78章

元魔王様と浮島の超高難易度ダンジョン 1

 天使族の襲撃から暫く経って、ジル達は浮島で平和な時間を過ごしていた。

タイプAも住民として馴染んできて、主に美咲のダンジョンポイント稼ぎを魔の森で手伝ってくれている。


「ジルさん、ついに完成しました!」


「ん?完成したって何がだ?」


 美咲がテンション高めで言ってきたので首を傾げながら尋ね返す。


「何って私のダンジョンですよ!」


「もう完成したのか。」


「俺が手伝ったんだから当たり前だろ?」


 タイプAが腕を組みながら頷いている。

毎日美咲のダンジョンの為にダンジョンポイント稼ぎをしていたのでダンジョン作りもかなり捗った様だ。

そしてついに美咲は自分のダンジョンを完成させた。


「タイプAさんには感謝しています。こちらいつものお礼です。」


 美咲が頭を下げながら差し出す。

ダンジョンポイントで交換した異世界の食べ物だ。


「おう、美咲は本当に分かってるな!」


「相変わらずハマってるな。」


 タイプAが受け取って美味しそうに食べているのは綿飴だ。

美咲が色々とお礼にくれた中で綿飴が一番気に入ったらしい。

それからずっとお礼は綿飴を貰っている。


「上手いんだからいいだろう別に?」


「否定はしない。甘味は生きていく為に必要な物だからな。」


 ジルも美味しい異世界の甘味は大好物だ。

美咲がダンジョンポイントで交換してくれる食べ物はどれも美味しいので大満足である。


「私としては綿飴でこんなに働いてもらって申し訳無いんですけどね。」


「俺が納得してるんだから良いんだよ。」


 報酬が安いと美咲は気にしている様だが、そもそも異世界の食べ物と言うだけで破格の報酬ではある。

タイプAも納得しているので問題無いだろう。


「だがタイプA、魔物を狩るのに武器を使っていたら肝心の魔力がどんどん消費されていくぞ?」


 ダンジョンポイント稼ぎは美咲の為にも必要な事でジルも定期的に手伝っているが、タイプAの武器は魔王の魔力が必要だ。

現在のジルでは補充が難しいので使い過ぎはいざと言う時に困る事になる。


「その点は心配いらないぞ。美咲から貰った武器をドメスとか言う人族にシキから頼んでもらって改造したからな。マスターへのツケで。」


 最近王都からセダンに移住してきたとドメスから報告があった。

店も構えて商売の準備も整ったらしいので早速シキから依頼したらしい。


「おい、初耳だぞ。」


「見てみろよ、かっこいいだろ?」


 ジルの文句に興味を示さずにタイプAが取り出したのは異世界の銃だ。

美咲によりダンジョンポイントで交換してもらったのをドメスの混成のスキルによって昇華させた。


「はぁ、後でドメスのところに寄るか。値段はそれ程掛からない契約だが礼はしておくとしよう。だがさすがに良い仕事をしている様だな。」


 ジルが万能鑑定を使用して視る。

性能も悪くなさそうだ。


「確か魔力を放出する銃なんですよね?」


「おう、俺が持っているのと同じ様なのがいいって頼んでもらったからな。見た目は美咲にもらったまんまだが中身は別物だ。」


「魔石から魔力を抽出して放つ銃か。これなら魔石があればずっと使えるな。」


 弾丸の代わりに魔石をセットする場所がある。

銃にセットした魔石から魔力を吸収して弾丸の代わりにしている様だ。


「そう言う事だ。低ランクの魔石だと出力が弱いのが残念だが、相手が高ランクの魔物じゃなけりゃ余裕で倒せるからな。てか話しが逸れてるぞ、俺の銃じゃなくてダンジョンだろ?」


「そうでした、完成したダンジョンを是非ジルさんにも体験してもらいたいと思いまして。」


「ほう、実際に挑戦者となってほしいと言う事か。」


 ダンジョンを作ったのであれば実際に体験してもらいたい。

ダンジョンマスターからすると当然の意見だ。


「一般開放する前に意見を聞いておきたいんです。」


「ん?一般開放?」


「浮島とダンジョンとで繋がっている通路は浮島からの完全一方通行として改造します。後にダンジョンの入り口を地上にも設けて私のダンジョンを色んな人に体験してもらおうかと。」


「客がこないダンジョンなんてダンジョンマスターが暇だからな。」


 階層を移動する転移魔法陣を使った入り口を地上にも作ってダンジョンに人を招きたいと美咲が言う。

ダンジョンを訪れても浮島へは行けない様にするので純粋にダンジョンだけを体験してもらえる。


「理由は分かるがいいのか?ダンジョンコアは美咲の命でもあるんだぞ?」


 ダンジョンの心臓部であるダンジョンコアとダンジョンを守護するダンジョンマスターの命は共同だ。

ダンジョンコアが破壊されればダンジョンマスターである美咲も命を落とす事になる。


「一応タイプAさんには現代で攻略出来るのはジルさんくらいだとお墨付きをもらっています。なので一度試してもらいたいと思いまして。それにダンジョンマスターになったからでしょうか、誰も挑戦者がいないのは悲しくて我慢出来無いんです。」


 タイプAの見立てではダンジョンを踏破出来る者なんてジルくらいだろうとの事だ。

それだけ難易度の高いダンジョンになっているらしい。


 そして美咲はダンジョンマスターになった事で価値観が変わっているらしい。

自分の命を脅かす挑戦者だが、ダンジョンに招き入れたいと思ってしまうくらいにはダンジョンマスターとして染まってしまった様だ。


「そう言う事なら了解だ。ではこの後早速試してみるか。」


 美咲のダンジョンには頻繁に入っているが、挑むのは初めてなのでジルは楽しみであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る