元魔王様とナキナの従魔 6
「我は別に構わないがいいのか?」
ジルが周りの者達に尋ねるが否定的な意見は無い。
ラブリートが決めた事ならばそれに従うと言った感じだ。
冒険者であればラブリートに逆らうのは怖いだろう。
それにジルの実力も先程確認出来た。
料理を食べながらの片手間と言う、ふざけた魔法による攻撃だったが、威力精度共に文句の付けようが無かった。
誰もジルの実力を疑う者はいない。
「ではシンプルにいこう。」
そう言ってジルが作戦を説明する。
先ずはジル、ナキナ、ラブリートの主戦力三人が結界を出て周りを排除する事にした。
先程料理を食べながら定期的に間引いていたのだがすぐ増えて戻ってしまい、今もかなりの数が結界周りにいる。
普通の冒険者達であれば囲まれて数の暴力で殺される可能性があるので待機していてもらう。
村の周りを片付け終わったら冒険者達を投入する。
ジル達がどこからこれだけの数が攻めてきているのか原因を調べるので村の防衛や安全地帯を広げる役目を任せるのだ。
「こんな感じでどうだ?」
「妾は大丈夫じゃ。」
「私もいいわよ。」
一番危険なのは言うまでもなくジル達三人だろう。
それでも二人共特に文句は無い様だ。
他の冒険者達に関しても実力を弁えているのか異論は無さそうだ。
無駄なプライドを出して死にたくは無いだろう。
「じゃあ行きましょうか。」
「その前に我が結界の外を少し減らして出やすい様にしよう。」
料理を食べながらやっていたのと同じ様に中級火魔法によって生み出された燃え盛る蝶を天井部分から外に出してウルフを焼く。
一箇所だけ蝶を集中させて重点的に攻めると、その場所からはウルフがいなくなった。
燃える事が分かっている火に自ら近付きたくはないだろう。
「ここから出るぞ。」
ウルフがいなくなって出やすくなった場所から外に出る。
直ぐに結界を閉じたので村の中は安全である。
結界があるので守る事を考えずに心置き無く戦える。
「そろそろ夕方か、さっさと片付けるぞ。」
日が沈む前にはセダンの街に帰りたい。
門の閉まる時間を考えるとあまり時間を掛けてはいられない。
「妾はこちらを担当しようかのう。」
「じゃあ私はこっちをやるわね。」
ナキナとラブリートが散っていく。
実力者が三人固まるよりも手分けして倒した方が効率的だ。
「あの森の方から絶え間無くきてるって事は、何かいるんだろうな。」
ジルは食事をしながらも魔物が増える原因を探していた。
ウルフ達を間引くと直ぐに数が補充されていたのだが、どうやらウルフ達の向かってきた方向には小さな森があるらしい。
その中から出てきている様だが森の大きさを考えると、とてもではないがこれだけのウルフが入りきる大きさでは無い。
なので森の中に確実に何か原因があるのだろう。
「あの森に向かって突き進めば数が増えるのも抑えられるだろう。」
森から補充されているのなら倒しながら森の方に進んでいけば、村近くの魔物が補充される事も無い。
「道を開けろ。」
ジルが火魔法を使用して手をかざすと空中に火の矢が大量に現れる。
様々なウルフ種の魔物がそれを脅威と見たのか一斉にジルに襲い掛かってくる。
その一団に向けて火の矢を放つと向かってくる側から焼き貫かれていき、辺りは火だるまとなったウルフで溢れていく。
「低ランクの魔物ばかりだな。進めば少しは大物も出るか?」
村周辺の魔物は数が多いだけでランクの低い部類ばかりだ。
ナキナやラブリートも全く苦戦する事無く、地面に死体を量産している。
「グルゥア!」
「おっと。」
振るわれた爪を下がって回避するジル。
放った火の矢を回避しながら攻撃を仕掛けてきた個体がいた。
他のウルフ達に比べて中々に素早い。
「名前は知らないが上位種か?」
「グルゥア!」
攻撃を避けられた苛立ちからか吠えながら再度鋭い爪で貫こうとしてくる。
ジルは腰に下げている愛刀、銀月に手を添える。
「ラブリーパンチ!」
「ギャイン!?」
刀で応戦しようかと思ったら目の前にいたウルフが派手に吹き飛び動かなくなった。
ジルの背後から一瞬で距離を詰めたラブリートが素手でぶん殴ったのである。
「ジルちゃん、こっちは終わったわよ。」
まるで何も無かったかの様に報告してくる。
振り向くと結界周辺に立っている魔物はナキナが戦っている数匹だけであり、他は全て瀕死の重症や死体となって倒れている。
苦戦するとは何だったのか、ナキナ以上の殲滅速度で多くのウルフ種を倒してくれた。
さすがはSランク冒険者である。
「それならこのまま進むとするか。」
「分かったわ。」
結界を開けても大丈夫そうなので一部を開けて冒険者達を外に出す。
村人達の安全を考えて結界は維持したままにする事にした。
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