元魔王様と世界最強の従魔使い 3
待つ事数十分、先程のゴブリンと共に二人が戻ってくる。
「ジルさん、レギオンハートと会って入山の許可をもらってきました。」
「全員で入っても大丈夫だって。」
「そうか、では行こう。」
アサシンゴブリン先導の下、ジル達が山に入っていく。
「山に入るのに許可が必要じゃったのか?」
「現在このパンデモニウム島は実質レギオンハートの住処の様になっています。なので自身に敵対する者が奥へと進んでくれば、問答無用で攻撃対象とされるのです。」
「そ、それは恐ろしいのじゃ。」
元四天王が敵になると聞いてナキナが震えている。
レギオンハートの従魔が徒党を組んで襲い掛かってくるのは恐怖でしかない。
このアサシンゴブリンも道中の魔物を息をする様に倒しているので、従魔達の実力の高さがよく分かる。
「そうならない様に先んじて許可を取ってきたって訳ね。まあ、私達なら襲い来るレギオンハートの従魔とも戦えるとは思うけどね。」
強い事は強いが全く敵わない訳でも無い。
数にもよるがジル達であれば良い勝負になるだろう。
「無駄な戦いをしなくて済むならその方がいい。」
「だね。その辺りの魔物が可愛く見えるくらい強いからさ。」
ジルの言葉にテスラも頷く。
このパンデモニウム島にも凶悪な魔物が生息しているがレギオンハートの従魔達はそれを軽々と超えてくるので敵対は避けた方がいい。
「ホッコよりも強いの?」
「強い魔物も沢山いますよ。確かディバースフォクスも従魔にしていたと記憶しています。」
「尻尾も九本生えていたわね。」
「凄いの!」
ジルもレギオンハートのディバースフォクスは記憶の中にある。
尻尾の最大数である九本まで育ち切った最強のディバースフォクスを元魔王時代に既に従魔としていた。
「ウルフ種はどうなんじゃ?」
「当然多くのウルフ種を従魔にしているわよ。影丸も学ぶ事は多いかもね。」
「ウォン!」
自分と同じ強いウルフ種がいると聞いて影丸も興味津々だ。
自分が目指すべき上位種もいるかもしれない。
「お前達が大将の客人かえ?」
道を塞ぐ様に現れたのはおどろおどろしい杖を持ちローブを羽織った人型の魔物だった。
その魔物がジル達に話し掛けてきたのだ。
「魔物っ!?」
「ナキナさん、安心して下さい。レギオンハートの従魔ですよ。」
破魔の小太刀を構えて攻撃に備えようとしたナキナにレイアが言う。
アサシンゴブリン同様レギオンハートの従魔らしい。
「こ、この魔物も従魔じゃと!?」
「ふぇっふぇっ、ここで客人の移送をしているリッチさ。久しぶりの客だったもんで嬉しくてね。つい話し掛けてしまったのさ。」
ジル達を観察する様にリッチの暗い瞳が揺れ動く。
「雑談はそこまでとして運んでくれない?レギオンハートも待っているでしょう?」
「確かに大将を待たせるのも悪いかね。さっさと送っちまおうか。さあ、この円の中へ。」
リッチが足元に描いた魔法陣を杖で示す。
全員が円の中に移動するとリッチが魔力を流し込む。
「大将の下へご案内だよ。」
魔法陣が起動して光りを放つと目の前の景色が変化する。
山に登る道中の森の中にいたのにそれを見下ろす高い位置に移動していた。
「ここは、山の頂上?」
「一瞬にして到着したと言う事かのう?」
「客を長々と歩かせる訳にもいかんでな。」
どうやらレギオンハートと会う事が許された者だけは、こうしてリッチによる送迎が行われているらしい。
「よく来たな客人達よ。」
ジル達に声を掛けてきたのは獅子の顔を持つ大柄の男性だ。
その顔を見てジルはとても懐かしい気持ちとなる。
「知ってると思うが一応名乗っておこう。俺はレギオンハート、今はこの島で従魔達と暮らしている。」
この獅子の魔族が豪将と呼ばれた元四天王のレギオンハートだ。
元魔王ジークルード・フィーデンだった頃に仕えてくれていた時と見た目が同じなので直ぐに分かった。
「よ、宜しくなのじゃ。妾はナキナ、今回貴殿に用があるのは妾じゃ。」
レギオンハートを前に緊張した様子でナキナが自己紹介をしている。
「レイアとテスラから先に話しは聞いている。従魔について俺に聞きたい事があるんだろ?」
「ウォン。」
「ナキナの従魔か?」
「そうじゃ。」
「シャドウウルフか。悪くないな。」
レギオンハートが影丸を撫でながら言う。
影丸はとても気持ちよさそうに撫でられている。
さすがに魔物の扱いに慣れている。
「影丸と言う名前じゃ。用件についてじゃが。」
「言わなくてもいい、影丸から直接聞こう。」
「ウォン?」
レギオンハートの言葉に影丸が首を傾げる。
自分と会話が出来るのかとでも言いたげだ。
「影丸、お前は何を望む?俺から何を得たい?」
「ウォンウォン。」
「成る程、強くなりたいのか。その為に俺を訪ねてきたと。」
レギオンハートが尋ねて影丸の言葉を聞き取る。
それを何度か行って会話をしている。
「影丸と会話している様に見えるのじゃが。」
「そう言うスキル持ちだろ?珍しいが持っている者は持っている。」
一応ジルは初めて会う体なのでそう答えておく。
昔から従魔と会話しているのは見掛けていたので、レギオンハートがそう言うスキルを所持しているのは知っていた。
「そうじゃったか。中々に珍しい光景で驚いたのじゃ。」
「スキルも無しに魔物と会話しているナキナの方が異常なのだがな。」
自覚の無いナキナに呆れた様な視線を向けるジルだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます