82章
元魔王様とテルイゾラの地下空間 1
テスラに現状の報告を受ける。
フォルトゥナ以外を魅了しているのは戦闘に発展してしまったかららしい。
「まあ、やってしまったのだから仕方無いだろう。魅了状態であれば多少直近の記憶も操作出来るしな。」
魅了魔法は色々と便利なのだ。
テスラと出会ったのを無かった事にするくらいは出来る。
「でも私と出会った事は忘れさせる事が出来てもフォルトゥナの記憶を消すのは難しいと思いますよ?」
「一定の期間を共に過ごしているでしょうからね。」
「それは仕方無いだろう。」
フォルトゥナに関する記憶を消そうとしてもそれに関する記憶や前後の記憶で齟齬が生まれる。
そうなると記憶障害や記憶喪失等の面倒な事態に発展しかねない。
なのでフォルトゥナの記憶は諦めるしかない。
「ジル様、僕はこれからどうなるんですか?」
突然昔の仲間達と出会えた嬉しさはあるが尋ねてきた目的が分からず困惑している。
「厄介な立場にいるのだろう?助けてから我の拠点で共に暮らさないかと誘いにきたのだ。」
「また庇護下に加えて頂けるのですか!?」
「フォルトゥナにその気があればな。」
驚いているフォルトゥナにジルが頷く。
一人にしておくのは心配なので目の届くところで生活してくれた方がジルとしても有り難い。
「是非そうしたいです!本当であれば僕は戦いなんてしたくありません!平和に過ごしたいだけなんです!」
「知っている。」
やはり現状に不満を持っている様だ。
元々自分から戦おうとするタイプでは無いフォルトゥナなので予想通りである。
「ジル様達は色々と事情を知っているんですよね?」
「ああ、奴隷を人質として取られていて自由が効かないのだろう?」
「そうなんです。言う事を聞かないと奴隷の命は無いって無理矢理働かされてます。なのでやりたくもない戦いもしないといけません。」
フォルトゥナが大きな溜め息を吐きながら語る。
人質の安全の為にしっかり働いているが相当溜まっている様子だ。
その内不満が爆発して見境無く暴れられても困る。
フォルトゥナを止められる者なんてジル達くらいだ。
「貴方であれば黒幕を倒して人質を救えるのではないですか?」
「テルイゾラの裏の組織は色々と厄介なんですよ。僕一人では太刀打ち出来ません。」
戦闘能力だけを見れば魔族最強クラスのフォルトゥナだが、それで解決出来る程簡単な事では無いらしい。
「何でも手に入るテルイゾラだからこそ元締めの者達は何でも持っているか。」
「そう言う事です。僕がテルイゾラに敵対しても直ぐに人質達を監視する者に情報が入って殺されてしまいます。この状況だって長くなれば不信感を抱かれますよ。」
オークション島テルイゾラだからこそ警戒する事が多い。
通信や監視に優れた魔法道具、スキルや魔法を封じる魔法道具、そう言った物が用意されるだけでフォルトゥナが力を振るう前に勝負が決してしまうかもしれないのだ。
「結界魔法で外との情報を遮断しているのに不信感ですか?」
「監視役は定期連絡をするみたいですからね。それが無ければ何かあったと思われてしまうかと。」
現在の監視役の男性はテスラの方を見て目がハートマークになっている。
まだ魅了魔法に掛かって惚れている状態だ。
「だからそう言う事は早く言いなさいよ!」
「だ、だって聞かれなかったですから。」
「全くもう。」
テスラはフォルトゥナに怒りつつも時間が無いので記憶の消去を開始した。
監視役の男性は魅了魔法で操って定期連絡もさせている。
「そう言えばジル様は何故僕がテルイゾラにいると知っているんですか?」
「レギオンハートに前に聞いたのだ。我もお前を心配していたからな。こうして直接会いにきたと言う訳だ。」
「さすがはジル様です!」
フォルトゥナが感激した様に言う。
感激しているところを悪いが一人で生きていけそうにないからと言う理由でテルイゾラまで会いにきたのだ。
フォルトゥナがもう少し心配のいらない者だったらここまで気にしてはいなかっただろう。
「やれやれ、定期連絡はしてきたわ。他には何かないでしょうね?」
まだ何か伝え忘れている事は無いかとフォルトゥナに尋ねる。
「各グループで巡回の仕事があるので、長時間同じ場所に留まっていても怪しまれるかもしれません。」
「それではあの方々は解放するしかありませんね。」
「僕はどうすればいいですか?」
フォルトゥナもそのグループの一員だ。
ここで突然抜ければ怪しまれるかもしれない。
「体調不良とかで抜けてきなさい。魅了魔法で軽くアシストしてあげるわ。」
「分かりました。」
テスラがフォルトゥナを連れて魅了状態の者達のところへ向かう。
魅了魔法で操った状態なのでフォルトゥナの話しが多少変でも納得してもらえるだろう。
体調不良で抜ける事も伝えられたので全員解放しておく。
「お待たせしました。」
「では一旦移動するか。治安維持組織がいない場所に案内してもらえるか?」
「はいジル様、こちらです。」
また会って色々と時間を取られるのも面倒なので、ジル達はフォルトゥナの案内でゆっくり話せる場所へと移動した。
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