元魔王様と災厄の到来 3
エルミネルから救援要請の話しを聞いたジルは前線へ走る。
向かうに連れて視界に入る魔物の量も増えていくが、冒険者達が頑張って対処している。
「これは確かに多いな。」
前線の魔の森近郊に辿り着くとエルミネルの言っていた事が直ぐに分かった。
辺り一体を埋め尽くす程のゴブリンの大群と冒険者達が戦っていた。
高ランクの冒険者故に苦戦している者は特にいないが、その物量に押されて持ち場を離れられず拘束されている。
簡単に倒せても次から次へと湧いてくるのでキリが無い。
「魔法使いもいるにはいるが、魔力を簡単に使いたくは無いだろうしな。」
威力の高い魔法を使用するとなれば当然魔力も大量に消費する事になる。
スタンピードは始まったばかりであり、魔法使いの生命線とも言える魔力はなるべく温存したい。
「つまり魔力量の多い我の出番と言う訳だ。超級火魔法、インシネレート!」
斜線上に味方がいない事を確認してから火魔法を放つ。
ジルの手から噴火を連想させる程に火が次々と溢れ出してゴブリンの大群に向かっていく。
業火は全てを燃やし尽くすかの如く、凄まじい熱気を撒き散らしながら進み、魔法が通った場所には魔法に対する耐性の高い魔石以外何も残っていなかった。
多少のランクの違いはあれど高ランクでも無いゴブリン種が耐えられる程、ジルの魔法は優しくない。
「もう何発かいっておくか。」
「ジルー!」
ゴブリンの大群の一角を燃やし尽くしたと言ってもまだまだ残っているので続けて魔法を放とうとしたら、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。
視線を向けるとこちらに向かって走ってくるアレンの姿が見えた。
「よお、援軍感謝するぜ。」
10秒程でジルの下に辿り着いたアレンが言う。
アレンは大きな武器を持っているのと火力が高いと言う理由で前線の戦闘員だ。
既に大量の魔物を葬っている様だが小さな擦り傷がある程度でまだまだ戦えそうだ。
「クォオ。」
アレンを見てホッコが神聖魔法を使用する。
魔法の効果で擦り傷が回復して治った。
「お、助かるぜ。」
「クォン!」
「それで何か用があったんじゃないのか?」
「ああ、いくらゴブリン共をやってもキリがねえ。おそらく召喚魔法だ。」
そう言ってアレンが魔の森を指差す。
確かに今も魔の森からゴブリンが次々と溢れてきており、ジルが燃やし尽くした場所にゴブリンが補充されていっている。
「森の中に召喚魔法を使っている奴がいるって事か?」
「前線の面子の意見ではな。だが無理矢理押し入ろうにも数が多くてな。雑魚と言ってもこんだけいると強行突破は難しい。」
簡単に倒せはするがこれだけの大群の中を突き進めば無事では済まなそうだ。
「我が魔法で道を切り開きながら進んで原因を排除してやろうか?」
「そうしてもらえると助かる。だが奥には高ランクのゴブリン種も確認してるが問題無いか?俺や他の冒険者も付き添えるぞ?」
高ランクのゴブリン種となると統率個体の可能性もある。
統率個体は周囲の同じ種の力を高める効果があるので、奥に進むに連れて厄介になるかもしれない。
「我にはホッコがいるから問題無い。アレンは他の冒険者を手伝ってやってくれ。」
「分かった、召喚魔法の件は頼んだぞ。」
そう言い残して二つの斧を両手に構えてゴブリンの群れに突っ込んでいった。
「ホッコ、アイスウォールの準備だけしておいてくれ。」
「クォン。」
ホッコが了承する様に鳴いたので再びジルは超級火魔法のインシネレートを使用して群れの一角を燃やし尽くす。
「アイスウォールで片側の分断を頼む。」
「クォオ!」
「中級火魔法、ファイアウォール!」
ジルがゴブリンを燃やし尽くした事で群れの中に空間が出来る。
その片側をホッコの生み出した氷の壁が、もう片方をジルの生み出した火の壁が立ちはだかる。
これにより火と氷の魔法の壁による道が出来上がった。
「ゴブリンではどちらの壁も突破は難しいだろう。このまま前方の魔物を殲滅して道を作っていくぞ。」
「クォン!」
これならゴブリンの数がどれだけ多くても邪魔される心配も無い。
ジルとホッコは魔法で壁を生み出しながら魔の森の中を突き進んでいく。
「アレンの言う通り高ランクのゴブリンも増えてきたな。」
魔の森の外にいたゴブリン達とは違って統率個体も増えてきたので、集団単位で厄介になってきた。
「そろそろ他の冒険者からも見えないだろう。氷魔法に切り替えるか。」
森の中なので派手な火魔法を使用すれば火事となり、森付近で戦っている冒険者達を巻き込む可能性がある。
なので火魔法は使わずホッコの使う氷魔法で戦ったり道を作る。
「そろそろ原因が見つかってくれればいいんだがな。」
ジルの魔力量は多いと言っても限界はある。
派手な魔法を連発で使用していれば、直ぐに魔力切れとなってしまうだろう。
なので進行速度は遅くなるが銀月や初級魔法で魔物を排除していく。
「クォンクォン。」
銀月で魔物を一刀両断にしたタイミングで突然ホッコが鳴きながら尻尾で優しくペチペチと叩いてきた。
ジルは殲滅に集中していたので気付かなかったが何かを発見した様である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます