元魔王様とルルネットの可能性 6
ジルを圧倒的な力で叩き潰そうとするタイプBのハンマーを、全身を魔装して身体能力を高めて大きく後退して回避する。
直後ジルのいた場所にハンマーが振り下ろされて轟音が鳴り、地面が大きく陥没してヒビが広がり土煙が大きく舞う。
「おわぁ!?」
タイプBの本気の一撃に驚いてルルネットが悲鳴を上げている。
そしてその威力にビビりながらも邪魔にならない様に急いで離れていく。
「最初から飛ばしてくれるな。」
「まだまだです、『換装!』」
地面に大きくめり込んでいるハンマーが消えて、新しく回転式浮遊刃が取り出される。
そして空中を滑る様に複数の刃が向かってくる。
「我ながら恐ろしい武器を作ったものだ。」
小さく呟きながら短剣を魔装する。
そして向かってくる回転式浮遊刃を次々と弾き落としていく。
一つ一つが凶悪な武器ではあるが、冷静に対処すれば攻撃を受ける事無く対処可能だ。
「換装!」
タイプBの言葉が背後から聞こえると同時に弾き落としていた回転式浮遊刃が全て無くなる。
ジルの隙を見てタイプBが素早く背後に回り込んでいたのだ。
「さすがに追えているけどな!」
ジルは振り向きながら魔装した短剣を突き出す。
タイプBが振るってきた大鎌と激突して火花を散らす。
「本来のマスターの魔装であれば簡単に押し返されていたかもしれませんね。」
ジルはルルネットの力を体現しているので本来の力を十全に発揮する訳にはいかない。
魔装の練度もルルネットが成長するであろうレベルに調節している。
「今の力では無理と言う事か?」
「それは使い手次第でしょう。ですからまだまだ楽しませて頂きます。」
魔王時代は実力差があり過ぎて対等な勝負なんて出来たものでは無かった。
なので今武器を交えられている事にタイプBは喜びを感じていた。
「ふっ。」
大鎌を振り抜いてジルを無理矢理吹き飛ばす。
「グリムセバー!」
大鎌を魔装してジルに向けて横薙ぎに一閃する。
正に死神を思わせる様な凶悪な斬撃が大鎌から放たれる。
全てを斬り裂くかの様に感じられる斬撃を前にジルが紅色の短剣を上段に構える。
「フレイムエンチャント!」
紅色の短剣が更に赤みを増して火の粉を振り撒く。
現在のルルネットでも習得している上級火魔法による装備の攻撃力強化だ。
「短剣術・炎孤!」
魔法で強化された紅色の短剣を斬撃目掛けて振り下ろした。
空中に綺麗な赤い軌跡を残して、タイプBの放った斬撃を真っ二つに斬り裂く。
そしてそのままタイプBとの距離を一気に詰める。
「短剣術・炎昇!」
下段に構えた紅色の短剣で今度は斬り上げる様に攻撃する。
「『換装!』」
一瞬にして大鎌が大楯に変わりタイプBを守る壁となる。
ジルの手には硬い物を斬り付けた感覚が残るだけで本体には一切攻撃が届いていない。
タイプBが持つ装備の中で唯一の防御手段であり、堅牢な鉄壁の装備でもある。
魔法によって強化された攻撃を受けても傷一つ付いていない。
魔王時代の自分はとんでもない物を作ったものである。
「マスター、暫し斬り合いといきましょう。『換装!』」
タイプBは大楯を仕舞って双剣を取り出す。
同じ戦闘スタイルとなって魔装した武器同士を激しくぶつけ合う高速の斬り合いを開始する。
「す、すごい。」
見ているルルネットは思わず言葉が口から漏れる。
先程までの攻防も凄かったが、今見せられている二人の剣撃も凄まじい。
双剣スタイルでの戦闘は模擬戦で何度かタイプBとやっているが、ここまで激しい斬り合いは出来ていない。
なので相当手加減されていた事が分かる。
しかしそのタイプBと互角に戦っているのはルルネットの未来の力の体現だ。
ジルがこの模擬戦で行っている事は全て、ルルネットのこれから先の訓練次第で習得出来るものばかりである。
まだ自分がこんな凄い事を出来る様になれるのか分からないが、出来る様になりたいと言う気持ちはどんどん湧き上がってきている。
「のめり込んで見ているな。」
ジルがチラりとルルネットの様子を確認して言う。
寂しい気持ちは消え失せ、目の前の模擬戦に全ての興味を向けている。
「これ程の事を出来る様になる可能性があると分かれば、ルルネット様が興味を持つのも当然でしょう。ですがマスター、まだまだ終わらせませんよ。」
「望むところだ。」
二人の剣撃は更に力強さと速さを増していく。
ルルネットであっても目で追い掛けるのが精一杯の次元だろう。
「さすがにキツイな。」
ジル本来の力であればタイプBの全力にも難無く付いていけるのだが、ルルネットの力ではそろそろ限界だ。
「趣向を変えるとするか。超級火魔法、インシネレート!」
ジルは激しい撃ち合いの中で不利を察して、詠唱破棄した超級火魔法を使用した。
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