元魔王様と討伐競争 4
異世界の甘味を賞品としてリビングアーマー狩り競争をする事になった。
普通であればこんなダンジョンの奥深くで行うには危険過ぎる行為だがジル達の実力があれば問題無い。
「どう言ったチーム分けにするのじゃ?」
「三チームに別れるのです。」
「「三チーム?」」
シキの言葉を聞いて二人が尋ね返す。
二人はてっきり自分達を筆頭に二チームに別れると思っていた。
戦力的に考えるとジルが頭一つ抜けて強いので、ナキナと影丸が組まなければバランスが悪くなるからだ。
「そうなるとシキと組むのは影丸か?」
「ウォン?」
三チームに別れるのであれば、ナキナと同等クラスの強さを持つ影丸がシキのチームに入るのがバランス的には良さそうに思える。
「ジル様が疲れてるみたいなので影丸はそっちで大丈夫なのです。代わりにタイプBを貸してほしいのです。」
シキの提案を聞いて納得した。
近接戦闘に特化したタイプBであればナキナと同等以上の成果は出せそうだ。
メイド業をしっかりと身に付けたメイドゴーレム達はジルの無限倉庫の中で眠っているので直ぐに出せる。
「成る程タイプBか、相手にとって不足は無いのじゃ。」
ジルが起動させたタイプBを見ながらナキナが言う。
模擬戦でナキナも戦った事はあるのでタイプBの実力はよく理解している。
自分の全力をぶつけられる相手であり、よき模擬戦相手となってくれている。
「シキの好意に甘えて我は影丸といかせてもらおう。ハンデとして魔法とスキルは使わないから、影丸も頼んだぞ?」
「ウォン!」
ジルの言葉に力強く吠えて影丸が頷く。
鎧の収納の為に無限倉庫だけは使う事になるが戦闘には影響しないスキルなので影丸にも大いに頑張ってもらいたい。
影丸との共闘は珍しいが指示にもしっかりと従ってくれるみたいなので問題は無いだろう。
「それでは妾はライム殿といこうかのう。同じ主人の護衛同士宜しく頼むのじゃ。」
ナキナの言葉に応える様にライムがプルプルと揺れる。
このコンビは前にジルと別行動をした際にラピッドラビットと言う中々厄介な魔物を狩ったのだが、良いコンビネーションを発揮していた。
同じシキの護衛として気が合うのかもしれない。
「ホッコはシキとタイプBと一緒なのです。」
「クォン!」
シキとホッコがタイプBの肩にそれぞれ乗る。
これで戦力的には中々バランスが良くなっただろう。
「マスター、シキ様の命令に従って魔物を狩ればいいのですね?」
「ああ、一応競争だからな。我が相手でも手加減はしない様にな。ホッコもだぞ。」
マスターであるジル至上主義のメイドゴーレムに釘を刺しておく。
ホッコはともかくタイプBはジルを一番にさせる為に手を抜きかねない。
今回は競争なのでそれをされてしまってはシキが可哀想だ。
「畏まりました。全力でお相手します。」
手加減しない事が望みならばタイプBはそれに従うのみだ。
競争中はシキを主人として行動してくれるだろう。
「宜しく頼むのです。」
「クォン!」
「お任せ下さい。」
シキの言葉にホッコとタイプBが頷く。
珍しい組み合わせだがそれぞれ違う役割りをこなせそうだ。
「では始めるとするか。リビングアーマーの出現階層が分からないので、降るとしても二つまでとする。」
ジルの言葉にシキとナキナが頷く。
あまり深く潜ってしまうと万が一の時に駆け付けるのも遅くなってしまうので、なるべく近くでやるのがいい。
「そして勝者には甘味と言ったが、チームメンバーも何かあった方がやる気が出るだろう。勝ったチームメンバーは望みがあれば叶えられる範囲で我が聞いてやる。」
ジルがそう言うと明らかに他の者達のやる気が上がった気がする。
何かしらお願いしたい事があるみたいだ。
「勝利条件はリビングアーマーからドロップする鎧の個数だ。最後に多く所持していたチームの勝ちとする。」
魔石もドロップするが今回に関しては外れ扱いだ。
しかしそれも売れば金になるので回収はしてもらいたい。
「沢山狩って沢山入れるのじゃ。」
ナキナの首には見慣れない鞄が掛けられている。
これは収納系のスキルである無限倉庫が使えないナキナの為にジルが渡した魔法道具の鞄だ。
収納出来る容量が大幅に増やされており、鎧の10個や20個は余裕で収納出来るだろう。
「他に何かあるか?」
「無いのです!絶対負けないのです!」
「いざ、尋常に勝負じゃ!」
「終了時間になったら我が知らせにいく。では開始だ!」
ジルの掛け声で三チームは一斉にその場を散っていった。
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