57章
元魔王様と国宝級の武具 1
王都に到着してキュールネと別れた後、二人はギルドに向かった。
受けた依頼の報告をしているとメユノの表情が忙しなく変化していて少し面白い。
「はぁ、まさかそんな事態になっていたとは。早めに解決出来て良かったです。やはり知恵が働く魔物は早急に対処しなければいけませんね。」
対応を先延ばしにしていた事を後悔している。
解決してくれたジルに何度も頭を下げてお礼を言ってきた。
「人的被害は無かった様だし良かったじゃないか。」
「本当ですね。もう少し遅かったらと思うとゾッとしますよ。街道付近と言う事はそちらの方に帰る貴族の方々が標的になっていたかもしれませんから。」
「そうか、殆どの貴族はこれから帰るのか。」
エトワールの生誕祭も終わり、貴族達が徐々に自分の領地へと帰還していく。
インプのいた方角に帰る貴族達はジルが倒していなければスワローフラワーの餌食になっていてもおかしくなかったのでユメノも一安心だ。
「せっかくの王都ですからね。貴族の方々も充分に観光されてから帰る人が多いですよ。ジルさん達は早いくらいですね。」
連日街に繰り出す貴族達が尽きない。
やはり国の中央とも言える王都は見るべきところが多く、少しでも自領の発展の手掛かりを得ようとする者が多い。
「取り敢えずこの後は予定があるから解体は頼んでいくぞ。それと早急に金がいるからインプの分の支払いは貰っていく。」
「分かりました。」
既に大量の魔物達は倉庫に出してある。
その対応はユメノに任せているのでなんとかしてくれるだろう。
「こちらがインプの討伐報酬、そしてこちらが危険なスワローフラワーを討伐して頂いたお礼です。それとざっくりとした見積もりですが確実に全ての素材を買い取ればこれ以上にはなると思われますので、一先ず素材の買い取り代金としてお持ち帰り下さい。」
インプとスワローフラワーの討伐報酬だけで無く、まだ解体も終わっていない魔物の素材買取分もある程度の額を支払ってくれた。
「先に貰ってもいいのか?」
「普段はこう言った先払いは滅多にしませんけど、ジルさんにはお世話になりましたしお金が入り用みたいでしたから。明日正式な買い取り額が決まった時に残りはお渡ししますね。」
「有り難く貰っていく。」
ユメノに礼を言って無限倉庫に収納する。
これでオークションへの資金は大量に稼ぐ事が出来た。
これだけ追加しておけば落札には充分な額だろう。
「それでは私も査定の方に加わってきますので失礼しますね。」
量が量なのでユメノも受付嬢の仕事では無くジルの魔物の査定へと倉庫に向かった。
「ジル様、お待たせ致しました。」
「丁度良いタイミングだ。ギルドへの依頼報告は終わっている。」
ユメノと別れて直ぐにキュールネが戻ってきた。
「こちらもお店に行って話を付けてきました。これから会っても構わないと言っています。」
「やったの!」
「取り敢えず断られなかったのは良かったな。」
気難しい性格らしいので第一関門は突破だ。
「代わりに多少ハードルを上げてしまいましたから。貴方を満足させる客が来るから会いなさいと言ってきました。」
「成る程な、それは頑張らないといけないな。」
「新しい武器楽しみなの。」
キュールネがジル達と会わせる為に言ってくれたのは理解している。
その言葉に嘘が無い様に店主を納得させるつもりだ。
「以前欲しがっていた物をざっくりと書き出しておきました。これを報酬として出せるのであれば武器を作ってもらえるでしょう。」
そう言ってキュールネが差し出した紙を受け取る。
「どれどれ。成る程、中々入手困難な物ばかりだな。」
書かれているのは希少価値のある物ばかりだ。
貴族でも簡単には用意出来無いだろう。
「ですがその分の仕事はしてくれますよ。」
腕は保証するとキュールネが言ってくれた。
冒険者時代には自分の装備も何回か頼んだ事があるのだとか。
「まあ、何個かは似た物を持っている。ホッコの武器の為だしこれくらいくれてやっても構わん。」
「主様、ありがとうなの!」
ホッコがぺこりと頭を下げるので丁度良い高さにある頭を撫でておく。
「と言っても相手が相応の武器を作れたらの話しだけどな。少なくともこれらを報酬にするならダナンの武器と同等以上の物を作ってもらわんと割に合わない。」
ジルであっても簡単には手に入らない物なのでそれなりの対価は貰いたい。
「どこまでの物を求めるかはジル様と店主でお話し下さい。一先ず店まで案内致しますね。」
ギルドを後にしたジル達は混成装具師と名乗る者の店へと向かった。
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