【毎日更新】元魔王様の2度目の人生

元魔王様と魅了で敵対 7

　空間把握を使ってホッコとキュールネの場所を見つけて合流する。

二人共インプどころか魔物を一体も見つけられなかったと言っていたが、事情を知っているジルからすると当然の事だ。

「インプの周囲に大量の魔物ですか？」

「ああ、遠目から確認しただけだが多種多様の魔物がいたな。」

　火魔法以外の魔法を使える事は言っていないのでそう言う事にしておく。

「色んな魔物が一緒にいるなんて不思議なの。」

「ホッコ様の言う通り少し変ですね。インプの性格を考えると何か企んでいるのでしょうか？」

　二人共不思議そうに首を傾げている。

同種の魔物同士ならば普通の事だが、多種多様な魔物が共に行動しているのは珍しい事だ。

「人種への嫌がらせに擬似的なスタンピードでも起こそうとしているのかもな。魅了魔法や統率系統のスキル持ちかもしれん。」

「…もうスタンピードは懲り懲りなのですが、もしそうであれば王都が危険に晒されてしまいますから対処は必須ですね。」

　セダンのスタンピードを思い出して辟易した様子でキュールネが呟く。

それだけスタンピードは厄介な災害だった。

「規模間で言うとセダンのスタンピードよりもかなり少ないけどな。充分我らで対応出来る数だ。」

「増援は必要無いと？」

「ああ、不安ならキュールネだけ伝令として引き返すか？」

　キュールネが引き返してくれるのならばジルは魔法の制限が無くなる。

あれくらいの魔物の軍勢であれば現状でも余裕だが、制限が無くなれば一瞬で殲滅させて終わらせる事も可能だ。

「いえ、ジル様が大丈夫だと言うのであればそうなのでしょう。先のスタンピードでも大活躍であり、この王都への旅でも何度もその実力を確かめさせて頂きましたから。」

「主様は最強なの！誰にも負けないの！」

　二人共ジルの実力を疑ってなどいない。

それくらい圧倒的な力を周りに示してきている。

「まあ、魔物の軍勢くらいは任せておけ。では案内するから向かうとしよう。」

　空間把握で認識した魔物達の場所まで徒歩で近付いていく。

少し離れた木陰で魔物達に見つからない様に隠れる。

「ここからなら向こうからは見つからないだろう。」

「すっごく沢山いるの。」

「成る程、これだけの数が一箇所に集まっていれば魔物が見当たらないのも納得ですね。」

　三人が木陰から魔物達の様子を伺って呟く。

「インプはあれだな。魔物に指示を出して何かしている。」

「本当に真っ黒なの。」

「お二方は目が良いのですね。私には沢山の魔物がいる事くらいしか分かりません。」

　キュールネが目を凝らしているが距離があるので見えにくい様子だ。

「それなら教えてあげるの。インプが指示を出したゴブリン達が魔物に次々と食べられてるの。」

　ホッコが遠くから見た魔物達の様子を伝える。

「えっ？仲間割れですか？それとも制御仕切れていない？」

「うーん、多分ゴブリンを餌としてインプが魔物に与えているの。育てている感じがするの。」

「魔物を育てる？その魔物はどう言った姿ですか？」

「赤くて黄色くて黒くておっきいの。」

　ホッコが頑張って説明してくれるがキュールネはいまいちピンとこず、ジルに説明を求める様に視線を向けてくる。

「真っ赤な茎を持つ巨大な花だな。黄色と黒の不気味な模様が身体中にある。そして無数に伸びている蔓で餌を捕まえて、巨大な口に放り込んでいる。」

　ホッコの説明を詳しくして伝える。

するとキュールネが目を見開いて驚いている。

「なっ！？その魔物はスワローフラワーです！その場から身動きが取れないのでBランク指定の魔物ですが、実力はAランクの魔物とも大差ありません！それに他の生物を捕食する事で際限無く力を増す危険な魔物です！」

「つまり強いって事なの？」

「とても厄介な魔物です。かなり長期間にはなりますが放置し続ければSランククラスの力を蓄える可能性もあります。」

「それは大変なの！」

　Sランクと聞いてホッコも驚いている。

それだけ魔物の最高ランクは格が違う。

同じ魔物だからこそSランクと言うランク帯の魔物達が次元の違う存在だと良く分かる。

「安心しろ、現段階ではそこまで強くは無い。今なら対処は簡単だ。」

　インプが魔物を与えて育てている様だがまだ育て始めて間も無いだろう。

Sランクには程遠いと感じる。

「街道付近で危険ですし人に被害が出る前に一刻も早く討伐するべきでしょう。」

「ならばさっさと片付けるか。」

「討伐するの！」

　ジル達はここでインプやスワローフラワーを討伐する事に決めた。