元魔王様と三人目の魔法生命体 9
タイプDと共に魔物の大群の大半を倒したジルは少し離れた地上に降りる。
ここからは残った魔物を殲滅する為に遊撃として掃討戦に参加するつもりだ。
ちなみに白衣の男はスタンピードの関係者らしいので情報を吐かせる為に街の門を守っていた衛兵に引き渡しておいたので、直ぐにでも尋問が始まるだろう。
更にタイプDは見つかると面倒なので既に無限倉庫に回収している。
「魔物の数も減ってきたし余裕そうだな。」
「ジル、お疲れ。」
魔物を倒して回っているとエルミネルが近付いてくる。
「遊撃は順調だったか?」
ジルは魔法陣によって飛ばされてしまったので、遊撃は任せきりとなってしまった。
「途中までは。最後は危ないと思った。」
突然セダンの街を取り囲む様に魔物が召喚されたのだから驚いただろう。
「あの数だったからな。」
「突然沢山倒された。誰がやった?」
先程の魔法の事を言っているのは分かる。
だが正直に自分だと言う訳も無い。
「我も遠くで魔物を倒していたから知らないぞ。」
「残念。凄く強い人、興味あった。」
エルミネルはしょんぼりとしながら呟く。
あれ程の魔法を扱える人物となれば相当な実力者なのは間違い無い。
戦闘狂としては是非手合わせしたいと思ったのだろう。
「他の冒険者に聞いてみるんだな。と言うかまだ魔物は残っているから悠長に話している暇は無いぞ。」
「そう言うこった。お前らもさっさと働け。」
そう言って近くで魔物の首を斬り落としているのはアレンだ。
「前線から戻ってきたか。」
「ああ、街の方が危ねえって聞いたからな。だがよく分からねえうちに魔物の大半が死んでやがった。魔法かスキルか?」
アレンも大量の魔物を倒した人物が気になっている様子だ。
「あんな凄い事出来る人いた?」
「知らねえな。冒険者じゃねえんじゃねえか?」
「じゃあ誰?」
「凄腕の騎士とか傭兵じゃねえか?」
少なくともスタンピードが起こる前にあった会議にはいなかった人物だろうと二人は思っていた。
それ程の人物なら確実に話題に上がっている筈だ。
「まあ、何にしろ敵を減らしてくれたんだからよかったじゃねえか。」
「だいぶ楽になった。」
二人にとってもあの数は驚異だった様だ。
ジル達が倒していなければこんな気楽なやり取りをしている暇も無かっただろう。
「倒しながらでいいが、前線や街の方はどうだったんだ?」
「どうだったって、そう言えばジルはいつの間にいなくなったんだ?」
ジルが魔法陣により転移させられたのをアレンは見ていなかった。
無限にゴブリンが湧き出してくる原因を解決したと思ったら忽然と姿が消えた様に感じていたのだろう。
「ちょっと罠にハマってな。それに時間を使ってしまった。」
「そうか、無事なら良かったぜ。ジルのおかげで無限ゴブリンが消えたから、後は結構楽だったぜ。行方不明が何人か出て捜索されてはいたけどな。」
その行方不明者達はジルと同じく転移させられ殺された者達の事だろう。
既にジルが火葬して弔っているので残念ながら捜索されても見つかる事は無い。
「大きな戦場ではよくある事。」
「そうだな、どっかでやられちまったか生きてても瀕死の重症で助からねえ事もザラだからな。」
ある程度捜索はするが生存は絶望的と思われている。
それだけ今回のスタンピードは大きな戦いだった。
「ちなみに街は大丈夫。全員無事。」
どうやら街も無事守り切れた様だ。
最強の冒険者がいるのであまり心配はしていなかったが、しっかりと守り切ってくれたらしい。
「魔物に侵入される事は無かったと言う事か。」
「何回かはあった。でも全部街の入り口付近でラブリートが殴り殺してた。」
前線で戦えなかったので戦闘出来る機会を見逃さなかったのだろう。
魔物達を一人で蹂躙する光景が目に浮かぶ。
「さすが闘姫だな。あいつが守っているとこを落とせる奴なんて滅多にいないだろうから安心だぜ。」
「うん、頼もしい。」
「今も掃討戦で暴れている様だしな。」
街の方を見ると飛べない魔物が空を舞っている。
戦っている最中に威力の高い攻撃で吹き飛ばされたのだろう。
そんな事を出来る人物はラブリートくらいだ。
「自分の何倍もデカい魔物を殴ってあんなに空高く飛ばすって、どんだけ馬鹿力なんだよ。」
「凄く飛んでる。」
実力者のアレンやエルミネルであってもそう簡単に出来る事では無い。
いかにラブリートが人外離れした実力を持っているのかを物語る攻撃だ。
「サボっているとあんな風に飛ばされるかもしれないし、我らも真面目に魔物狩りをするとしよう。」
二人も魔物の様にはなりたくないので賛成してくれた。
掃討戦に三人が加わった事で魔物の数は一気に減っていき、残りの魔物も直ぐに殲滅する事が出来た。
そしてスタンピードと言う災厄をセダンの街を守りながら無事に乗り切れる事が出来たのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます