元魔王様と温泉の町 7
姉妹を残してジルが空洞の中へと入っていく。
待ち受けているのはジルの身長を大きく上回るゴーレムだ。
「メタルゴーレムか。確か周りの鉱石を取り込んで自身の力に変えるんだったか?」
万能鑑定で視て情報を得る。
スキルも複数所持しており、鋼化、熱湯、岩石生成と言うスキルがある。
鋼化は黒鋼岩、熱湯は温泉石を取り込んだ事で入手したスキルだと思われる。
「さっさと片付けて依頼を終わらせるぞ。」
「ゴゴッ。」
ジルが足を魔装してメタルゴーレムとの距離を一気に詰める。
メタルゴーレムは熱湯のスキルを使って腕から熱々の湯気を出す熱湯を飛ばしてくる。
「遅い遅い。」
ゴーレム種の鈍重な動きではジルの動きに付いていける筈も無く、一瞬で背後に回り込まれる。
ジルは魔装した銀月でメタルゴーレムの背中を両断するつもりで斬り付ける。
すると銀月がメタルゴーレムに触れた瞬間にガキンと言う甲高い音と共に大きく弾かれてしまった。
斬ったところには薄っすらと亀裂が入っているくらいで、致命傷には程遠い。
「ちっ、硬いな。」
スキルを使われたのかは分からないが黒鋼岩の時よりも硬く感じる。
あまりの硬さに若干手が痺れてしまった程だ。
「ゴゴッ!」
メタルゴーレムが腕を真上に掲げる。
そして岩石生成のスキルで手の上に巨大な岩を生み出した。
それをジルに向かって投げ付けてくるが、魔装によって身体能力が上がったジルは捉えられない。
「シンプルだが恐ろしい破壊力だな。」
回避した岩が壁にぶつかって、粉々に砕けながら大きな窪みを作っていた。
あんな岩に当たれば簡単に身体が潰れてしまう。
「剣が無理なら魔法なんだが。」
チラリと後ろに視線をやると姉妹達がばっちり見ている。
既に冒険者を引退している二人なので接する機会は少ないと思われるが、多種多様な魔法を使うのは躊躇ってしまう。
何かのタイミングで二人からジルの情報がギルドに流れないとも限らない。
なので見られている状況では普段から使用している火魔法を使えば問題無いのだが、今回は場所との相性が悪い。
鉱山内部で高火力の火魔法を使えば酸欠になる可能性がある。
ただでさえジルの魔法は火力が高く、メタルゴーレムを倒すとなると高火力の魔法が求められるので使うに使えない。
「別の魔法を使える状況を作る必要があるな。まあ、これで倒れてくれれば手っ取り早いんだが。」
「ゴゴッ!」
メタルゴーレムが遠くから熱湯を飛ばしてくる。
ジルはそれを後ろに下がって回避しつつ、銀月を鞘に戻して居合いの構えを取る。
「抜刀術・断界!」
膨大な魔力で魔装された銀月による抜刀で魔力の斬撃を生み出す。
空間ごと切断するかの様に斜線上にいたメタルゴーレムに斬撃が襲い掛かる。
「ゴゴッ!」
両腕を前に出してジルの斬撃を防御しようとする。
おそらく鋼鉄化のスキルも使用しているだろう。
そんなメタルゴーレムに斬撃が直撃する。
少し砂煙が舞い上がってしまいメタルゴーレムの姿が隠れたので、どうなったのか黙って見る。
「ゴゴッ!」
砂煙の中から熱湯が飛んでくる。
残念ながら倒せてはいなかった。
「硬過ぎるぞ。あれで倒せないとしても腕の一本も持っていけないとは思わなかった。」
砂煙から現れたメタルゴーレムは腕に大きなヒビを作りながらもその場に立っていた。
ジルの居合いを耐えられるとは、さすがは硬さに特化したゴーレム種である。
「これだと普通の攻撃では倒せないか。魔法に頼るしか無さそうだ。」
ジルは銀月を鞘に仕舞う。
これ以上メタルゴーレムに直接攻撃して欠けたりしても困る。
「目隠しは必須だな。先程くらいの砂煙を起こせれば問題無いだろう。」
ジルはメタルゴーレムが先程投げてきた大岩の一つに近付き無限倉庫に収納する。
そしてメタルゴーレムが放ってきた熱湯を高くジャンプして回避して空中に大岩を取り出す。
「これでもくらえ!」
大岩に回し蹴りを叩き込んでメタルゴーレム目掛けて射出する。
当然こんな普通の大岩で倒せるとは思っていない。
「ゴゴッ!」
メタルゴーレムに大岩が直撃するが硬さが違い過ぎるので大岩の方が簡単に砕け散ってしまう。
だがそれによりメタルゴーレムの周辺が大きな土煙で包まれる。
これがジルの狙いだった。
「目隠し完了。あとは仕留めるだけだ。」
ジルは無限倉庫から黒鋼岩を斬った時に出た拳大の塊を取り出す。
それを手に持ちながら砂煙の中へと落ちていく。
心眼のスキルを発動しているのでメタルゴーレムの姿は見えている。
「ヘビーで黒鋼岩を重くしてフォースディクラインでメタルゴーレムを弱体化。」
重力魔法と闇魔法を使って準備を整える。
「三種類の魔法のコンボを受けてみろ。超級雷霆魔法、レールガン!」
両手に帯びた凄まじい電気で手の中にあった黒鋼岩を眼下にいるメタルゴーレムに射出した。
黒鋼岩はメタルゴーレムの頭に直撃すると、抉る様に身体の中を突き進んでいき、最後には地面に食い込んだ。
心眼で見ていたが頭から下まで一直線に穴が空いている。
砂煙の外にいる姉妹達からは、中がいきなり光って爆音が響いたと言う事しか分からないだろう。
砂煙のおかげで何をしたかは気付かれていない筈だ。
「討伐完了。」
砂煙が晴れた場所には無傷で立っているジルと地面に倒れるメタルゴーレムがいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます