元魔王様と討伐競争 3
ジル達はサザナギからの依頼を引き受けてダンジョンに向かう。
「ジル殿、今日はずっとそれでいくのかのう?」
ナキナがジルを見て尋ねる。
現在ジルは影丸の背中に乗って歩いてもらっている状態だ。
元々身体が重く感じていたので歩くのすら億劫なのである。
「疲れているからな。影丸も我一人くらい問題無いだろう?」
「ウォン!」
影丸が任せろとばかりに一鳴きする。
主人はナキナだがジルも主人の仲間なので言う事は聞いてくれる。
それにジルの実力が高く逆らってはいけないと本能で理解しているので、これくらいお安いご用と言った感じであった。
「初ダンジョンなのです!ワクワクなのです!」
「妾も入るのは初めてじゃ!」
小島に到着してダンジョンを目の前に二人は少し興奮している。
魔法で調べたら朝早くから赴いたからかダンジョンには一番乗りであり、他に潜っている者はいなかった。
「これはラッキーだな。さっさと降りるとしよう。」
ジルは人がいないのを良い事に入り口から少し進んだ場所で早速床をぶち抜く事にした。
皆に離れてもらい、超級雷霆魔法のレールガンを地面に放つ。
轟音が響き渡り大穴を幾つも空けてくれた。
「いくぞ。」
「おおお、ショートカットなのです!」
「無茶苦茶な攻略じゃな。」
シキは喜びナキナは呆れながら皆で大穴に飛び込む。
落下して床に辿り着くとジルがまたもや地面に大穴を空ける。
とんでもない速度でダンジョンを降っていく。
「ボス部屋はやっていくか。」
二回程降りると見覚えのある巨大な扉がある階層へと到着する。
威力の高い魔法でゴリ押せばボス部屋のある階層も突破出来るかもしれないが、狭いダンジョンでは生き埋めや崩落の危険性も少なからずあるのでやめておく。
「ゴブリン系統のボス部屋なのです。」
「以前はかなり強いゴブリン種も湧いていたぞ。」
「ほう、それは見てみたかったのう。」
ゴブリンニンジャは非常に強かった。
おそらく単体であればナキナや影丸をも若干上回っているかもしれない。
しかしランダム湧きなので今回も現れるかは分からない。
「だが今日の目的は別だからな。ボス部屋は手早く終わらせる事にする。」
ジルの言葉に文句を言う者もおらず、皆が了承して扉から中に入る。
少し待つと壁際の松明に明かりが灯っていき部屋を照らす。
「我が魔法で片付ける。撃ち漏らした時は頼んだぞ。」
「了解じゃ。」
ナキナが頷いたのを確認してジルが奥に手を向ける。
以前ゴブリン達が現れた魔法陣の位置は記憶している。
その場所に魔法を発動しようとしているのだ。
「魔法陣なのです!」
シキが奥に現れた魔法陣を見て報告する。
以前と同じく五つの魔法陣が床に現れる。
そこから緑色の肌を持つ様々なゴブリンが召喚された。
「上級爆裂魔法、フレアバースト!」
ジルが魔法を使用するとゴブリン達の直ぐ近くに急に眩い輝きが生まれる。
それは直ぐ後に爆発して熱気と爆音を響かせる。
離れていたので爆発の被害は無いが爆破箇所が炎に包まれており、爆発を生き残った者を燃やし尽くしていく。
「す、凄まじい威力じゃのう。」
「こんな中で生きれるゴブリンがいるのです?」
ジルの使った爆裂魔法に驚きながら二人が言う。
先日で言えばゴブリンニンジャだけならば生き残っていてもおかしくはなさそうだ。
それくらい奴は強くしぶとい魔物だった。
「姿は無いな。」
爆煙が晴れると先程までそこにいたゴブリン達の姿は無かった。
代わりに床にドロップアイテムが散らばっている。
「全部倒れてるみたいなのです。」
「何のゴブリンかも分からなかったのう。」
皆でドロップアイテムの回収に向かうがそれなりに大きな魔石もあったので、高ランクのゴブリンもいた様だ。
しかしジルの爆裂魔法に耐えられるゴブリンはいなかった
様でボス部屋の戦闘は一瞬で終わってしまった。
「これで16階層だな。以前は目的の魔物はここにいた。」
階段を降りて辺りを見回しながら言う。
前回は16階層に降りて直ぐにリビングアーマーに出会ったのだが、周辺に魔物の気配は無い。
「それではこの階層で探索じゃな?」
「一つ二つなら降りてもいるかもしれないけどな。」
ダンジョン内の魔物は階層を降りる毎に変化があるが、突然丸っきり変わったりとかはない。
なのでリビングアーマーが複数の階層に出現している可能性もある。
「前回は17階層以降にはいなかったのです?」
「この階層から先程までと同じく魔法で降ったから分からないのだ。」
「成る程なのです。」
前回はそれで28階層まで一気に降った。
さすがにそこまでいくとリビングアーマーは出現しないだろう。
「せっかくだし手分けでもするか。」
「影丸に乗りたいだけじゃろう?」
今もしっかりとジルは影丸の背中に乗っている。
身体が大きいので安定感も悪く無く、乗り心地が良い。
「それなら競争なのです。」
「ほう、面白い。ならば賞品も用意しなければな。」
そう言ってジルは異世界通販のスキルの画面を表示する。
「これなんてどうだ?」
「絶対食べたいのです!」
ジルが選んだ物にシキは凄い食い付きっぷりである。
「妾には食べ物と言う事しか分からんぞ?」
ナキナが内容を教えてほしそうに言う。
異世界通販のスキルは使用出来る者にしか画面が見えない様で、ジルとシキにしか見えないのだ。
「異世界の甘味だ。デラックスパフェと言うらしい。」
「美味しそうなのが沢山乗ってるのです!最高に最強なお菓子なのです!」
「それは妾も食べてみたいのう。」
ジル達と出会ってからナキナも甘味は大好物である。
中々高価で食べる機会の無い異世界の甘味に三人共やる気充分と言った様子であった。
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