元魔王様と浮島強化計画 5

 魔石人形をばら撒いて浮島全体の防衛強化、そしてレイアとテスラの強化も魔王酒を用いる事で問題は解決した。

なので次の者達へと移る。


「次は私達ですか?」


「宜しくお願いしますマスター。」


「お前達の場合はまた難しいな。」


 目の前にいるタイプBとタイプCを見ながら悩む。

魔王時代に自分を殺す目的で作製した魔法生命体達は既に完成していると言える。

何か手を加えるとすれば武具を与えて戦闘の幅を広げるくらいしかない。


「既にマスターによって素晴らしい武装が整えられていますからね。私はこの玉を頂きましたから、毎日試行錯誤している最中です。」


「私はマスターから頂いた白焔の扱いが上達してきました。」


 与えられた勇者の武具や刀を持って嬉しそうに言う。

タイプBはジルとお揃いの刀を報酬として手にしてから毎日の様に使い続けて技量を上げている。

敵と戦う力は日々順調に蓄えている様だ。


 タイプCも昔勇者の扱っていた変幻自在の武具玉を貰ってから、様々な物に形を変えて試しているらしい。

連動外装と組み合わせて扱える様な武器を模索中との事だ。


「それは重畳。だが現状の強化だとこれくらいだろうな。」


「私もそう思います。現在の換装出来る装備で今は満足していますので。」


 タイプBの装備に白焔が加わった事で現状の装備に不満は無い。

あまり一度に増やし過ぎると練度を上げる暇も無いので、今は白焔の練度を高める事に集中してもらうのが一番だ。

また武具を追加するのは頃合いを見てからでいいだろう。


「私もこれ以上の装備は難しいかと。連動外装が持つ巨大装備と言う案もありますが、元々私は支援型なので。」


 タイプCはタイプBと違って元々前に出て戦う役目では無い。

戦闘機能も搭載してはいるが、それはあくまでも自衛の手段と言った意味合いの方が強い。

武器ばかり搭載しては本来の役目から外れてしまう。


「そうなると手っ取り早い強化は、お前達を強くするのでは無く人数を増やす事だろうな。」


 個人の強化が難しいのであれば頭数を増やしてしまえばいい。

ジルの無限倉庫の中にはまだ魔法生命体がいる。


「タイプDですか?」


「危険ではありませんか?」


「我もそう思う。」


 魔法生命体一人当たりの戦闘能力は非常に高い。

元々魔王を殺す目的で魔王自身によって作製されたのだから弱い訳が無い。

そんな魔法生命体が更に一人増えれば浮島の強化としては充分だと言える。


 しかし三人が心配する様に追加要員であるタイプDには不安な点もある。

タイプDはここにいる二人の魔法生命体よりも更に火力に秀でている超魔法特化型だ。


 以前魔の森で助っ人として呼び出した時には得意の超火力による広範囲魔法で、マスターであるジルを巻き込んだ前科もある。

浮島でそんな事をされれば魔法の威力に耐えられず浮島が落ちてしまったり崩壊してしまうかもしれない。


「せっかく作った浮島がタイプDの魔法で崩壊してしまっては金も時間も全てが無駄になるからな。さすがに慎重にならざるを得ない。」


 浮島には随分と金を掛けてきた。

それがあっさり破壊されてはジルだけで無く、浮島の開発に尽力しているシキは絶望するだろう。

転生してから頑張って稼いできた苦労が水の泡になってしまう。


 異世界通販によって購入したこの世界には存在しない物も多いので、壊れたからまた稼いで購入すると言うのも難しいのだ。


「敵よりも厄介な存在になるかもしれません。タイプDは派手な魔法を使いたいだけですから。」


「ですがマスターの意見であれば素直に聞く可能性もありますね。一度お話しされてみては?」


 タイプDは魔法が大好きで交戦的な性格ではあるが話しが出来無い訳ではない。

ジルの事もマスターと呼んでタイプBやタイプCと同じ様に尊敬しているので、頼めば分かってくれるとは思う。


「ふむ、そうするか。」


 取り敢えず話してみてから判断する事にして、無限倉庫からタイプDを取り出す。


『タイプD、起動しろ!』


 魔力を分け与え言霊のスキルを使用してタイプDを呼ぶと、その目に光りが灯る。


「マスター!」


 タイプDは動ける様になると直ぐに目の前にいるジルに飛び付いてきた。


「お久しぶりですね!」


 嬉しそうに満面の笑みを浮かべている。

タイプBやタイプCと違って頻繁に出せる訳では無いので、どうしても期間が開いてしまう。


「以前呼び出して沢山魔法を打たせてやっただろう?」


「もっと沢山の呼び出しを希望します!タイプDはもっとマスターといたいです!」


 前回の呼び出しくらいでは満足出来無かった様子だ。

がっしりとジルの身体に捕まって頬擦りしている。


「それについての話し合いをしたくて呼び出したのだ。お前次第ではこの二人と同じ様に浮島で過ごしてもらう事も出来る。」


 ジルのその言葉を聞いてタイプDはガバッと顔を上げて目を輝かせた。

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