元魔王様と浮島の超高難易度ダンジョン 4

 その後もダンジョンの床を撃ち抜いてボスに挑むのを繰り返していく。

十階層のボスの様に強化された魔物がボスとして設置されていてタイプDは上機嫌であった。


 ゴブリン、コボルト、オークと見慣れた魔物ばかりだが、その強さは桁外れである。

まだ魔杖や超級魔法を解放してはいないが全力で相手を出来るのでタイプDは楽しんでいた。


「三十階層のボスはどんな感じでしょうかね!」


 強化された魔物との戦いが楽しくてタイプDのテンションがずっと高い。


「また強化魔物じゃないか?だがここで一旦ダンジョンが少し変わるみたいだな。」


「その様ですね!空間把握を使用出来る我々は三十一階層が先に分かりますからね!」


 空間把握を使用した二人はボスの部屋を前に次の階層が分かる。

迷路はついに終わって別の雰囲気の階層に変わっている。


「廃墟の様な階層だな。ボスを突破したら近道無しで進んでいくか。」


「賛成です!」


 階層の雰囲気が変わったと言う事は出てくる魔物の種類も変わる。

上階層の魔物は空間把握で見て低ランクばかりだった。

なので三十一階層からの魔物には期待出来る。


「こ、これは魔物では無い!?」


 ボス部屋に辿り着いて扉の絵を見てタイプDが驚いている。

先程までと違って魔物の姿が描かれていなかった。


「五階層と同じ様な異世界の敵か?確かアンドロイドαとか言う名前だったな。」


「えー、また期待外れですか?」


 ジルが万能鑑定で視た名前を思い出すとタイプDのテンションが明らかに下がる。

強化魔物と違ってあっさりと倒せてしまったので楽しめなかったのだ。


「そうとも限らないだろう。ここはボスである強化魔物を倒して辿り着いた三十階層なんだからな。少なくともこれまでで一番手強いのではないか?」


「それならば文句は無いんですけどね!一先ず進まなければ分かりませんか!」


 ジルに言われて少し期待を高めてボス部屋の扉を開く。

松明に明かりが灯って魔法陣からボスが召喚される。


「ふむ、見た目は同じ感じだな。名前はアンドロイドβ…ん?」


 万能鑑定で名前が違う事が確認出来たが他にも気になるところがあった。


「マスター、どうかしましたか?」


「このアンドロイド、スキル持ちだ。魔法無効化のスキルを持っているぞ。」


「え?」


 アンドロイドαや強化された魔物達はスキルは持っていなかったが、ここに来てついにスキル持ちのボスが現れた。

しかもタイプDを狙い打ちしたかの様なスキルである。


「これはタイプD殺しのスキルだな。偶然か?」


「魔法が効かないスキルなんて貴重な物をこんな奴が持っているとは許せません!来たれ、魔杖・夢現!」


 タイプDが相棒である神器級の魔杖を手元に取り出す。


「おいおい、魔法は効かないと言っているだろう?」


「強化された私の魔法であれば可能性はあります!やらせて下さい!」


 タイプDは自身の魔法適性と魔杖の性能に絶対の自信がある。

スキル一つで引き下がりたくないのだ。


「仕方無い、一発だけだぞ。それと使うのはレールガンにしろ。」


 魔法無効化と言うスキルを所持しているのだから何を撃っても効かない筈だ。

高威力かつ周りに被害の出ない魔法で納得してもらう事にする。


「極級魔法を撃ちたかったのですが仕方ありませんか!」


「指定しておいて良かったな。」


 極級魔法なんて冗談では無い。

アンドロイドβの前にジルが甚大な被害を受けてしまう。


「それならいきますよ!最高レベルの魔法適性とそれを更に強化する夢現から放たれる最強の雷霆魔法、レールガン!」


 魔杖の先に雷が集まり眩い球体となる。

バチバチと周りに電気が走っており、それをアンドロイドβの方角目掛けて解き放つ。

視界を埋め尽くす眩しさと轟音を響かせて雷の光線がアンドロイドβの全身を貫いた。


「ふっふっふ、この威力を耐えられる者など存在しません!」


「ふむ、全く効いていないな。」


 自信満々に威張っていたタイプDだったが空間把握で確認すると無傷のアンドロイドβが煙の中に立っていた。


「うわーん、マスター!魔法無効化なんてスキル卑怯ですよ!私が勝てる訳ありません!」


 無事だとジルから知らされるとタイプDは泣きながら縋り付いてくる。

自分でも勝てないと薄々感じていた様だ。


「ならば最初から諦めればいいものを。では今回は我がやるぞ?」


「はい!敵討ちをお願いします!」


 タイプDと変わってジルが前に出る。

美咲のダンジョンでの初戦闘だ。

銀月を抜いてアンドロイドβに迫る。


「ふっ!」


 銀月を振るうと機械の腕によって受け止められた。

アンドロイドβの腕には刃物が付いており甲高い金属音が響く。


「ほう、魔法無効化のスキルだけで無く普通に戦闘もいける感じか。」


 ジルはアンドロイドβとの戦闘を楽しみながら攻防を繰り広げていく。

徐々に速度や攻撃力を上げていくと実力が見えてくる。


「マスター、ファイトです!そんな奴ボコボコにしちゃって下さい!」


「相棒がそう言っているからな、終わらせてもらうぞ!」


 ある程度実力も分かったので勝負を決める事にする。

ジルは足を魔装してアンドロイドβを蹴り飛ばし銀月を納刀する。


「抜刀術・断界!」


 壁に激突したアンドロイドβに魔力の斬撃を放つ。

回避させる暇を与えずに放たれた斬撃は壁に大きな斬撃跡を刻みながらアンドロイドβに致命傷を与えた。


「さっすがマスターです!」


「いや、あのアンドロイドは凄まじいな。両断出来無かったぞ。」


 両断するつもりで放ったのだが耐久力が高くて出来無かった。

それでも倒す事は出来てドロップアイテムに変わっている。


「倒した事には変わりありません!ドロップは…これ何ですか?」


 タイプDが拾って見せてきたのは何かのインゴットだ。

ジルは万能鑑定を使用する。


「オリハルコンではないか。まさか希少鉱石までドロップするとは。」


「人族に人気が出そうですね!」


「ああ、このまま五十階層を目指すぞ。」


「了解です!」


 ドロップアイテムを収納してジル達は階段を降っていった。

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