元魔王様と魅了で敵対 8
ジル達は魔物達に気付かれないギリギリまで更に近付く。
「先ずは我が魔法を放つ。それを合図に殲滅を開始する。」
「了解なの。」
「畏まりました。」
二人が頷いたのを確認してジルが魔物達に手を向ける。
「上級火魔法、イグニスピラー!」
火魔法を唱えると魔物達の足元に魔法陣が現れて、そこから炎が噴き出してくる。
広範囲に熱気を振り撒く巨大な火柱となり魔物達を燃やしていく。
「凄い火力なの。」
「かなりの範囲の魔物が燃えていますね。」
二人がジルの火魔法の火力に驚いている。
「だがインプやスワローフラワーには当たっていない。あくまでもここから近い範囲だけだ。残党狩りに向かうぞ。」
本命の魔物達は射程範囲外だったので、倒せたのは魅了されている魔物だけだ。
残った魔物達を倒す為にジル達が接近する。
「一番乗りなの!」
「ゴブゥオ!」
「アイシクルエンチャントなの!」
一番近いゴブリンジェネラルにホッコが斬り掛かる。
氷結魔法で強化した攻撃により一撃で斬り倒す。
「続きます、ふっ!」
「グギャアア!?」
ホッコに続いてキュールネが蜥蜴型の魔物を短剣で斬り伏せる。
Aランク冒険者としてかなり良い動きで魔物達を次々に倒していく。
「魅了状態の魔物は通常時よりも動きが鈍い。どんどん殲滅していけ。」
二人に指示を出しながら周りの魔物達を息をする様に次々と倒していく。
三人の実力者により魔物の数が見る見る減っていく。
そんな戦闘の中で魔物側から魔法が放たれる。
丁度ホッコの立っている地面に魔法陣が現れた。
「ホッコ、飛び退け!」
「お任せを。」
ホッコに近い位置にいたキュールネが魔装して高めた身体能力を利用してホッコを抱えて一瞬で走り抜ける。
その少し後にホッコの立っていた地面から火柱が上がる。
「ビックリしたの。」
「申し訳ありません、急いでいたもので。」
「ううん、助かったの。」
キュールネに抱えて移動してもらっていなければ回避が間に合わなかったかもしれないので助かった。
「あれはコピーパペットですね。」
火魔法を発動した木人形を見てキュールネが呟く。
「どんな魔物なの?」
「我も初めて聞く名前だ。」
「直近で見た上級までの魔法を一時的に使用出来る魔物です。先程のジル様の魔法を模倣したのでしょう。」
「イグニスピラーを使えると言う事か。我の火力には及ばないが放置するのも面倒だな。」
火力の差はあるが上級火魔法をいつでも使える状態にさせておくのは危険である。
乱戦になれば気付くのが遅れる可能性もある。
「優先的に狩らせてもらおう。」
「カタカタ!」
「おっと、今度はホッコの魔法か。」
別のコピーパペットが自身の腕を氷結魔法で強化してジルを攻撃してきた。
動きはそれ程速くないので回避は余裕だ。
「ホッコには及ばない、な!」
コピーパペットを二体共銀月で斬り伏せる。
それが決め手となったのか、インプがジルを危険と判断して魅了された魔物が一斉に襲い掛かってきた。
「邪魔だ雑兵共、フレイムエンチャント!」
火魔法によって強化された銀月により次々に魔物が焼き斬られていく。
「さ、さすがの殲滅力ですね。」
「全部焼き斬ってるの!」
ジルが凄まじい殲滅力を発揮し、魔物の数が激減した事でターゲットへの道が開かれる。
「見えたぞ!」
「シュルルル!」
スワローフラワーが無数の蔓を伸ばしてジルを攻撃してくる。
「蔓ごときでは止まらんな。」
「シュルルッ!?」
軽々と蔓が焼き斬られてスワローフラワーが慌てている。
「キキー!」
「ちっ、魅了魔法はやはり面倒だな。」
スワローフラワーを援護する様にインプが魅了している魔物を集めてジルに総攻撃してくる。
「キキー、キキー!」
「シュルルル!」
インプに指示されたスワローフラワーの蔓が別の場所へと伸びていく。
「ホッコ様、スワローフラワーの蔓がきています!くっ、敵の数が多くて援護が!?」
「アイスウォールなの!」
キュールネの言葉に反応してホッコが氷の壁を作り出す。
しかしそこに無数の蔓が叩き付けられてヒビが入ってしまい、連続して叩き付けられて破壊されてしまう。
「壊されたの!?」
蔓がホッコに迫りその身体をぐるぐると巻いて拘束する。
「ちっ、邪魔だ!」
ジルが銀月を魔装して更に強化して周りの魔物達を一気に焼き斬る。
「先ずはお前からだ!」
「シュルルッ!?」
ホッコを襲う元凶を倒すべくスワローフラワーとの距離を詰めて銀月を振るう。
「はっ!」
「キキー!」
ジルがスワローフラワーを焼き斬るのと同時にインプが何かをした様だ。
だがスワローフラワーはジルの攻撃により地面に倒れた。
「あと厄介なのはインプだけか。」
「キッキッキー!」
インプを見ると何故か上機嫌に笑っている。
スワローフラワーを倒されているのにそんな反応をしているとは思わなかった。
「クオオオン!」
インプの反応に疑問に思っていると雄叫びが辺りに響く。
誰の声かと辺りを見回して直ぐに正体に気が付いた。
その雄叫びは獣人の姿のホッコがしたものだった。
「ジル様、これは。」
「ちっ、まさか育てていたスワローフラワーを囮に使うとはな。これでは勝てないと考えてあっさりと切り捨て、ホッコに乗り換えたか。」
ホッコは正気を失っていた。
動けないところをインプに魅了魔法を掛けられた様だ。
切り札とも言えるスワローフラワーを倒されても上機嫌だったのはホッコの制御権を奪えたからだろう。
「っ!?ではホッコ様は魅了魔法を!?」
「簡単に掛かるとは精神がまだまだ未熟な証拠だ。だが説教は後回しとしてさっさと正気に戻すとする。」
ジルは銀月を鞘に戻してホッコに向いて拳を構えた。
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