元魔王様とセダンの大商会 6.5
執事の服装をしていた男がモンドの屋敷に向かうジル達一行を、筒の様な魔法道具を使ってかなり離れた位置から観察していた。
モンドに雇われている暗殺者の男である。
「あれが件の冒険者ですか。一見すると大した事がある様には見えませんが…、っ!?」
案外余裕で始末出来そうだと考えていたが、執事は一瞬にして身体を強張らせる。
信じられない事に超長距離にいる筈のジルがこちらを振り向き、筒越しに目が合っている様に感じられる。
他の何かを気にしているのかもしれないが、視線は真っ直ぐ自分を捉えている。
格上の魔物に睨まれたかの様に緊張感が走り汗が垂れてくる。
「あれは化け物ですね。下手に手を出さなくて良かった様です。」
暗殺者としての自分の暗殺技術には絶対の自信を持っている。
しかし今の一瞬で、ジルを次元の違う化け物と男は認識した。
狩ろうとすれば簡単に狩られてしまう、そんな雰囲気がジルから感じられる。
「はぁ、報酬はまだ貰っていないのですが。仕方ありません、命には変えられません。」
男はモンドの屋敷とは反対方向に歩き出す。
当初の予定としては、ジルの様子を伺いつつ暗殺するタイミングを見計らう事になっていた。
しかしそんな事をすれば自分も敵と判断されてしまい命を落としかねない。
なので雇い主を見捨ててこの場を去る事に決めた。
「モンド様、貴方の悪運もここまでの様ですね。短い付き合いでしたが、ご冥福をお祈りしていますよ。」
モンドが死ぬかはまだ分からないのだが、男はそう言い残してセダンの街を後にした。
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