元魔王様とナキナの従魔 7
ラブリートを加えて森の方に進みながらウルフ狩りをしているとナキナも合流してきた。
村から少し離れている場所にもウルフ達が散っていたが、それらは冒険者達に任せてきた様だ。
「森の入り口までくると高ランクのウルフが多くなってくるわね。」
ラブリートがBランクのウルフ種の魔物を殴り倒しながら言う。
ランクが上がっても一撃で倒せる事には変わり無いのであまり大差は無さそうだ。
「他の冒険者達には厳しそうじゃな。」
同じくBランクのウルフを斬り伏せてナキナが言う。
「実力は弁えている様だし、転がってる魔物を見て判断してくれるだろう。」
ジルも同じくBランクの魔物を丸焼けにさせながら言う。
村周辺に残っている魔物は殆どジル達が倒してしまったので、冒険者達も手助け出来る様にと少し離れて後を付いてきている。
しかし三人が平然と倒しているのは他の冒険者達からすれば死闘となるレベルの魔物ばかりなので手助けは難しいかもしれない。
それでも三人は少し警戒して進む程度なのでまだ余裕がある。
「あらあら大物ね。」
森の中を進んでいくと黒いオーラの様な物を纏っているウルフが待ち構えていた。
巨漢であるラブリートと同じくらいの背丈があるので中々の大きさだ。
明らかに他の魔物とは格が違う。
「知ってるのか?」
ジルは初めて見る魔物であり、ナキナも知らない様子だ。
高ランクの魔物は珍しいので冒険者歴の長いラブリートだからこそ知っているのかもしれない。
「シャドウウルフって言うAランクの魔物よ。影を操るスキルを持っているわ。」
「ほう、それは是非とも確保しておきたいな。」
ラブリートの説明にジルは目の色を変える。
強そうなスキルならばライムに是非覚えさせたい。
実は同じ様なスキルをスキル収納本に所持してはいるのだがライムの魔力量が少ないからか、スキル収納本によって強力なスキルを与える事が難しい。
なので正規の方法を使い、実際に魔物をスキルで吸収させてスキルを覚えさせるしかない。
なので倒して持ち帰りたいと思った。
「我が倒すとしよう。」
ジルが強そうなスキルを持つシャドウウルフを見て笑みを浮かべながら一歩前に出る。
既にジルの中ではスキルを入手した事が決まっているかの様だ。
するとシャドウウルフは突然大きな身体を伏せた。
「ん?」
何か攻撃してくるのかと身構えているとシャドウウルフは伏せた状態から横にゴロンと転がった。
そして仰向けのポーズのまま静止する。
「…これは何かの攻撃前の準備か?それとも防御やカウンター狙いの構えか?」
シャドウウルフについて唯一知っているラブリートに尋ねる。
「見ての通り降参しているんじゃないかしら?」
「降参?」
そう聞いてシャドウウルフを見ると確かに殺意どころか敵意すら感じられない。
戦うつもりが一切無い様だ。
「成る程のう。妾だけなら良い勝負になったかもしれぬが二人がいてはな。」
ナキナがシャドウウルフをチラチラと気にしながら言う。
ジルはDランクとは言え底の知れない怪物級新人冒険者であり、もう一方はSランクの正真正銘の化け物だ。
ナキナと違って人外の強さを持つ二人を相手にしても負ける事は分かり切っている。
戦っても勝てないなら降参して命乞いと言った感じだろう。
「他のワンちゃん達と比べてお利口なのね。」
ラブリートがシャドウウルフに近付いて撫でる。
シャドウウルフは一瞬ビクッと身体を震わせたが攻撃じゃないと分かるとされるがままだ。
至近距離にラブリートがいても攻撃する雰囲気すらない。
「確かに賢そうだな。」
敵の強さを判断出来る頭を持っているだけで野生の魔物としては優秀だろう。
ラブリートに怯えているのが証拠だ。
怒らせてはいけない相手をしっかりと理解しているのだろう。
「それでこの子どうするの?」
「普通に倒せばいいんじゃないか?」
ラブリートの質問にジルが答える。
シャドウウルフは会話を分かっているのか怯えや恐怖と言った感情が現れてきた。
ジルとしては降参していても見逃したくは無い。
影を操るスキルを是非とも入手したい。
「なっ!?そ、それは少し可哀想ではないかのう?」
怯えるシャドウウルフを気にしながらナキナが言う。
どうやらナキナは討伐反対派らしい。
心無しかその言葉を受けてシャドウウルフが潤んだ瞳をナキナに向けている気がする。
「あら?ナキナちゃん、この子が気に入ったのかしら?」
「そうなのか?」
二人がナキナを見て尋ねてくる。
「う、うむ。」
「つまりテイムしたいって事か?」
素直に見逃すと言う選択肢は無い。
スキルが欲しいし、そもそもこんな高ランクの魔物を村の側で放っておけば犠牲者が出るのは確実だ。
「ジル殿が許してくれるならばそうしたいと思っておる。」
これはナキナの我儘である。
ライムの事については聞いているので、魔物の持つスキルをライムに与えたいと考えている事は分かっている。
そして本来ジルに付いていく条件はジルの言う事に従う事になっている。
なので許可が貰えなければ残念だがシャドウウルフは諦めるしかない。
「そう言う事なら好きにすればいい。」
ジルはそれを聞いて銀月に添えていた手を離した。
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