魔法生命体達と浮島防衛戦 5
タイプDの重力魔法により空中を移動しつつ天使族達を倒していくタイプB。
目指すのは遥か上空から浮島に攻撃を加え続けている天使だ。
「マスターの結界に攻撃を続ける貴方には速やかな死を。」
目的の天使の下まだ辿り着いたタイプBが告げる。
「あら?人族かしら?空を飛ぶなんて不敬ね。貴方達は地に這いつくばっているのがお似合いよ。」
そう言うと周囲に光る球体を幾つも生み出して、そこから光線を放ってくる。
「『換装!』フォートレス!」
大楯を取り出し魔装して光線を受け止める。
タイプB最大の防御力を誇るので天使の攻撃でも簡単には突破出来無い。
「私の聖痕の力を受け止め切るなんて不敬ね。無様に貫かれるところよ。」
無事なタイプBを見て不機嫌そうに天使が言う。
「マスターから賜った武具を羽虫程度が貫ける筈ありません。」
「羽虫?羽虫ですって?なんて不敬な事を言うのかしら。貴方の存在はこの私、光線のレーエルが消し去ってあげるわ。」
聖痕が輝き球体を幾つも生み出す。
先程放ってきた光線は聖痕の力によるものだ。
「光線の聖痕ですか。自らの情報を敵に教えるとは浅はかですね。」
「自信があるって言ってほしいわ。だって私の光線に耐えられる人族なんている筈ないんだもの。」
言い終わると同時にレーエルが大量の光線をタイプBに放ってくる。
先程よりも遥かに量を増しており勢いが凄まじい。
「ずっとその楯で耐えているといいわ。いつまで耐えられるのか見てあげる。」
防戦一方のタイプBを見て笑いながら光線を放ち続ける。
しかし数分打ち続けてもタイプBの大楯を突破する事が出来無い。
「思ったよりもやる様ね。それならもっと広範囲ならどうかしら?」
レーエルが一直線に放っていた光線の軌道を変える。
タイプBの前後左右上下とあらゆる方向から光線の同時攻撃を仕掛けた。
「楯で全方向防げる?」
一方向だけであれば自分の光線を受け止め続けられる様なので相当な防御力だとレーエルも認めた。
しかし範囲が広くなれば全てを防ぐのは不可能だ。
「防ぐ必要も無いのですけどね。あまり速くありませんから避ければいいだけです。」
タイプBは全身を魔装して空中を滑る様に移動して光線を回避していく。
タイプDの重力魔法によって浮かせてもらっているが、その魔法適性の高さから地上と変わらない動きも可能だ。
「貴方本当に不敬ね。でもそこからは間合いよ。」
レーエルがにっこりと微笑んだ瞬間に近くで風切り音が聞こえた。
「『換装!』」
タイプBは大楯から白焔に装備を変更して風切り音の鳴る方へ構える。
すると何も見えないのに白焔に何かが当たって軽い衝撃が伝わる。
「あら、驚いたわ。見えていたのかしら?」
「視覚情報に頼らずとも感じ取る事は出来ます。」
周囲にはレーエルしか見えなかったが、何かが潜んでいるのをタイプBは感じ取っていた。
いつ仕掛けてくるか様子を伺っていたので対処出来た。
「姿の見えない天使族、それも聖痕の力ですか?」
「御名答よ、透明の聖痕。凄いでしょう?」
「…レーエル、勝手に言わないで。」
不満そうな声と共に天使の翼を持つ少女の姿が現れる。
右手の甲には聖痕があり、左手には小さな剣が握られている。
あの剣で先程攻撃された様だ。
「ごめんなさいね、トラエル。でも貴方の聖痕の力って分かりやすいからいいじゃない。」
「…教えるのは駄目。…勝率が少し下がる。」
「私と貴方がこの人族に負けるとでも言うの?そんなのはあり得ない事だわ。」
ここまでの戦いを見てもタイプBに負けるとは全く思っていない。
それだけレーエルは自分とトラエルと言う天使の力に自信があるのだろう。
「…相手に力を知られると少しあり得ちゃうから駄目なの。」
「いい?あり得ないって言うのはね、起こる可能性が皆無って事なのよ。皆無な事に何があっても結果は変わらないの。」
「そうですね、それには同感します。」
レーエルの言葉にタイプBが頷く。
確定している事を覆すのは難しい。
「あら、意外と話しが分かるのね。」
「ええ、レーエルでしたか?貴方が私に殺されるのは最初から決まっています。マスターに敵対し、マスターの結界を攻撃していたのですから。そこに他の天使族がどれだけ加担しようと皆私に殺されるだけです。」
言葉には同意したが結果は真逆だとタイプBが言う。
マスターであるジルの拠点に攻め込んできた段階で相対した敵は皆殺しにするとタイプBは決めていた。
「前言撤回よ、全然話しが分かっていないわね。貴方本当に不敬だわ。」
レーエルか不機嫌そうな表情を浮かべつつ周りに光る球体を生み出す。
「トラエル、遊撃は任せるわ。」
「…分かってる。」
トラエルの聖痕が輝き出す。
するとその姿が空間に溶け込む様に消えていった。
「聖痕持ちの排除を開始します。」
ジルから与えられたジルとダナンの共同制作である白焔を構えてタイプBは静かに呟いた。
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