元魔王様と天使族の襲来 6

 突然天使の強襲を受けたジルはライエルとの戦闘に備えて銀月の柄に手を添える。


「ん?説明を聞いていなかったのかな?僕と戦うつもりなのかい?」


 自分の正体を知ってもジルが交戦的な事にライエルは少し驚く。

人族で天使族に対抗出来る力を持つ者は少ない。

なので歯向かわれる経験があまり無いのだ。


「相手が誰であろうと攻撃してきたのだから反撃しても文句は無いだろう?」


 相手が誰であっても関係無い。

殺意を向けて攻撃されればジルはやり返す。


「へえ~、命知らずな人族だね。僕に逆らおうだなんて。」


「そもそも何故突然攻撃してきた?そんな事をされる覚えは無いんだがな?」


 ジル以外の者達はライエルについて知っている様なので他と因縁があるのか、前に倒した上級天使の敵討ちかのどちらかしか思い付かない。


「惚けたって無駄だよ。君達からプンプン臭ってきてるんだからね、魔族臭がさ。」


「魔族臭だと?」


 ライエルの発言を聞いて納得する。

どうやら人化のスキルを使っている二人が魔族だと気付かれている様だ。


「そうだよ、僕は特に魔族臭には敏感でね。離れていても直ぐに気付けたよ。魔族又は魔族と関わりのある者は僕の粛清対象って訳、理解出来たかい?」


「魔族なんて知らないと言っても聞かないのだろう?」


「人族が数人死のうと僕には関係無いからね。疑わしきは罪って事さ!」


 ライエルの聖痕に魔力が集まる。

すると周囲に先程の光剣が無数に現れ、切先がジル達の方を向いている。


「光剣射出!」


「断絶結界!」


 放たれる大量の光剣を結界を展開して防ぐ。

先程同様かなりの攻撃力があり、結界にヒビが入っていく。


「中々頑丈じゃないか。お前達も続け!そいつらを殺せ!」


 ライエルが他の天使達に命令するとジル達目掛けて突っ込んでくる。

光剣により結界はボロボロなので簡単に突破されてしまうだろう。


「ホッコ、お前はナキナや影丸といてくれ。」


「クォン!」


 ホッコが肩から降りて素早く移動する。

今の自分では足手纏いになる事を理解しているのだ。


「雑魚は任せたぞ。」


 ジルは結界を自ら解除して天使達の横を駆け抜け銀月を振るう。


「おっと、危ない危ない。」


 聖痕の力によって生み出した光剣を手に持って、銀月の刃を受け止める。


「一番厄介そうなお前から排除するとしよう。」


「ふははっ、人族が序列8位の僕に勝てると思っているのかい?面白い事を言ってくれるね。」


 二人が至近距離で高速の斬り合いを始める。

あまりの速さに武器が残像を残しており、火花や衝撃音が辺りに広がる。


「早々に諦めなよ、種族的スペックが違い過ぎるからさ。光剣よ貫け!」


 先程までとは違って一つだけ現れた光剣が物凄い速さで射出される。

速度特化の攻撃の様だ。


「ふっ!」


 魔装による身体強化で反応しつつ、銀月で斬り裂く。


「僕の光剣を叩き斬るなんてやるね。ただの人族では無さそうだ。でも僕は光剣の聖痕を持つライエルだから、どれだけ斬れても無駄なんだけどね。」


 ライエルが上空に羽ばたいてジルと距離を取る。

そして地上を照らす様に眩い光りが頭上を埋め尽くす。

これまでとは比較にならない量の光剣が空中に浮いている。


「君の仲間共々葬ってあげるよ。」


「だがこのまま打てばお前の同胞も巻き込まれるぞ?」


「ふははっ、脅しのつもりかい?そんな事では僕の攻撃は止まらないよ。光剣よ蹂躙しろ!」


 ライエルは躊躇無く光剣の雨を降らせる。

本当に仲間の生死は気にしていない様だ。


「そいつらは僕の駒で代わりのきく存在だ。敵を葬る為なら喜んでその命を差し出してあげるよ。」


「気に食わない戦い方だ。」


 ジルは自分以外の仲間達を守る様に断絶結界を複数展開する。

その結界の中には天使達も入っているが、そこまで気にしている余裕は無い。

そして自分に降り注ぐ光剣は銀月で弾き落としていく。


「隙ありだね。」


 いつの間にかジルの背後に回り込んでいたライエルによって、背中が光剣で斬られてしまう。

斬られた箇所から血が空中に舞う。


「あははっ、味方を犠牲にする大胆な戦い方に動揺して気が散っちゃったかな?」


「鮮血魔法、ブラッドレイ!」


「っ!?」


 ジルは背中を斬られながら魔法を発動する。

飛び散った血が幾つかの球状になり、ライエルを貫く血のレーザーと化す。

咄嗟に反応されて回避行動を取られたので浅くではあるが、身体の複数箇所を負傷させる事が出来た。


「わざと斬られて反撃する大胆な戦い方に動揺して気が散ったか?」


「君面白いね、確実に僕が殺し尽くしてあげるよ。」


 お返しとばかりの煽り言葉にライエルは笑みを浮かべているがその笑顔の奥からは殺意しか感じられなかった。

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