元魔王様とフォルトゥナとの再会 7

 レギオンハートの従魔の説明が続く。


「中立都市テルイゾラは外の国々とすら戦える戦力を保有していると思われていますが実際はその様な戦力は持っていません。」


「理解しました。人質を使って外の者達を戦力としているのですね?」


「はい、人質を取られて強者達がテルイゾラ防衛の為に半奴隷として使われているのが現状です。」


 外の国々と戦える戦力と言うのは人質を使って無理矢理働かされている実力者達の事だった。

テルイゾラはオークション島として有名なのでそう言った者は次々に訪れてくる為、人材確保に困らないのだろう。


「中には逆らう者も当然いるだろう?」


「かなりの数の強者を手中に収めている様ですから、一人二人逆らっても一瞬で他の者に制圧されてしまうのです。フォルトゥナ様はそこまで反抗的では無いので見逃されていますが、奴隷契約されてしまっている者も大勢いますから。」


 協力的では無い者は奴隷にして従えていると言う。

フォルトゥナは奴隷にされない為に従順なフリをしているのかもしれない。


「奴隷契約か。砂漠船で会った奴隷商人も黒い可能性はあるな。」


「そうですね、接触は控えた方が宜しいかと。」


「奴隷商人に関しては確実な黒が分かっていません。普通に何も知らず奴隷の契約をする為だけに呼ばれている可能性もありますし、奴隷商人の中にも脅されている者がいるかもしれません。」


「成る程な。」


 テルイゾラがそんな事になっていると知らない奴隷商人もいるだろう。

それでも接触は最小限にした方が良さそうだ。


「随分と厄介な事になっていますね。」


「フォルトゥナは面倒事に巻き込まれやすいからな。」


 普段なら持ち前の逃げ足の速さで何とかするのだが、さすがに人質を見捨てる様な事はしなかった様だ。

奴隷の子が女性と言うのも大きく関係していそうだ。


「幸いなのは奴隷契約されていない事ですね。人質の身を心配されてフォルトゥナ様は協力的に振る舞っている様ですから。」


「それならば不安の元を絶ってやれば解決しそうだな。」


 組織を潰して人質を解放すれば丸く収まるだろう。

フォルトゥナの為ならばテルイゾラと敵対する事になっても構わない。


「そう言えばフォルトゥナの周囲には誰かいました。ジル様の万能鑑定に勘付くとは何者なのでしょう?」


「おそらくフォルトゥナ様と同じ立場の方々でしょう。何名かでチームを組んでテルイゾラの防衛任務を任されています。感知に優れた種族やスキル持ちも配備されていますから。」


 万能鑑定を使用した瞬間に気付かれたくらいなので、かなり感知に長けた者と行動しているのだろう。


「それなら協力を得る為に接触するのもありか。」


 敵では無い事を分かってもらえれば、あちらも攻撃的になる事は無いだろう。


「いえ、それに関しても気を付けてほしい事があります。そのチームには少なくとも一人は裏の者が配備されている可能性があります。」


「裏切りの監視ですか。厄介ですね。」


 人質を取られている者達だけならば接触して話し合いで協力を取り付ける事も出来た。

しかしテルイゾラ側の者がいるのならそれも行えない。


「我らが接触してもテルイゾラ側に情報が漏れると面倒な事になりそうだな。」


「そうなります。なので行動される際は慎重にお願いします。」


「分かった、色々と助かったぞ。」


 テスラがレギオンハートの地図に付いて思い出してくれてよかった。

フォルトゥナに関して色々と有益な情報を得る事が出来た。


「お役に立てたのであれば幸いです。それでは自分はこれにて。」


「どこかに行くのか?」


「レギオンハート様より、ジル様達がテルイゾラを訪れるまで情報収集しておいてほしいとの事でしたので。これにて任務完了と報告を入れる為にパンデモニウムに戻る予定です。」


 ジルがフォルトゥナを気に掛けていたのでレギオンハートが気を使ってくれたのだろう。


「そうだったか、長い間苦労を掛けたな。」


「いえいえ、私は諜報活動を好んでいますから。今度は天使族か魔族の下に潜入する事になるでしょう。最近は両種族が活発ですからね。」


 少し前には両種族によるそれなりに大きな戦争があった。

また近い内に起こる可能性もある。


「天使が活発な原因には我も関わっていそうだな。」


 大勢のナンバーズに攻め込まれたのは記憶に新しい。

メイドゴーレム達のおかげで被害を出さずに済んだが、確実に天使族に目を付けられただろう。


「テルイゾラにいたので詳しくは知りませんが何かあった様ですね。一応知っている情報では天使達が拠点とする国にナンバーズの招集が掛かったとの事ですよ。もし関わる事があればお気を付け下さい。」


「ほう、それは知らなかった。また会う事があれば有益な情報を渡してくれ。」


「お任せ下さい、それでは失礼します。」


 レギオンハートの従魔が一礼してその場から煙の様に消えた。

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