元魔王様とスライムテイム 3

 少年に情報を聞いてから馬車に戻ると他のメンバーは既に全員戻ってきていた。

小さな村なので直ぐに情報は集まった様だ。


「我が最後か。」


「待ってたよジル君。今全員の情報を聞いてまとめようとしていたところさ。」


「何か収穫はあったかしら?と言うか何を食べているの?」


 ジルが持つ木箱を見てラブリートが尋ねる。


「スライム饅頭だ。情報の対価として購入したんだが中々いけるぞ。お前らにも分けてやろう。」


 沢山買ったので雑談のつまみとして提供する。

普通に美味しいので皆が饅頭片手に話しを続ける。


「ジル君の情報はどうだった?」


「我が聞いたスライムの情報だが、多種多様なスライムが渓谷に出現しているが、種類ごとに生息域が若干違うらしいな。」


 渓谷全体に生息しているスライムだが、種類ごとに棲み分けは出来ているらしい。

なので目的のスライムが頻繁に目撃される場所に行けば、そのスライムに会える確率が高いと言う。


「それは私達も聞いているよ。村から近い場所には比較的見る事が多いスライム種が出現しているらしいね。」


「逆に渓谷が深くなっていく方へ進むとスライムの種類も珍しくなっていくと聞いたわよ。」


 より深い渓谷に降る程珍しいスライムに出会える。

しかしスライムの強さも上がるので油断は出来無い。


「ちなみに希少種と思われる金色のスライムや銀色のスライムも見つかっているらしいぞ。」


「私の方でも身体全身が燃えているスライムや冷気を身体に纏うスライムがいたって聞いたよ。かなり珍しいスライムだね。」


 こう言ったスライムは生息域がかなり限定的で特殊な環境下でなければ基本的には出現しない。

普通ならこんなところで出会う事は無いスライムだ。


「私は爆裂魔法や雷霆魔法を扱うスライムがいるって聞いたわよ。魔法に適性のあるスライムって中々珍しかった筈だわ。」


「私は異常に移動速度の速いスライムや鉱石を生み出すスライムがいると聞きましたね。おそらくスキルを所持しているのでしょう。」


 スライムの中にも人族と同じく魔法に適正があったりスキルを得ている種や個体もいる。

ラブリートの探し求めているサポートが出来るスライムとはこう言った類いのスライムだ。


「成る程成る程、どうやら様々な力を持ったスライムや希少なスライムが奥にはうようよといるらしいね。これは非常に期待出来そうだよ。」


 トゥーリが嬉しそうに呟いている。

スライムと言ってもそう言った特殊な力を持っていれば案外馬鹿に出来無い。


「選びたい放題ね。私としてはサポート係のスライムが欲しいから闇魔法か呪詛魔法を使える子がほしいわね。」


 動きを阻害したり状態以上にさせたりと使い勝手の良い魔法だ。

ラブリートは適性が無くて使えない魔法なので相性は良さそうだ。


「私はどんな子にしようかな。」


「トゥーリ様は光魔法か神聖魔法が使える子にして下さい。その方がテイム時も安全ですし今後も非常に重宝する筈です。」


 攻撃系の魔法を使ってこなければトゥーリも安全にテイム出来る。

そして光魔法や神聖魔法と言った回復系統の魔法は今後非常にお世話になる。

回復役が常に側にいるのは有り難い事だ。


「確かに魅力的だけど攻撃系に特化したスライムも魅力的に感じるんだよね。」


 どんなスライムをテイムしようか魅力的なスライムの情報でまだまだ決めかねている様だ。


「それならどちらもテイムしたらいいじゃない。テイマーに上限数なんてないんだから。」


 テイマーの資質次第で従魔はどれだけでも増やす事が出来る。


「確かにそれもそうか。気に入ったスライムは何匹かテイムしてもいいんだよね。」


「しかし危険が。」


「キュールネよ、心配し過ぎだ。我とラブリートが一緒にいてスライムに遅れを取ると思うのか?」


 トゥーリの心配が止まらないキュールネにジルが言う。

自分の仕える主人なので心配する気持ちも分かるが、どうにも過剰な印象を受ける。

それだけ大事にしているのは伝わるが、ジルからすればスライム相手に大袈裟だ。


「ジル様にそう言われてしまうと何も言い返せませんね。私も全力でお守りしますが、トゥーリ様の身の安全は第一でお願いしますね?セダン伯爵家唯一の当主なのですから。」


「分かっている。我はテイムする気は無いからトゥーリの事は任せておけ。」


 何か危険が迫れば直ぐにスライムを葬ってやるつもりだ。

なのでトゥーリが怪我をする事態なんてあり得ないだろう。


「話しはまとまったね?それじゃあスライムをテイムしに向かおうか。」


「渓谷はあちらです。安全に降りられる場所を聞いておいたので案内しますね。」


 キュールネの案内に従ってスライムが大量発生している渓谷へと向かった。

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