元魔王様とフォルトゥナとの再会 9

 少し時間を遡り、ジル達がレギオンハートの従魔と会っている間、テスラはオークション会場から出たフォルトゥナと思われる者達を尾行していた。


「はぁ、ジル様の言葉に思わず頷いちゃったけど、こそこそ付け回すのって面倒よね。」


 フォルトゥナらしき者を含めた一行はテルイゾラの見回りをしながら街中を進んでいく。

感知に長けた種族や感知系のスキル持ちがいるかもしれないので距離を取って後を付ける。


「それにせっかくジル様とデートなのに別行動とか最悪だわ。」


 今も一緒にいるレイアを思い出して頬を膨らませる。


「これも全部フォルトゥナのせいよ。再開したらどうしてくれようかしら。」


 思わず怒りの感情が漏れ出る。

先を歩く一行の一人がブルリと震えた様に見えたが気のせいだろう。


「それにしても結構歩くけどどこに向かっているのかしら。」


 それなりに街中を進んでいるがまだまだ止まる気配が無い。

合流地点や目印となる建物も決めていないので、あまり遠ざかるとジルに空間把握で見つけてもらわなければいけなくなってしまう。


「それにあれの使い道も気になるわね。ベタ惚れ薬で何をするつもりなのかしら。」


 フォルトゥナと思わしき者が落札していたベタ惚れ薬。

あれは使い道を誤ればとんでもない兵器にもなり得る。

危ない使い方をしないか気になるところだ。


「そこの怪しいお姉さん、少しお話しいいですか?」


「えっ?」


 突然声を掛けられて振り向くと一人の男性が立っていた。


「誰かを追跡している様に見えましたので。この都市の治安維持を任されている者として事情聴取にご協力を。」


 後を付けていた者達と同じ様な全身を覆うローブを身に付けている。

テルイゾラの治安維持組織が身に付けるローブなのかもしれない。


「あら、御免なさい。知り合いに似ている人がいたので少し気になってしまって。」


 少し警戒心が緩かったかと反省しつつも、テスラは一切動揺せずに笑顔で対応する。

怪しい行動をして騒ぎになるのは困るし、それでフォルトゥナと思わしき者を見失うのも困る。


「あの方々の中にですか?」


「ええ。」


「それなら私が呼んできましょうか?あの方々は同僚ですから。」


 フォルトゥナがそんな組織に加入している可能性は低い。

性格を知るテスラはフォルトゥナが荒事を嫌がる事を知っていた。


「同僚と言う事はテルイゾラの治安維持を?」


「そうなります。グループは違いますけどね。」


「へぇ。」


 テスラはここで二つの可能性を思い浮かべる。

一つは尾行している者がそもそもフォルトゥナでは無いと言う可能性。

もう一つはフォルトゥナが何らかの逃げ出せない状態にいて治安維持をさせられていると言う可能性だ。


「それでは呼んでくるので少し待っていて下さい。」


「それはいいわ。貴方、色々と知っている様だし。」


「えっ?」


 テスラは男性の顔に手を向けて魅了魔法を使用する。

すると男性の目が虚になっていく。


「さて、色々と知っている事を話してもらうわよ。一先ずはフォルトゥナと言う人物を知っているかしら?」


「知っています。」


「これは当たりみたいね。ならそのフォルトゥナの情報をお願い。」


 露店で買い物をして立ち止まっているのを確認しながら魅了魔法で操った男性から情報を得る。


「へぇ、色々と大変な事になっているのね。」


 男性からジル達が得た情報と同じ様な情報を聞けた。


「フォルトゥナの周囲にいる人達も同じ立場の人なのかしら?」


「同じ立場の者もいますが、テルイゾラの者も紛れていると同僚から聞いた事があります。」


「反乱を起こさせない為の監視役かしら。聞いた事があると言い回しから貴方は外の人でいいのよね?」


「はい、フォルトゥナさんと同じく外の者です。」


 それを聞いてテスラは少し残念がる。

監視役の者を魅了出来れば更に色々と情報を聞き出せたかもしれなかったからだ。


「あれ?ちょっと待って?確か治安維持は複数名のグループで行動するって言ってたわよね?もしかして貴方以外の人達は。」


「近くにいましたので私がいなくなって探しているでしょう。」


「それを先に言いなさいよ!早く解放して離れないと!」


 治安維持のグループの中にはテルイゾラ側の監視役もいる。

暫く姿が見えないとなると不信感を抱かせてしまう。

急いで直近の記憶を曖昧にさせて解放しようとするテスラ。


「それには手遅れだと言っておこう。」


「っ!?」


 悠長に話しを聞いていたせいで敵に気付かれてしまった。

安全圏から偉そうな男性がこちらを見て笑っている。

他にも周りに治安維持の者達が複数名散って取り囲んでいた。


「囲まれている様ね。」


「鼠が忍び込んでいたか。魔法かスキルで操って情報を抜き取ったな?貴様もこいつらと同じ立場にしてやろう。」


 その発言を聞いて他の治安維持の者達は顔を顰めたり悔しそうな表情となっている。

人質を取られているので逆らいたくても逆らえないのだろう。


「貴方が監視役の様ね。随分と堂々としているわね?」


「もう隠す必要は無いだろう。それに名乗ったとしてもお前が捕まるのは決定事項だ。私のグループには高ランクの冒険者が沢山いるのでな。」


 確かに監視役の男性が言う様に実力者が多く見受けられる。

本来ならこんな者に大人しく従っている訳が無い者達だ。


「こんな奴に操られてていいの?」


「し、仕方無いんだ。こうしないと俺の妻が。」


「悪く思わないでくれ。幼い妹の為なんだ。」


 冒険者達が悲痛な表情で武器を構え始める。

本当ならやりたくも無い事を人質を盾にやらされている。

それが負の連鎖となって現状を生み出しているのだ。


「私も人を操る側だけど、こう言うのは好きじゃないのよね。」


 テスラは監視役を見ながら不愉快そうに呟いた。

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