62章
元魔王様と街巡り 1
昨日は久しぶりにセダンの街に戻ってきたので、お互いの情報共有を済ませて直ぐに休んだ。
長旅で多少疲労が溜まっていたのもあって、スリープシープの羊毛を使った寝具で熟睡出来た。
「さて、今日は何をするか。」
ジルが朝起きる頃には皆既に起きていて自由に行動していた。
なので久しぶりの一人行動だ。
「久しぶりのセダンだし、街でも見てみるか。」
昨日はセダンの街をゆっくり見て回る時間も無かったので、今日は久しぶりの街を見に浮島から降りてみようと思った。
最初に訪れたのはお馴染みのギルドだ。
ジルの依頼を担当してくれている受付嬢の下へと向かう。
「ジルさん、こんにちは。」
直ぐにジルに気が付いて笑顔でミラが迎えてくれる。
「昨日はゆっくり話せなかったが久しぶりだな。」
「はい、ゆっくりと休めましたか?」
「ああ、さっきまで爆睡だったぞ。」
そのおかげでギルドが混む朝方の時間帯とはズレて今は殆ど冒険者がいない。
「王都までは遠いですから疲れますよね。ところでギルドに来たと言う事は早速依頼ですか?」
「もう我を働かせようというのか?」
「違いますよ、純粋にどんな用事か気になっただけです。」
身分証ともなる冒険者カードの維持の為に定期的な依頼が義務付けられてはいるが、ミラも長期護衛依頼から帰ってきたばかりのジルに口煩く言うつもりは無い。
少しくらいなら受付嬢の裁量で何とでもなるのだ。
「依頼を受けるつもりは無いぞ。今日は久しぶりのセダンの街を見て回るつもりだからな。」
「成る程、街探索ですか。数ヶ月振りだと随分と変わっているでしょうからね。」
昨日少し見ただけでも街は前よりも発展していた。
ジルの知らない変わっているところも多いだろう。
「そう言う事だ。だがその前に時間の掛かる換金作業だけは頼んでおこうかと思ってな。」
「もしかしなくても倒した魔物が溜まってますよね?」
ミラが少し身構えながら聞いてくる。
ジルの要件を察して数ヶ月分の量を想像したのだろう。
ジルからの大量の素材買い取りはギルドにとってとても有り難い事なのだが、忙しさが普段の何倍にも膨れ上がるので覚悟がいるのだ。
「王都のギルドでもかなりの数を捌いてきたんだがな。道中でも収納する機会は多かったのだ。」
「それなら思っていたよりは少なそうですね。では倉庫に行きましょうか。」
身構えていたミラはそれを聞いてホッとしながら、いつもの様にジルを倉庫に案内してくれる。
空いている場所を見つけたミラがここに出す様にと指示をくれたので無限倉庫から魔物を取り出していく。
ジルの持ってきた分だけで倉庫の半分近くが埋まる量だ。
「これで換金したい魔物は全部だな。収納数に限界は無いがスッキリした感じだ。」
「久しぶりに物凄い数ですね。これを見るとジルさんが帰ってきたんだなと実感しますよ。」
他のギルドの査定員達も過去に経験した者達は気合いを入れ始め、初めての者達は驚愕の表情を浮かべている。
「暫くは街から出るつもりは無い。急がなくていいから解体と売却を頼むぞ。」
「了解しました。ある程度目処が経ったらお知らせしますね。」
早速ミラがギルド職員達に指示を飛ばして査定が始まる。
解体費用は掛かるが、それを差し引いてもかなりの利益が出てくれるだろう。
「さて、ギルドでの用事はこれで済んだし次は何処へ行くかな。」
「決めていないんですか?」
「特にはな。」
ギルドに行くのは決めていたがその後の予定は未定だ。
今日は時間があるので目的も無く歩き回ってもいいと考えていた為、行き先は決めていない。
「ちなみに朝食はお済みですか?」
「いや、起きて直ぐにギルドに来たからまだだな。」
「でしたらお勧めは屋台通りですかね。ジルさんって食べるのお好きでしたよね?」
朝食がまだと聞いてミラがお勧めの場所を教えてくれる。
セダンで過ごしている時は頻繁に足を運んでいた屋台通りだ。
「食べるのは好きだぞ。何か上手い屋台でも出来たのか?」
「ジルさん達が泊まっていた宿屋から新しい料理が定期的に広まっているんですよ。フライドポテトの時みたいに。」
異世界の料理であるフライドポテトを再現する為に宿屋でリュカや女将に作ってもらった事があった。
新メニューとして宿屋に加わったが、瞬く間に人気となったフライドポテトは街全体に一気に広がっていった。
その現象が他の料理でも起きているらしい。
「屋台通りも色々な料理が増えていると言う事か。」
「はい、今や珍しい料理目的でセダンを訪れる方も増えていますからね。ジルさんがいなくなった時に流行っていた食べ物ってフライドポテトくらいでしたよね?」
「そうだな。どれくらい増えたのか楽しみだ。」
セダンの屋台通りは様々な食べ歩き料理が売られている。
気軽に買えるので冒険者にも人気だ。
「結構あの頃とは変わっているので楽しめると思いますよ。今なら昼時前ですから人も少ないと思いますし、タイミング的にも丁度良いかと。」
「分かった、この後向かってみるとしよう。」
「はい、久しぶりの休日を楽しんで下さい。」
ミラから情報を得たジルは早速屋台通りに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます