元魔王様とフォルトゥナとの再会 6

 オークション終了後、テスラと分かれたジル達は地図に示された建物へと向かう。

予想通りに地図の場所にはレギオンハートの従魔が住んでいる倉庫があった。


「主人から話しは聞いています。ジル様達がテルイゾラを訪れた際は持っている情報を渡してほしいと。」


 当然の様に意思疎通が可能な魔物がそこにはいた。

本来そう言った魔物はかなり数が少ないのだが、レギオンハートの従魔達は高ランクの上位種や希少個体の魔物ばかりなのだ。


「ならば早速聞かせてもらいたい。欲しいのはフォルトゥナの情報だ。それと持っていればでいいが邪神教も頼む。」


「申し訳ありません、邪神教に付いての情報は無いです。関連するので言えば定期的にオークションに強化薬や呪いの短剣が出品される事くらいです。」


「誰かが出品していると言う事か。」


「あの魔物使いの女性ではないですか?」


 テルイゾラの入行許可証のゴールドカードを持っていたので取り引きをかなりしている筈だ。

それが強化薬や呪いの短剣である可能性は高い。


「あり得るな。出品者に関しては知っているか?」


「そちらも情報はありません。オークションへの出品者は守秘義務があって開示される事はありませんから。」


「ふむ、邪神教の方は難しそうだな。」


 オークションを主催するテルイゾラ側に無理矢理聞き出す事も出来無くはないが面倒事に発展する可能性もある。

こちらは主目的では無いので深追いせずともよい。


「ですがフォルトゥナ様の件であればお力になれるかと。」


「そうだな、邪神教よりはフォルトゥナだ。先程オークションでそれらしき者も見掛けたのだ。」


 確証は得られなかったがジルはフォルトゥナではないかと思っている。

なので見失わない様にテスラに尾行してもらっている。


「ジル様がそう感じられたのであれば本人だと思います。フォルトゥナ様は魔法道具のオークションに度々参加されていますから。」


 従魔曰くその可能性は高いと言う。

魔法道具関連のオークションに出る事は頻繁にあるらしい。

何らかの魔法道具を欲しているのだろう。


「現在のフォルトゥナの立場はどうなっているのですか?」


 砂漠船で情報を得たが奴隷オークションが近い。

フォルトゥナが奴隷になっているのであれば急いで接触する必要が出てくる。

と言っても悠長にオークションに参加しているくらいなのでその可能性は低そうだ。


「半分奴隷と言ったところでしょうか。」


「半分奴隷?」


「奴隷の首輪や奴隷契約はされていません。ですが自由も少ないと言ったところですね。」


 フォルトゥナは奴隷契約されていない。

これなら奴隷オークションに出品される事も無いだろう。


「自由が少ないと言うと他に何かで縛られていると言う事か?」


「他の魔法や魔法道具でしょうか?」


 奴隷契約をしなくても他人を意のままに操る術は幾らでもある。


「いえ、単純に人質ですね。フォルトゥナ様は人質を取られているので自由に動けず、脅されて用心棒として働かされています。」


 ジルやレイアの言葉に首を振って従魔が答える。

それなりに厄介な状況にはなっているらしい。


「人質はどなたですか?」


「お二方は知らないと思います。このテルイゾラのオークションで購入された奴隷の女性です。」


「フォルトゥナは奴隷を購入していたのか。」


「奴隷であれば見限られる事はありませんからね。」


 フォルトゥナはインキュバス種と言うのもあって女性が大好きである。

しかし今まで数多くの女性に好意を寄せてきたが、女好きな性格や臆病で逃げ癖のある性格に愛想を尽かされて長続きした事が無かった。


「その女性をとある組織に誘拐されたらしいのです。同じ様な立場の者もそれなりにいます。」


 人質を取られて無理矢理働かされているのはフォルトゥナだけでは無い。

テルイゾラを訪れた多くの者が同じ様な境遇にさせられていると言う。


「そんな組織がテルイゾラにいるのか。」


「中立都市テルイゾラでその様な行為をして無事でいられるのですか?」


 犯罪行為はテルイゾラから敵視されている。

入行者の管理もかなり力を入れているくらいだ。

それに相手が国であっても容赦しないと言う宣言をテルイゾラはしている。

そんな場所で犯罪行為をすれば命の保障も無さそうである。


「それが問題無いのです。その組織がテルイゾラから何らかの罰を受ける事は無いでしょう。何せテルイゾラを動かしている中枢の者がさせている事の様ですから。」


「中々闇の深い話しになってきたな。」


 フォルトゥナは随分と厄介な事に巻き込まれている様であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る