元魔王様と従魔の成長 8
既にホッコと騎士は戦っていて、かなり良い勝負を繰り広げている様子だ。
王都に来てから高ランクの魔物は何度か戦って倒していたが、相手が人となると随分と勝手が変わる。
Cランククラスの騎士が相手でも接戦である。
「むむむ、雷霆魔法が効かないの。」
既に何度も雷霆魔法を使用しているのだが、相手を麻痺状態にして隙を作る事が出来ずにいた。
「さすがに初級で不覚を取る訳にはいきませんからね。初級土魔法、ストーンバレット!」
「こっちだって初級魔法は効かないの!」
騎士の放った複数の石を剣で弾き落とす。
「本命はこちらです。中級土魔法、アースバインド!」
地面の土が盛り上がってホッコの足に絡み付く。
相手の動きを阻害しながら距離を詰める。
「上級氷結魔法、ブリザードなの!」
「上級の詠唱破棄!?くっ!」
足が拘束されて動けないのでホッコはその場から遠距離攻撃を放った。
騎士に向けられた手から勢い良く吹雪が放たれる。
ホッコが詠唱破棄のスキルを持っている事を騎士は知らないので、それに驚きつつ腕を前でクロスして吹雪を受ける。
「チャンスなの!」
ホッコは足を魔装して拘束する土を蹴散らす。
そして身体能力が上がった状態を利用して吹雪を放ちながら騎士に向かって走る。
「アイシクルエンチャントなの!」
「また上級の詠唱破棄を!?」
騎士は驚きつつも剣を構える。
吹雪によって剣を持つ手が震えているが、氷結魔法によって強化された剣と打ち合う為に魔装して迎え打つ。
「とりゃーなの!」
「はっ!」
両者の剣がぶつかり合う。
それと同時に騎士の持つ剣が弾き飛ばされた。
「なっ!?」
吹雪による攻撃で手に力が入っていなかった為に剣を支えられなかった。
加えてホッコの剣が氷結魔法によって強化されて攻撃力が上がっていたのも原因だろう。
「とどめなの!」
「ぐはっ!?」
強化された剣を胴体に受けて吹き飛ばされる。
騎士はその一撃で気絶してしまった。
「勝利なの!」
ホッコは嬉しそうに剣を掲げて喜ぶ。
周りで見ていた騎士や冒険者達が拍手している。
見た目は獣人族の若い女の子なので、上級の詠唱破棄や魔装をその年で使いこなすとは余程優秀なのだろうと言う評価を受けている様だ。
実際にホッコは人化出来る様になってから日に日に実力を伸ばしている。
今では高ランク冒険者とも戦える強さを持っているのでその評価は正しい。
「よくやったなホッコ。」
「主様、勝ったの!」
「ああ、見ていたぞ。」
嬉しそうに走り寄ってくるホッコの頭を撫でる。
「主人だけで無く部下まで優秀なのですね。素晴らしい戦いぶりでした。」
復帰したソートがホッコの事を褒めてくれる。
グランキエーゼに治療を受けてすっかり回復している。
「ありがとうなの!」
「それでホッコ殿はまだ戦われますか?」
足りないのなら他の騎士を用意してくれる様だ。
「戦いたいの!でも主様、時間はあるの?」
「ああ、別に用事も無いし問題無いぞ。せっかくの機会だから思う存分騎士に戦ってもらうといい。」
「やったの!」
戦い足りなかったらしくホッコは喜んでいる。
今日は一日暇なので魔力がある限り戦闘訓練でもいいだろう。
「ホッコ殿、是非私と一戦お相手願いたい。」
「自分ともお手合わせを。」
「この様な強者との戦闘の機会、逃すのは実に勿体無い。」
ホッコがまだ戦えると聞いて先程まで見学していた騎士達が次々に対戦を希望してきた。
実力の高いホッコを相手にして自分の力を試したくなったのだろう。
「あわわわなの。」
「皆落ち着きなさい。ホッコ殿が困惑しています。対戦希望者は一列に並びなさい。」
急に大勢に囲まれて驚いていたホッコだが、ソートの一言で騎士達が一列に並んで待機する。
「沢山いるの!全員倒すの!」
ホッコはその人数にやる気を漲らせ、先頭にいる騎士と早速戦い始める。
覚えたての雷霆魔法は初級なので騎士達に殆ど効果は無いが、戦闘に取り入れながら戦いを楽しんでいた。
もっと魔力量と適性が上がればジルの様に魔法が多少なりとも強化されるので、使えないと判断して練習しないのは勿体無い。
初級魔法でも使い方次第では化ける事もあるので練習は欠かさない方がいい。
「すみませんジル殿、ホッコ殿に負担を掛けてしまい。」
ホッコとの対戦を希望して並んでいる騎士達を見ながらソートが謝ってくる。
「こちらから頼んだ事だから気にする必要は無いぞ。それよりも回復したのならば第二回戦といくか?我はまだまだ物足りないぞ。」
「有り難い限りです。次はもっと良い勝負になる様に努力します。」
その後はホッコの魔力が無くなるまで騎士との訓練が続いた。
あまり経験の無い対人訓練だったが、実力のある騎士達相手に殆ど勝利を収めていてホッコはご満悦だった。
ちなみにジルは騎士団の中でもトップクラスの実力者複数名を相手に銀月のみで戦ったり、火魔法主体で戦ったりと色々行ったが全て圧勝であった。
最後は騎士団全員を相手に大立ち回りをして全員を気絶させる完勝で締め括った。
なので騎士団全員を治療する為にグランキエーゼが必死に走り回って治療していたのだった。
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