラリと見る。
「分かっている、まだ剣が手に入っていないと言いたいのだろう?」
「はい、ですがジルの撤退の指示には従います。なので後一個だけ開けさせてくれませんか?」
そう言ってリュシエルが手を合わせて頼み込んでくる。
どうしてもダンジョン産の強力な剣を入手したい様子だ。
「仕方無いな。」
「ありがとうございます!」
ジルからの許しが出てリュシエルは笑顔を浮かべる。
こうなれば何がなんでも剣を手に入れて帰りたい。
そうして魔物を相手にしつつ探索を続けていると最後の宝箱を見つける。
「お願いします。どうか出て下さい。」
リュシエルが宝箱の祈りながら蓋を開ける。
閉じていた目をそっと開けていくと、宝箱の中には一本の剣が置かれていた。
「け、剣です!」
リュシエルはそれを持って嬉しそうに掲げる。
最後にしてやっとお目当ての剣を引き当てる事が出来た。
「ほお、最後に引き当てたか。」
「やはり祝福の笛の効果は本物ですね。ジル、早速お願いします。」
剣を受け取って魔法道具を持ちつつ万能鑑定で調べる。
「耐性の剣、所持している者は全ての攻撃に対して若干の耐性を得るらしいぞ。減退幅は大きくないが、全ての攻撃にってのは良いな。」
「全然嬉しいですよ。大切に使います。」
リュシエルは返された剣を大事そうに抱えて言う。
これも自分を守ってくれる大切な剣だ。
「ではここでダンジョンからは引き上げるか。成果物も中々あるし調査としては上出来だろう。」
こんなに宝箱を見つけられるとは思わなかったので良い報告が出来そうだ。
「ダンジョンは今回が初めてだったのですが、冒険者の目線で見て人は集まりそうですか?」
「難易度も普通だし宝箱は草原が多いので見つけやすい。中々当たりのダンジョンではないか?」
草原ばっかりで気が滅入るのはあるかもしれないが、それを除けば良い事が多いダンジョンな気がする。
初心者からも挑めそうなのでシャルルメルトの冒険者でも問題無いだろう。
「それならお父様も喜んでくれそうですね。ダンジョンから持ち帰った魔法武具や魔法道具もギルドや商会が喜んで買い取ってくれそうです。」
シャルルメルトではどれも貴重な品だ。
これからは多く出回る様になるかもしれないが、今は注目される事間違い無い。
「どれを売るんだ?」
「耐性の剣と祝福の笛以外は全てジルの判断に任せます。私はこれを貰えるだけで満足です。」
他にも宝箱から入手した物や魔物のドロップアイテムが沢山あるのだが、リュシエルはその二つだけで問題無いらしい。
嬉しそうな表情を浮かべて大切そうにしている。
「ならば他は全て公爵に報告した後に換金するか。我も必要では無いしな。」
シャルルメルトでは結晶石の購入で結構散財してしまった。
これで補填しておけるのは有り難い。
「それでどうやって帰るのですか?また魔法ですか?」
「その方が早く帰れるしな。不満か?」
飛び降りたのが怖かった様でずっと悲鳴をあげていたリュシエル。
魔法での近道は嫌なのかもしれない。
「降りるよりは登る方が怖くはなさそうですから大丈夫ですよ。…それにジルが運んでくれますし。」
後半はジルにも聞こえない程の小声だったが、自分で呟いた言葉に頬を赤くしていた。
先程のお姫様抱っこを思い出してしまったのだ。
「危ないから離れていろよ。レールガン!」
真上に放たれた黒鋼岩がダンジョンの天井を幾つもの撃ち抜いて大穴を開けていく。
「ダンジョンが崩落しないか不安になる威力ですね。」
「勝手に元に戻るから大丈夫だろう。上がる時は重力魔法でいいな。」
ジルが重力魔法を使用して自分とリュシエルの身体を浮かび上がらせる。
そのまま穴の空いた天井目指して浮いていく。
「えっ?」
「ん?何だ?」
「…別に何でも無いです。」
「ん?」
急に少し不機嫌になったリュシエルに首を傾げるジルだった。
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