元魔王様と天使達への切り札 5

 あの老人の聖痕は斬撃の力だ。

ジルの結界魔法を容易く破壊する威力を秘めているので相当危険である。


「あの一撃はまともに受けると身体が真っ二つになるぞ。」


「へえ、そんなに威力が高いのか。だが!」


 ジルの忠告を受けてもタイプAは避ける事を考えない。

少し距離があるのでショットガンからライフルに切り替える。


「ほい!」


 老人が斬撃を放ってくると同時にタイプAもぶっ放す。

爆発音の後に魔力の塊が放出されて斬撃に直撃する。


「ぐあっ!?」


 当然相殺する程度の威力では無いので、斬撃を破壊した後に老人の片腕をも吹き飛ばした。


「どんなに威力が高かろうと魔王の魔力は簡単に相殺出来無いぞ。」


 ライフルの威力に満足そうなタイプAが天使達に言う。


「ちっ、あの女からやるぞ。僕が攻めるから援護しろ!」


 ライエルがそう言い残してタイプAに突撃する。

ジルよりも厄介かもしれないと思える程の力をタイプAは持っている。


「渦に飲み込まれてなさい!メイルシュトローム!」


「貫きます!レールガン!」


 二人の天使がライエルを援護する様に魔法を放つ。

タイプAの周囲に渦潮が発生して、正面からは爆速の雷が向かってくる。


「俺も少し本気になってやる。迎撃装備起動!」


 魔法が発動すると同時にタイプAの周囲に小型の箱の様な物が幾つか現れる。

そこには規則的に穴が開けられていて、二人の魔法に反応して多連装ミサイルが打ち出されて破壊していく。

魔力のミサイルが自動で相手の攻撃を破壊してくれるのだ。


「光剣射出!」


「効かないっての。」


 ライエルの聖痕の力である光剣すらも魔力のミサイルが飛んでいき吹き飛ばす。


「次は俺の番だ。俺の攻撃が防げるか?」


 タイプAがアサルトライフルを取り出して三人の天使達に連射攻撃を放つ。

既にタイプAの扱う武器が凶悪な威力を秘めているのは分かっているので、全員が必死に空中を飛び回って回避している。


「はっはー!踊れ踊れ!」


「僕を馬鹿にするな!光剣よ蹂躙しろ!」


 辺り一体の空を埋め尽くすくらいの光剣をライエルが生み出す。

それをタイプA目掛けて全て放ってくる。


「蹂躙ってのはこうやるんだよ!迎撃装備フルバースト!」


 全ての箱から多連装ミサイルを上空目掛けてぶっ放す。

光剣による広範囲攻撃がタイプAに全て破壊されて光剣が地面まで届く事は無かった。

それどころかミサイルが天使達の下まで向かっていき慌てて魔法で相殺している。


「くっ、僕がこんな奴に。」


「本当はマスターと戦いたかったんだろう?でも残念だな、その願いは叶わずしてお前は俺に殺される。」


 タイプAが空に浮かぶライエルを指差して自信満々に告げる。

情けないマスターはいまだにエリクサーと格闘中なので自分が終わらせる。


「ふざけるなー!」


 ライエルの怒号に反応する様に聖痕が一際大きく輝く。


「聖痕よ、僕にこいつを殺す力を!」


 ライエルの前に巨大な光剣が生成される。

ジルも見た事が無いくらいの大きさである。


「でっかいなー。」


「呑気に感想を呟いている場合か。どう対処するんだ?」


 おそらくライエルが使ってきた攻撃とは比にならない威力の筈だ。

直撃すれば無事では済まないだろう。


「ん?まあ、これくらいなら余裕だろ。」


「舐めるなよ女あああ!光剣よ、滅せよ!」


 巨大な光剣をタイプA目掛けて射出する。

風切り音を響かせながら真っ直ぐに地面に迫ってくる。

タイプAはアサルトライフルからスナイパーライフルに武器を切り替える。

銃口に魔王の凶悪な魔力が集まっていく。


「魔力収縮一点射撃、デモンズショット!」


 タイプAが迫る光剣目掛けて引き金を引いた。

それ程大きな音がしなかったのだが、打ち出された魔力は綺麗な軌跡を残して光剣を破壊してライエルの身体を綺麗に消し飛ばした。


「ライエル!?」


「仲間の心配している場合か?」


 タイプAがスナイパーライフルを女性の天使に向ける。


「その通りじゃが、お主も油断したな?」


 いつの間にか老人がタイプAに接近していた。

大技直後の隙を狙って近付いていたのだ。

聖痕も光らせて必殺の斬撃を放とうとしている。


「俺ばかり見ているお前の方が油断しているんじゃないか?」


「っ!?」


 老人はタイプAばかり気にしてジルを見失っていた。

やっとエリクサーを飲み終わったジルは回復を済ませて動ける様になった。


「ふっ!」


「ぐあっ!?」


 背後を取ったジルが老人を銀月で斬る。

それが致命傷となり老人も地面に倒れる。


「ナイスだマスター。」


「我は本調子では無いのだ。あまり当てにされても困るぞ?」


「今の爺さんだけだ。残り二人は俺がやる。」


 銃口は空に浮かぶ二人の天使の方を向いている。

ライエルと同じ様に消し去るつもりだ。


「貴方達の死は無駄にしません。超級爆裂魔法、エクスプロージョン!」


 眼鏡を掛けた天使が仲間達の仇を取ろうと攻撃力の高い爆裂魔法を放ってくる。

しかし魔法を使用したのに何も起こらない。


「な、何故魔法が!?」


「俺の愛銃は食いしん坊でな。爆裂系統の魔法が大好物なんだよ。そら、お返しをくれてやる。」


 爆裂魔法を吸収していたスナイパーライフルで奪った魔力をそのままお返しとばかりに放つ。


「ごばっ!?」


 眼鏡を掛けた天使の身体に大穴を空ける。

魔王の魔力でなくても武器の性能が高いので簡単に倒せる。


「さて、残りは一体だけだな。」


「い、嫌よ。死にたくない。死にたくない!」


 女性の天使が震えながら全速力でその場を離脱する。


「あらら、ここまでやって逃げるとはな。」


「タイプA、後が面倒だから逃すなよ。」


「誰に言ってんだ?狙撃は大得意だ。」


 前の二人と同じ様にスナイパーライフルを撃って最後の天使も仕留める。

五人いたナンバーズが全て葬られた。


「掃除完了だな。不甲斐ないマスターの尻拭いをしてやったんだ、感謝しろよ。」


「ああ、助かったぞ。」


 熱が引いていき調子が戻ってきた。

あのままだと天使達に負けていた可能性もあったのでタイプAには感謝しかない。

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