元魔王様とオークション島テルイゾラ 2
ジルの魔法による爆速移動で休憩を挟みつつ数時間移動すると目的の国が見えてくる。
「あれがテルイゾラのあるデスザード王国か。」
「国土の殆どが砂漠の国です。オアシス近辺は栄えていますが、他は荒れ放題の無法地帯ですね。」
「砂賊や魔物が大量にいて、町からの移動は護衛や専用の乗り物が無いと命が幾つあっても足りないらしいですよ。」
「成る程、ならばどれ程のものか体験してみるとするか。」
ジル達は浜辺に降りてデスザード王国に上陸する。
ここから目的のテルイゾラに向かうには色々と準備がいる。
レイアとテスラが調べておいてくれたのでその通りに行動していく予定だ。
「ここから東に進めばテルイゾラに近い町があった筈です。そこから入行専用の砂漠船が出ています。」
テルイゾラに入行するには町から出ている専用の砂漠船に乗る必要があるらしい。
なので先ず目指すのはその町だ。
「魔法で強引にって言う手もありますけどバレたら面倒ですからね。」
「急いでいる訳でも無いからな。普通の順序で入るとしよう。」
目立って面倒事に発展するのは回避したい。
なのでテルイゾラの中まで魔法で移動するのは止めておいた。
「それには何よりもお金が必要です。」
「砂賊や魔物で荒稼ぎよ!」
「両替出来無いらしいからな。現地調達といくか。」
デスザード王国には自国の貨幣と外の貨幣とを交換する施設が無い。
テルイゾラのオークションを含めたこの国での支払いは全てデスザードの貨幣が必要になるのでお金を稼ぐ必要がある。
一般的には換金出来る物を持ち込んでお金を得る者が多いが冒険者は現地調達も可能だ。
砂賊や魔物を捕らえたり倒して売れば纏まった金額が手に入るのである。
「この先にデザートスコーピオンの群れがいるな。向こうからは砂賊か。既に捕捉されている様だ。」
ジルが空間把握の魔法を使用して周囲の情報を得る。
過酷な砂漠地帯を生きる砂賊や魔物はかなり戦い慣れているので危険らしい。
と言ってもここにいるのは規格外の者ばかりなので、その程度ではどうにもならない。
「魔物はお任せ下さい。全て解体して血抜きも終わらせましょう。」
「それなら私は砂賊ね。人相手なら無双出来るし。」
「それでは手分けして終わらせましょう。ジル様はそのままお待ち下さい。」
「行ってきますね!」
レイアはデザートスコーピオンの群れに向かって、テスラは砂賊に向かってそれぞれ走っていった。
頼りになる二人に任せておけば直ぐに終わるだろう。
「二人にばかり働かせるのも悪いな。我も何か獲物を。」
ジルは空間把握を使って他の獲物を探す。
認識範囲を全方位に広げていくと一体の魔物を見つける。
「お、あれも魔物か。」
視界には豆粒くらいの大きさにしか映らない程遠いが、遥か上空に巨大な魔物を発見する。
「超高高度に生息する魔物か?珍しいかもしれないし狩っておくか。」
ジルは空間把握を使用して場所を把握しながら腰を落として銀月に手を掛ける。
鞘から溢れる程の魔力で魔装していく。
「抜刀術・断界!」
空に向かって銀月を勢い良く抜き放つ。
巨大な魔力の斬撃が上空目掛けて突き進んでいき雲を割る。
「ほう、躱されたか。」
距離があった事もあり、魔物はジルの攻撃に気が付いてギリギリ回避に成功していた。
そして明確な殺意ある攻撃に怒って急降下してくる。
「グオワアア!」
ジルよりも少し高い位置で魔物が両翼を開いて威嚇してくる。
何十メートルもの巨体が目の前にいるのは迫力がある。
「でかいな。だが近付いてきてもらえたのは有り難い。断絶結界!」
わざわざ下に降りてきてくれたので結界により逃げ場を無くす。
これで後は倒すだけだ。
「逃げられないだろう?我を倒すしか結界は解かれんぞ。」
「グオワアア!」
「アクアランス!」
「グガッ!?」
巨体を生かしてジルを押し潰そうとしてくるがジルの放った巨大な水の槍にあっさりと身体を貫かれて動かなくなった。
狩りにくい場所にいるだけで思ったよりも簡単に倒せてしまった。
「行動範囲を狭めてしまえば容易かったな。この大きさの魔物を買い取ってもらえるかは分からないが持っていくだけならばいいだろう。」
ジルは無限倉庫の中に倒した魔物を収納する。
すると丁度レイアも魔物を倒し終えて戻ってきた。
「討伐完了致しました。」
「収納は足りたか?」
「はい、ジル様から以前頂いた鞄は収納容量が多いですから問題無く。」
そう言って腰に下げている鞄を見る。
魔王時代に作った魔法道具の鞄なので収納容量は凄まじい。
無限倉庫には負けるがそれでも充分な量が入る筈だ。
「もし収納容量が限界になったら言ってくれ。」
「分かりました。」
「レイア、早いわね。」
レイアと話しているとテスラも終わって戻ってきた。
「こちらは殲滅するだけですから楽でしたよ。」
「こっちは散らばって攻めてきたから大変だったわ。」
そう言ってテスラが後ろを振り返る。
そこには襲ってきた砂賊達が整列していた。
「全員魅了したのか?」
「はい、一人も殺してませんよ。」
「デスザード王国の砂賊は懸賞金を掛けられている者が多いらしいです。生きて連れていけば相当な報酬が貰える筈ですよ。」
「そうだったか。」
わざわざテスラが殺さずに魅了したのはその為だ。
高い魅了魔法の適性があるサキュバスだから出来る事である。
「と言っても懸賞金に掛けられていたらの話しですけどね。何も無ければ普通の犯罪奴隷として売るしかありません。」
「それでもこの人数ならかなりの額が稼げるんじゃないか?」
犯罪奴隷は使い道が限られて安くなってしまうが、質より量で補えそうだ。
「そうなってくれたら嬉しいですけどね。皆、これから町に向かうからしっかり付いてきてね。」
「「「はい、テスラ様!」」」
魅了されている砂賊達が敬礼しながら答える。
「さすがはサキュバスだな。」
「テスラの魅了に抗える者は数少ないですからね。」
大量の砂賊を率いるテスラと共にジル達は町を目指した。
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