元魔王様と風の姫騎士との再会 7
目的は同じなので頼もしい助っ人を得たとでも思っているのだろう。
「それにしても随分と苦戦した様だな。」
ジルがブリジットを見て言う。
ブリジットとは直接模擬戦をしたので実力が高いのは分かっている。
二つ名まである様だし冒険者のランクで測っても相当な高ランクだろう。
そんなブリジットに目立つ怪我は無いが着ている鎧が凹んでいたり若干気怠そうな様子であった。
「お恥ずかしながら返り討ちに合いました。」
「あれ程の実力を持っているのにか?」
盗賊が強いとは聞いていたがブリジットが苦戦する程とは思えない。
先程の盗賊くらいであれば一人でも無双出来る筈だ。
「言い訳になってしまいますが、盗賊達の引き連れている奴隷が厄介でして。」
「ブリジットに並ぶ強者でもいたのか?」
厄介なのは盗賊では無く奴隷と聞いて少し納得する。
奴隷には様々な境遇の者がなるので戦闘に特化している様な者もいる。
ブリジット並みの強さとなると珍しいがいない事もないだろう。
「一対一ならば問題無いのですが、後方支援に徹していたエルフが厄介でした。魔法に長けた種族であり、エルフの使う闇魔法によって私は本来の力を出せませんでした。」
闇魔法と言うと相手に対してデバフ効果を掛ける事がメインの魔法である。
盗賊の後ろに隠れてエルフが闇魔法でサポートとは中々に連携してくる盗賊らしい。
ブリジットが本来の力を出せず負けたのも納得だ。
「ギルドでもCランク冒険者が苦戦したと聞いたな。それとトレンフルのギルドで対処するとも聞いていたが?」
ギルドとなれば盗賊退治には冒険者がくる筈だ。
しかし周りには騎士ばかりでジル達以外の冒険者は見当たらない。
「そうですね。領主であるお母様がギルドに依頼を出して高ランク冒険者を向かわせました。しかし予想外の強さに返り討ち、代わりに我々騎士団が赴いたのですが結果は同じでした。」
どうやら冒険者はとっくに返り討ちにされていたらしい。
ブリジットで苦戦するのであれば高ランク冒険者が敵わないのも無理もない。
そして今度は実力も高く人数も多い騎士団が派遣されたと言う訳だ。
それでも返り討ちにされるとは闇魔法の恐ろしさを物語っている。
ブリジット以外の騎士達は怪我も酷い。
シュミットが行商用の荷物からポーションを取り出して渡している。
こんな時でも商売は欠かさない。
「成る程な、情報提供感謝する。」
そう言ってジルは馬車に戻る。
盗賊が強かったと言う情報しか聞けなかったが特に問題は無い。
やる事は変わらないのだ。
「ま、待って下さい。まさか行くのですか?」
「ああ、この子に知り合いを助けてほしいと頼まれているからな。」
獣人の男の子の頭をポンポンとしながら言う。
男の子はジルの事をヒーローを見る様な目で見ている。
冒険者や騎士が返り討ちにあっても構わず挑もうとする姿は格好良く見えるのだろう。
「ジルさんが強いのは分かっています。ですがあの盗賊達の連携は凄まじいですよ?」
奴隷を上手く利用して高ランクの冒険者だけで無く、ブリジットの率いる騎士団まで退けた。
そこら辺にいる盗賊とはレベルが違うのは明らかだ。
「我らならどうにでもなるだろう。安心して休んでいるといい。」
それでも問題無いとジルは考えている。
ブリジット級の前衛を任せられるナキナと影丸、更に前衛中衛後衛全てをこなせるジルがいる。
強いと言っても盗賊に負ける気はしない。
厄介なエルフがいようとナキナと影丸が頑張っている間に無力化すれば直ぐに終わるだろう。
それに制限無しで戦えるなら自分だけでも余裕であり、ナキナや影丸は過剰戦力とも言えるくらいだ。
もし予想外に盗賊達が強くエルフの無力化が上手くいかなかったとしても、その時はジルも闇魔法を使えばいい。
同じ条件下であればAランク以上のジル達が負ける筈は無い。
「それでしたら私だけでも連れていっていただけませんか?トレンフルの仕事を任せきりにするのも気が引けますし、足手纏いにもなりませんから。」
そう言ってブリジットが願い出てくる。
他にまともに動けそうな騎士は少なく、万が一盗賊や魔物が襲ってきた時の事を考えると戦力は多少残していかなければならない。
なので連れていけるのはブリジットくらいだ。
「いいだろう。シュミットは騎士団と共にここで待っているか?」
「ほな手当てでもして待っとるわ。盗賊退治頼むで!」
護衛対象なので危険な場所には万が一を考えて近付かない方がいいだろう。
「任せておけ。シキとライムも留守番だ、何かあったら知らせてくれ。」
「了解なのです!」
ジル達はブリジットを加えて盗賊退治を続行する。
ここからは馬車だと目立つので徒歩で向かう事にした。
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